2025年相続税の基礎控除は変更なし!国税庁が公表した最新情報と本当に知るべき改正ポイント

当ページのリンクには広告が含まれています。

2025年における相続税の基礎控除について、多くの方が変更があるのではないかと関心を寄せています。結論から申し上げますと、2025年(令和7年)において相続税の基礎控除額に変更は予定されていません。国税庁からの公式な発表においても、基礎控除額の改正は示されておらず、現行の計算式である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が継続して適用されることになります。しかしながら、基礎控除額に変更がないからといって安心できるわけではありません。むしろ2024年1月から施行された生前贈与のルール変更不動産評価方法の厳格化といった重要な改正が、相続税対策に大きな影響を与えています。これらの改正は、従来の節税手法を根本から見直す必要性を示唆しており、早期の対応が求められます。本記事では、国税庁が公表している最新情報をもとに、2025年の相続税制度の現状と、知っておくべき重要な改正ポイント、そして今後取るべき対策について、わかりやすく詳しく解説していきます。相続税は誰にとっても他人事ではなく、特に不動産や金融資産をお持ちの方にとっては、正確な知識と適切な準備が将来の税負担を大きく左右することになります。

目次

相続税の基礎控除とは何か

相続税の基礎控除とは、相続財産の総額から差し引くことができる金額のことを指します。この基礎控除額を超える部分にのみ相続税が課税されるため、基礎控除は相続税の負担を軽減する重要な仕組みとなっています。現行の基礎控除額は3,000万円に、法定相続人の数×600万円を加えた金額となっており、例えば配偶者と子ども2人が相続人である場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で4,800万円となります。つまり、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかからず、申告も原則として不要です。

この基礎控除の計算において重要なのが法定相続人の数です。法定相続人とは、民法で定められた相続の権利を持つ人のことで、通常は配偶者と子どもがこれにあたります。子どもがいない場合は配偶者と親、親もいない場合は配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となります。養子がいる場合にも法定相続人として数えることができますが、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までという制限があります。この制限は、養子縁組による過度な基礎控除の増加を防ぐための措置です。

相続税の基礎控除額は、2015年(平成27年)1月1日に大幅に引き下げられました。改正前は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数という計算式でしたが、現行の制度では一律40%も減額されています。この改正により、それまで一部の富裕層のみに関係していた相続税が、都市部に自宅を所有する一般的な中間層の家庭にも影響を及ぼすようになりました。特に東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、土地の評価額が高いため、自宅と預貯金だけで基礎控除額を超えてしまうケースが増加しています。

2025年に基礎控除の変更がない理由

2024年11月に発表された「令和7年度(2025年度)税制改正大綱」において、基礎控除の引き上げという文言が登場したことから、相続税の基礎控除が変更されるのではないかという誤解が生じました。しかし、この大綱で言及されている基礎控除の引き上げ(48万円から58万円へ)は、相続税ではなく所得税に関する基礎控除のことです。相続税と所得税は全く異なる税目であり、混同しないよう注意が必要です。

国税庁は、2015年の基礎控除引き下げ以降、相続税の課税ベースを拡大する方針を維持しています。基礎控除を再び引き上げることは、この政策方針に逆行することになるため、現時点では基礎控除額の変更は考えにくい状況です。むしろ政府は、基礎控除額を維持したまま、節税手法の抜け道を塞ぐという方向で税制改正を進めています。

相続税の基礎控除が変更されない一方で、2024年から施行された重要な改正がいくつかあります。これらの改正は、相続税額そのものに直接影響を与えるものであり、基礎控除の変更以上に注意が必要です。特に生前贈与に関するルール変更は、従来の相続税対策の有効性を大きく低下させる内容となっています。

2024年施行の生前贈与ルール改正が与える影響

相続税対策として広く活用されてきた暦年贈与について、2024年1月1日から重要な改正が施行されました。この改正は、相続税の課税逃れを防ぐことを目的としており、生前贈与による節税効果を大幅に制限するものです。

従来のルールでは、被相続人が亡くなる前3年以内に相続人に対して行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算することになっていました。これを「持ち戻し」または「クローバック」と呼びます。しかし、新しいルールでは、この持ち戻し期間が7年間に延長されました。つまり、亡くなる前7年以内に行われた贈与は、相続財産として計算されることになります。

