相続登記義務化で空き家放置は危険!過料・罰則・金額を徹底解説

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2024年4月1日に施行された相続登記の義務化は、日本全国で増加し続ける空き家問題への対応として、極めて重要な法改正となりました。この制度改正により、相続によって不動産を取得した方は、法律上の義務として相続登記を申請しなければならなくなりました。もし正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料という金銭的なペナルティが科される可能性があります。さらに、空き家を適切に管理せず放置してしまうと、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるという深刻なリスクも存在します。少子高齢化が進む現代社会において、実家を相続したものの遠方に住んでいて管理が難しい、あるいは複数の相続人間で協議がまとまらないといった理由で、相続登記が放置されているケースが後を絶ちません。しかし、登記を先送りにすればするほど、次の世代で相続人の数が増加し、権利関係が複雑化して手続きが困難になるという悪循環に陥ってしまいます。本記事では、空き家の相続登記義務化に関する詳細な情報、過料や罰則の具体的な金額、放置することで発生する様々なリスク、そして実際に取るべき対応策について、2025年の最新情報を踏まえて徹底的に解説していきます。

目次

相続登記義務化の制度概要と期限

2024年4月1日から施行された相続登記義務化は、所有者不明の土地や建物が社会問題化したことを受けて導入された制度です。この制度では、相続によって不動産を取得した相続人は、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行わなければならないと定められています。

この義務化の対象となるのは、空き家も含むすべての不動産です。実家を相続した場合はもちろん、別荘や田舎の土地、マンションの一室など、あらゆる種類の不動産が対象となります。都市部の物件であっても、地方の物件であっても、例外はありません。

特に注意が必要なのは、2024年4月1日より前に相続した不動産についても、まだ登記手続きを済ませていない場合は義務化の対象となるという点です。過去に発生した相続について、これまで登記を放置してきた方も、猶予期間として2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。つまり、何十年も前に父親や祖父から相続した不動産であっても、登記が未了であれば、この期限までに手続きを行わなければなりません。

期限の起算日となる「不動産を取得したことを知った日」の解釈については、具体的にいくつかのケースが考えられます。まず、被相続人が亡くなったことを知った日が基準となります。遠方に住んでいて疎遠になっていた親族が亡くなり、数か月後に訃報を聞いたという場合は、その訃報を知った日が起算日となります。次に、自分が相続人であることを知った日も起算日となります。例えば、遺言書の存在を後から知った場合や、他の相続人から連絡を受けて初めて相続人であることを知った場合などがこれに該当します。さらに、遺産分割協議により不動産を取得することが決まった日も起算日となります。当初は他の相続人が不動産を取得する予定だったものの、協議の結果として自分が取得することになった場合は、その協議が成立した日から3年以内が期限となります。

過料の詳細と適用プロセス

正当な理由なく相続登記を怠り、3年の期限を過ぎても義務を履行しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料という制度は、行政上のルール違反に対する金銭的なペナルティであり、刑事罰としての罰金とは法的な性質が異なります。罰金は前科として記録されますが、過料は前科にはなりません。ただし、実際に金銭を支払わなければならないという点では、経済的な負担が発生することに変わりはありませんので、十分な注意が必要です。

過料が科されるまでのプロセスには、いくつかの段階があります。まず、登記官が相続登記の義務違反を把握した段階で、手続きが開始されます。登記官は、死亡届の情報や固定資産税の課税情報などから、相続が発生したにもかかわらず登記が行われていないケースを把握します。次に、登記官から相続人に対して催告書が書留郵便で送付されます。この催告書には、相続登記の義務があること、期限までに登記を行う必要があること、正当な理由がある場合はその旨を申し出る必要があることなどが記載されています。催告を受けても登記を行わない場合、登記官が裁判所に義務違反の通知を行います。そして、裁判所が要件に該当するか否かを慎重に判断し、該当すると認められた場合には、過料を科する旨の裁判を行います。裁判所は、義務違反の程度や理由などを考慮して、10万円以下の範囲内で過料の金額を決定します。