この改正により、毎年110万円の非課税枠を利用して少しずつ財産を移転するという、従来の王道的な節税手法の効果が大幅に低下しました。例えば、以前は相続の4年前に行った贈与は相続財産に加算されませんでしたが、2024年以降の贈与については、7年前まで遡って加算されることになります。

ただし、この7年ルールには経過措置が設けられています。延長された期間である4年目から7年目までの贈与については、4年間の合計額から100万円を控除した額が持ち戻しの対象となります。この100万円は年間100万円ではなく、4年間の合計で100万円という点に注意が必要です。また、この新ルールが完全に適用されるのは、2024年1月1日以降に行われた贈与からであり、2023年以前の贈与については従来の3年ルールが適用されます。

この改正の影響が実際に表れ始めるのは、2027年以降に発生する相続からです。7年間の持ち戻しがフルに適用されるのは、2031年1月1日以降の相続となります。つまり、今から対策を講じておかなければ、将来の相続で大きな税負担が発生する可能性があります。

相続時精算課税制度の大改正

暦年贈与のルールが厳格化される一方で、国税庁は相続時精算課税制度に新たなインセンティブを設けました。この制度は、従来は使い勝手が悪く不人気でしたが、2024年の改正により大きく生まれ変わりました。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与する際に選択できる制度です。この制度を選択すると、累計2,500万円までの贈与については贈与税がかからず、その代わりに相続時にその贈与額を相続財産に加算して相続税を計算します。

従来のこの制度の問題点は、一度選択すると暦年贈与に戻れないこと、少額の贈与でも毎年申告が必要だったこと、そして贈与した財産が全額相続時に持ち戻されることでした。しかし、2024年の改正により、年間110万円の基礎控除が新設されました。

この新設された110万円の基礎控除には、極めて重要な特徴があります。それは、相続時の持ち戻し対象外であるという点です。暦年贈与の110万円は7年間持ち戻されるのに対し、相続時精算課税制度の110万円は持ち戻されません。さらに、この110万円以下の贈与については申告も不要となりました。

この改正により、相続時精算課税制度は、2025年以降の生前贈与における最も有力な選択肢となりました。特に相続人である子や孫に対して財産を移転する場合、持ち戻しリスクのない相続時精算課税制度の110万円控除を活用することが、最も安全で確実な方法となります。

ただし、注意点として、特定の贈与者から特定の受贈者への贈与について、一度でも相続時精算課税制度を選択すると、その二者間では二度と暦年贈与に戻ることができません。この選択は不可逆的であるため、慎重な判断が求められます。

タワーマンション節税への規制強化

不動産を活用した相続税対策についても、2024年から重要な改正が施行されています。特に影響が大きいのがタワーマンション節税への規制です。

相続税における不動産の評価は、土地については路線価、建物については固定資産税評価額に基づいて行われます。タワーマンションの場合、この評価方法では階数による違いが反映されないため、市場での売買価格と相続税評価額との間に大きな乖離が生じていました。例えば、50階の部屋の市場価格が3億円、2階の部屋の市場価格が1億円であっても、相続税評価額は同じ8,000万円といったケースがありました。

この乖離を利用して、富裕層は高層階の住戸を購入することで資産を圧縮し、相続税の負担を軽減する節税策を講じていました。しかし、国税庁はこの実態と評価額の乖離を問題視し、2024年1月1日以降に取得したマンションについて、評価方法を見直しました。

新しいルールでは、築年数、総階数、所在階などを加味した「評価乖離率」を計算します。その結果、相続税評価額が市場価格の6割に満たない場合は、評価額を時価の6割まで引き上げる補正が行われることになりました。これにより、従来のタワーマンション節税の効果は大幅に低下しています。

この改正は、国税庁が形式的な評価額ではなく、経済的実体を重視する姿勢を明確にしたものです。不動産を活用した節税を検討する際には、この新しい評価ルールを十分に考慮する必要があります。

相続税の申告期限と納付方法

相続税の申告と納付には、厳格な期限が定められています。期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。例えば、2025年1月6日に亡くなった場合、翌日の1月7日が起算日となり、申告・納付期限は同年11月6日となります。期限日が土曜日、日曜日、祝日の場合は、その翌平日が期限となります。

この10ヶ月という期間は、葬儀や法要、遺品整理、相続人間での遺産分割協議などを行うには非常に短いものです。期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるだけでなく、配偶者の税額軽減小規模宅地等の特例といった重要な特例が適用できなくなる可能性があります。