このように、いきなり過料が科されるわけではなく、必ず事前に催告書が送付されるという段階を経ます。したがって、催告書が届いた時点で速やかに対応すれば、過料を回避できる可能性が十分にあります。催告書を受け取ったら、決して放置せず、すぐに登記手続きを開始するか、正当な理由がある場合はその旨を法務局に説明することが重要です。

正当な理由による過料の免除

相続登記を3年以内に行えない正当な理由がある場合は、過料の対象とはなりません。法務省が示している正当な理由の例としては、いくつかのケースが認められる可能性があります。

まず、相続人が極めて多数に上り、必要な資料の収集や相続人の把握に多大な時間を要する場合です。例えば、被相続人に兄弟姉妹が多数おり、その中にすでに亡くなっている方がいて、さらにその子ども(甥や姪)が相続人となるようなケースでは、相続人が10人、20人と増えていくことがあります。このような場合、すべての相続人を特定し、連絡を取り、必要な書類を収集するだけでも相当な時間がかかります。

次に、遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合も正当な理由として認められる可能性があります。遺言書が複数存在する場合や、遺言の内容について相続人間で解釈が分かれている場合、あるいは遺言書の偽造や変造が疑われている場合などは、裁判所の判断を待たなければならないため、登記を行うことができません。

また、相続登記申請義務者が重病等の事情を抱えている場合も考慮されます。長期入院が必要な病気や、認知症などにより判断能力が低下している場合などは、物理的に登記手続きを行うことが困難です。

さらに、経済的に困窮しており、登記申請費用を負担する能力がない場合も正当な理由となり得ます。相続登記には登録免許税や必要書類の取得費用がかかりますが、生活保護を受給しているなど、これらの費用を負担することが著しく困難な場合は、その事情が考慮されます。

災害により申請が困難な場合も当然ながら正当な理由となります。地震や水害などの自然災害により、必要書類が滅失してしまった場合や、法務局への交通手段が絶たれている場合などは、状況が改善するまで待つことが認められます。

ただし、これらの正当な理由がある場合でも、状況が改善次第、速やかに登記手続きを行う必要があります。正当な理由があるからといって、永久に登記をしなくてよいわけではありません。

住所変更登記の義務化と罰則

相続登記とは別の制度として、不動産所有者の氏名や住所に変更がある場合についても、2024年4月から登記が義務化されました。この住所変更登記は、相続登記とは別の義務として新たに導入されたものです。

住所や氏名が変更になった場合は、変更があった日から2年以内に変更登記を済ませる必要があります。引っ越しをして住所が変わった場合、結婚や離婚により氏名が変わった場合などは、忘れずに変更登記を行わなければなりません。正当な理由なく2年以内に手続きをしなかった場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。

この住所変更登記の義務化は、相続登記の義務化と同じく、所有者不明土地の発生を防ぐための施策です。住所や氏名が古いまま登記されていると、登記簿を見ても現在の所有者に連絡が取れないという問題が発生します。特に、公共事業や災害対策などで土地の所有者に連絡を取る必要がある場合、登記情報が古いと大きな支障となります。

なお、登記された住所から引っ越しをした後、さらに別の住所に引っ越した場合でも、最終的な現在の住所への変更登記を1回行えば足ります。途中の住所をすべて登記する必要はありません。

相続登記の手続きと必要書類

相続登記を実際に行う際には、多くの書類が必要となります。まず、登記申請書を作成する必要があります。登記申請書には、不動産の表示、登記の目的、登記の原因、相続人の氏名や住所などを記載します。法務局のウェブサイトには申請書のひな形が用意されていますので、それを参考にすることができます。

次に、登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本を取得します。これは、現在の登記内容を確認するために必要です。被相続人の名義で登記されていることを確認してから、相続登記の手続きを進めます。

不動産の固定資産評価証明書も必要です。これは、登録免許税を計算するために使用します。固定資産評価証明書は、不動産が所在する市区町村の役所で取得できます。

最も重要で、かつ取得に時間がかかるのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本です。被相続人がどこで生まれ、どのように本籍地を移転し、いつ亡くなったのかを証明するために、すべての戸籍を取得する必要があります。被相続人が生涯で複数回転籍している場合、それぞれの本籍地があった市区町村から戸籍謄本を取り寄せなければなりません。遠方の場合は郵送で請求することもできますが、すべてを揃えるまでに数週間から数か月かかることもあります。

被相続人の住民票の除票も必要です。除票とは、死亡や転出により住民登録が抹消された場合の住民票のことです。これにより、登記簿上の被相続人と、亡くなった被相続人が同一人物であることを証明します。

相続人全員の戸籍謄本も取得します。これにより、相続人の身分関係を証明します。また、相続人全員の住民票も必要です。住民票には、相続人の現在の住所が記載されており、登記後の新しい所有者の住所として登記されます。

遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書には、どの相続人がどの財産を取得するかを明記し、相続人全員が署名・押印します。また、遺産分割協議書を作成した場合は、相続人全員の印鑑証明書も添付します。印鑑証明書により、遺産分割協議書に押印された印鑑が実印であることを証明します。

さらに、相続関係説明図を作成すると、手続きがスムーズになります。相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を図式化したもので、誰が相続人なのかを一目でわかるようにしたものです。法務局のウェブサイトにひな形がありますので、それを参考に作成できます。

これらの書類を揃えるだけでも、複数の役所を回る必要があり、相当な時間と手間がかかります。特に、平日の日中しか役所が開いていない場合、仕事を休んで手続きに行かなければならないこともあります。

相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用は、大きく分けて3つの種類があります。まず、登録免許税です。登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4パーセントと定められています。例えば、固定資産税評価額が2000万円の不動産の場合、登録免許税は8万円となります。固定資産税評価額が5000万円の場合は20万円、1000万円の場合は4万円という計算になります。

次に、必要書類の取得費用がかかります。戸籍謄本は1通450円、除籍謄本や改製原戸籍は1通750円、住民票は1通300円程度です。被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて揃えると、少なくとも数千円、場合によっては1万円以上かかることもあります。相続人全員分の戸籍謄本や住民票も必要ですので、相続人の人数が多いほど費用も増加します。固定資産評価証明書は1通300円程度、登記事項証明書は1通600円程度です。これらを合計すると、書類取得費用だけで5000円から2万円程度かかります。

最後に、専門家に依頼する場合は司法書士報酬がかかります。相場としては、10万円前後が一般的です。ただし、不動産の数や相続人の数、手続きの複雑さなどにより、金額は変動します。複数の不動産がある場合や、相続人が多数いる場合、遺産分割協議書の作成も依頼する場合などは、15万円から20万円程度かかることもあります。

これらを合計すると、固定資産税評価額が2000万円の不動産を相続する場合、自分で手続きを行えば約9万円、司法書士に依頼する場合は約19万円から20万円程度の費用がかかることになります。

自分で手続きを行えば司法書士報酬は不要ですが、平日に何度も役所や法務局に足を運ぶ必要があり、また書類の作成方法などを自分で調べながら進めなければなりません。手続きが複雑な場合や、書類の準備に不安がある場合、あるいは仕事が忙しくて時間が取れない場合は、専門家に依頼することをお勧めします。

免税措置の活用

相続登記を促進するために、特定のケースでは登録免許税の免税措置が設けられています。この免税措置は期限付きで、2025年3月31日まで適用されます。

1つ目のケースは、相続登記をする前に相続人が亡くなってしまった場合、いわゆる数次相続の場合です。例えば、父親が亡くなり、その相続登記をする前に、相続人である母親も亡くなってしまったような場合がこれに該当します。このような場合、本来であれば父親から母親への相続登記と、母親から子への相続登記の2回の登記が必要となり、それぞれに登録免許税がかかります。しかし、免税措置により、父親から母親への相続登記については登録免許税が免除されます。