配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからないという制度です。また、小規模宅地等の特例は、自宅や事業用地の評価額を最大80%減額できる制度です。これらの特例は、原則として期限内申告が適用要件となっているため、期限を守ることが極めて重要です。

相続税の納付は、原則として現金一括納付です。ただし、一括納付が困難な場合には、一定の要件のもとで延納(分割払い)や物納(不動産などの現物による納付)が認められています。延納の場合は利子税が発生し、物納の場合は厳格な要件を満たす必要があるため、事前の準備が不可欠です。

相続税の計算プロセス

相続税の計算は、複雑な手順を経て行われます。まず、被相続人の全財産を評価して遺産総額を算出します。この際、預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産に、生命保険金や死亡退職金といったみなし相続財産を加えます。

みなし相続財産とは、法律上は被相続人の財産ではないものの、死亡を契機として相続人が受け取る財産で、実質的に相続と同じ経済効果があるため課税対象とされるものです。生命保険金については、500万円×法定相続人の数までが非課税となり、死亡退職金についても同様の非課税枠があります。

遺産総額から、借入金や未払金などのマイナスの財産、葬式費用、そして非課税財産を差し引きます。非課税財産には、墓地、墓石、仏壇、仏具などの祭祀財産が含まれますが、投資目的や骨董的価値があるものは課税対象となります。

さらに、一定期間内の生前贈与を加算します。2024年以降の贈与については7年以内のものが対象です。こうして算出された各相続人の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を差し引いたものが課税遺産総額となります。

次に、この課税遺産総額を法定相続分で仮分割し、各相続人の取得金額に相続税の税率を適用します。相続税は累進課税となっており、取得金額が1,000万円以下なら10%、3,000万円以下なら15%、5,000万円以下なら20%、1億円以下なら30%、2億円以下なら40%、3億円以下なら45%、6億円以下なら50%、6億円超なら55%の税率が適用されます。各税率には控除額が設定されており、これを差し引いて各相続人の仮の税額を算出します。

これらを合計したものが相続税の総額となり、この総額を実際の遺産取得割合で按分して各相続人の税額を算出します。最後に、各種の税額控除を差し引いた金額が、最終的な納付税額となります。

小規模宅地等の特例の活用

相続財産の中で大きな割合を占めるのが不動産、特に自宅の土地です。小規模宅地等の特例は、この自宅の土地や事業用地の評価額を大幅に減額できる、非常に強力な節税制度です。

特定居住用宅地等として、被相続人が住んでいた自宅の土地を配偶者や同居していた親族が相続した場合、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。例えば、評価額1億円の土地であれば、2,000万円として計算できることになり、相続税額を大幅に軽減できます。

配偶者が相続する場合、同居の有無にかかわらず、また相続後に売却したとしても、この特例を無条件で適用できます。これは、残された配偶者の生活基盤を守るという政策的配慮によるものです。一方、子どもが適用を受けるには、原則として同居していることや、申告期限まで保有・居住することが要件となります。

特定事業用宅地等として、被相続人が事業を営んでいた土地を事業承継者が相続した場合、400平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。また、貸付事業用宅地等として、賃貸アパートや駐車場などの貸付事業に使用していた土地については、200平方メートルまでの部分について評価額を50%減額できます。

この特例の適用を受けるためには、たとえ納税額がゼロになる場合でも、必ず相続税の申告書を提出する必要があります。また、申告期限までに遺産分割が確定していることが原則として求められます。

配偶者の税額軽減と二次相続への配慮

配偶者の税額軽減は、相続税における最も強力な税額控除です。配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者の相続税がゼロになります。1億6,000万円は最低保証額であり上限ではないため、遺産総額が大きい場合でも法定相続分までは非課税となります。

この特例は非常に強力ですが、安易に最大限活用すると、将来の二次相続で子どもたちに重い税負担を強いることになります。一次相続で配偶者が全財産を相続すれば、確かに一次相続の税額はゼロになります。しかし、二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、法定相続人の数が減るため基礎控除額も下がり、累進課税の高い税率が適用されることになります。

例えば、一次相続で配偶者が2億円を全て相続した場合、一次相続の税額はゼロですが、二次相続で子どもたちが2億円プラス配偶者固有の財産を相続することになり、トータルの税負担は、一次相続で適度に子どもにも分けた場合よりも高くなることがほとんどです。

したがって、配偶者の税額軽減は、一次相続と二次相続を通算した税負担を最小化するよう、戦略的に活用する必要があります。税理士などの専門家に相談し、最適な遺産分割割合をシミュレーションすることが重要です。

その他の税額控除制度

配偶者の税額軽減のほかにも、相続人の状況に応じて適用できる税額控除があります。

障害者控除は、相続人が障害者である場合に適用されます。控除額は、85歳から相続開始時の年齢を引いた年数に10万円(特別障害者の場合は20万円)を乗じた金額です。例えば、65歳の一般障害者であれば、(85歳-65歳)×10万円で200万円が控除されます。この控除は、障害者本人の税額から引ききれない場合、その残額を扶養義務者である他の相続人の税額から差し引くことができます。

未成年者控除は、相続人が18歳未満である場合に適用されます。控除額は、18歳から相続開始時の年齢を引いた年数に10万円を乗じた金額です。例えば、15歳の未成年者であれば、(18歳-15歳)×10万円で30万円が控除されます。

相次相続控除は、短期間に相続が連続して発生した場合の二重課税を軽減する制度です。10年以内に開始した前回の相続で相続税が課された財産を、今回の相続で引き継いだ場合、前回の相続税額の一部を今回の相続税額から控除できます。前回の相続からの経過年数が短いほど、控除額は大きくなります。

贈与税額控除は、生前贈与の持ち戻しとセットになる制度です。持ち戻し対象となった贈与について、すでに贈与税を納付していた場合、その贈与税額を相続税から差し引くことができます。これにより、贈与税と相続税の二重課税が防止されます。

生前贈与の戦略的活用

2024年の改正を踏まえた上で、2025年以降の生前贈与戦略を検討する必要があります。重要なのは、贈与する相手によって最適な方法が異なるという点です。

相続人である子や孫に贈与する場合、相続時精算課税制度を選択し、年間110万円の非課税枠を活用することが最も確実です。この110万円は相続時に持ち戻されないため、安全に資産を移転できます。さらに、まとまった財産を移転したい場合は、2,500万円の特別控除枠と組み合わせることで、早期に大きな資産を次世代に移すことができます。

一方、相続人以外の人、例えば子どもの配偶者や、代襲相続人でない孫に贈与する場合は、暦年贈与の年間110万円枠を活用します。なぜなら、7年間の持ち戻しルールは、相続または遺贈により財産を取得した人への贈与が対象であり、相続で一切財産を受け取らない人への贈与は持ち戻しの対象にならないためです。

ただし、暦年贈与には定期贈与とみなされるリスクがあります。毎年同じ時期に同じ金額を同じ人に贈与し続けると、最初から一括で贈与する意思があったとみなされ、贈与税が課される可能性があります。これを避けるため、贈与の時期や金額を変えたり、贈与のたびに贈与契約書を作成したり、受贈者自身が管理する口座に振り込むといった工夫が必要です。

不動産を活用した相続税対策

不動産は相続税対策において重要な役割を果たしますが、タワーマンション規制の強化により、従来の手法は見直しが必要です。

賃貸不動産の活用は、依然として有効な対策の一つです。土地の上にアパートやマンションを建てて賃貸すると、土地は貸家建付地として評価され、更地よりも評価額が下がります。また、建物も賃貸中であれば貸家として評価され、固定資産税評価額からさらに減額されます。さらに、小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等として、200平方メートルまで50%の減額を受けることも可能です。

ただし、賃貸不動産を購入する際に借入金を利用した場合、その借入金は相続財産から控除できますが、空室が多かったり、相場とかけ離れた家賃設定をしていたりすると、税務署から否認される可能性があります。実態のある賃貸経営を行うことが重要です。

また、自宅の土地については、生前に配偶者に贈与しておくという対策もあります。配偶者への居住用不動産の贈与には、配偶者控除という特例があり、婚姻期間が20年以上であれば、2,000万円までの贈与が非課税となります。基礎控除110万円と合わせて、最大2,110万円まで非課税で贈与できます。ただし、この特例を使うためには贈与税の申告が必要であり、不動産取得税や登録免許税といった費用も発生するため、トータルのコストを考慮する必要があります。

生命保険を活用した納税資金対策

相続税は原則として現金で納付する必要があるため、財産の大部分が不動産である場合、納税資金の確保が課題となります。この対策として有効なのが生命保険の活用です。

生命保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税となります。例えば、法定相続人が3人であれば1,500万円までが非課税です。この非課税枠を最大限活用することで、相続税の負担を軽減しながら、確実に現金を相続人に残すことができます。

生命保険金は、受取人固有の財産として、遺産分割の対象にならず、受取人が確実に受け取ることができます。また、被相続人の債務の返済義務もありません。さらに、保険金は通常、被相続人の死亡後数週間以内に支払われるため、相続税の納付資金として活用できます。

ただし、生命保険の加入には健康状態の審査があり、高齢になると加入が難しくなったり、保険料が高額になったりします。相続対策は、できるだけ早い段階から計画的に進めることが重要です。

遺言書の作成と遺産分割対策

相続税対策と同様に重要なのが、円滑な遺産分割のための準備です。遺産分割がまとまらないと、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減といった重要な特例が適用できなくなる可能性があります。

遺言書を作成しておくことで、被相続人の意思を明確にし、相続人間のトラブルを防ぐことができます。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、最も確実なのは公正証書遺言です。公正証書遺言は、公証人が作成するため、形式の不備によって無効になるリスクがなく、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。

2020年からは、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も開始されました。この制度を利用すれば、自筆証書遺言でも紛失や改ざんのリスクを防ぐことができ、また家庭裁判所での検認手続きも不要になります。

遺言書を作成する際には、遺留分に配慮することも重要です。遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の相続分のことで、配偶者、子ども、親に認められています。遺言によって遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができ、これが新たなトラブルの原因となる可能性があります。

相続税の税務調査への備え

相続税の申告後、税務署から税務調査が入る可能性があります。税務調査の実施率は全体の約10%程度ですが、富裕層や複雑な財産構成の場合は、調査対象となる確率が高まります。

税務調査では、申告漏れの財産がないか、財産の評価が適正か、名義預金や名義株がないかなどが重点的にチェックされます。名義預金とは、形式上は配偶者や子どもの名義になっているものの、実質的には被相続人の財産とみなされる預金のことです。被相続人が管理していた預金通帳や、被相続人の収入から形成された預金は、名義に関わらず相続財産として課税される可能性があります。

税務調査に備えるためには、財産の出所や形成過程を明確にしておくことが重要です。贈与を行った場合は、贈与契約書を作成し、贈与税の申告を行い、受贈者自身が管理する口座に振り込むといった証拠を残しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

また、相続税の申告は専門性が高く、計算ミスや特例の適用漏れが起きやすいため、税理士などの専門家に依頼することをお勧めします。特に不動産が多い場合や、事業を営んでいた場合、海外資産がある場合などは、専門家のサポートが不可欠です。

まとめと今後の対策

2025年における相続税の基礎控除に変更はありませんが、だからといって何も対策を講じなくてよいわけではありません。むしろ、2024年から施行された生前贈与ルールの改正や不動産評価の厳格化により、従来の節税手法は大きく見直しを迫られています。

国税庁は、基礎控除を維持したまま、節税の抜け道を塞ぐという方針を明確にしています。暦年贈与の持ち戻し期間を7年に延長し、タワーマンション節税に規制をかける一方で、相続時精算課税制度に持ち戻しされない110万円控除を新設し、国が管理しやすい形での資産移転を優遇しています。

この政策転換を踏まえると、2025年以降の相続対策として重要なのは、新しいルールに適合した戦略を構築することです。相続人への贈与には相続時精算課税制度を活用し、相続人以外への贈与には暦年贈与を使い分けること、小規模宅地等の特例を最大限活用できるよう遺産分割を計画すること、二次相続まで見据えて配偶者の税額軽減を戦略的に利用すること、そして生命保険の非課税枠を活用して納税資金を確保することなどが挙げられます。

相続税対策は、一朝一夕にできるものではありません。特に生前贈与は、長期間にわたって計画的に実行する必要があります。また、税制は頻繁に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップし、専門家のアドバイスを受けながら対策を講じることが重要です。

基礎控除を超える財産をお持ちの方は、まず現在の財産を正確に把握し、相続税がどの程度発生するかをシミュレーションすることから始めましょう。その上で、税理士などの専門家に相談し、ご自身の状況に最適な対策を立てることをお勧めします。早めの準備が、将来の税負担を大きく軽減することにつながります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次