2つ目のケースは、相続する土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合です。地方の山林や原野、市街地から離れた農地などは、固定資産税評価額が100万円以下であることが多く、このような土地を相続する場合は登録免許税が免除されます。

これらの免税措置は2025年3月31日までの期限付きですので、該当する方は早めに手続きを行うことをお勧めします。期限後に手続きを行うと、通常通り登録免許税がかかることになります。

相続人申告登記という新しい選択肢

相続関係が複雑で、遺産分割協議がまとまらず、すぐに相続登記ができないケースも少なくありません。相続人間で不動産をめぐって意見が対立している場合や、相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、あるいは相続人の一部が海外に居住していて手続きが進まない場合などです。そのような場合のために、2024年4月から相続人申告登記という新しい制度が導入されました。

相続人申告登記とは、相続が発生したことと、自分が相続人であることを法務局に申告する手続きです。正式な相続登記ではありませんが、この申告を行うことで、とりあえず3年以内の登記義務を履行したとみなされ、過料を回避できます

相続人申告登記の大きなメリットは、遺産分割協議が成立していなくても申告できるという点です。通常の相続登記では、誰が不動産を取得するかを確定させる必要がありますが、相続人申告登記では、単に自分が相続人であることを申告するだけで済みます。また、他の相続人の関与なく、単独で申告できるという点も重要です。通常の相続登記では、法定相続分での登記を行う場合でも、相続人全員の戸籍謄本などが必要ですが、相続人申告登記では、申告する本人の戸籍謄本があれば足ります。

さらに、相続登記に比べて必要書類が少なく、手続きが簡便です。被相続人の死亡の事実を証明する戸籍と、申告人が相続人であることを証明する戸籍があれば申告できます。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を揃える必要はありません。

そして、登録免許税がかからないという経済的なメリットもあります。通常の相続登記では、不動産の価額の0.4パーセントの登録免許税がかかりますが、相続人申告登記では税金がかかりません。

ただし、相続人申告登記はあくまで暫定的な措置です。遺産分割協議が成立した後は、その時点から3年以内に正式な相続登記を行う必要があります。相続人申告登記を行ったからといって、正式な相続登記をしなくてよいわけではありません。

相続人申告登記は、過料を回避しつつ、時間をかけて遺産分割協議を進めることができる便利な制度ですので、協議が難航している場合は積極的に活用すべきです。

空き家放置による固定資産税の増加

相続登記を放置することによる10万円以下の過料だけでなく、空き家を適切に管理せず放置することには、さらに大きな経済的リスクがあります。それが、固定資産税の大幅な増加です。

通常、住宅が建っている土地には住宅用地の特例が適用され、固定資産税が大幅に減額されています。具体的には、200平方メートル以下の小規模住宅用地の場合、課税標準額が6分の1に減額されます。200平方メートルを超える一般住宅用地の場合は3分の1に減額されます。これにより、住宅が建っている土地の固定資産税は、更地と比べて大幅に低く抑えられています。

しかし、空き家が適切に管理されず、市町村から特定空き家または管理不全空き家に指定されると、この特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に増加します。例えば、年間の固定資産税が5万円だった場合、特例が外れると年間30万円になる計算です。年間10万円だった場合は60万円になります。これは非常に大きな負担増となります。

特定空き家と管理不全空き家の基準

2023年12月13日に空家等対策の推進に関する特別措置法が改正され、従来の特定空き家だけでなく、管理不全空き家という新しいカテゴリーが追加されました。これにより、より早い段階で行政の指導が入るようになり、固定資産税増加の対象も拡大されました。

特定空き家に指定される基準は4つあります。1つ目は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態です。屋根や外壁が崩れかけている、柱が腐食して傾いている、基礎が沈下しているなど、建物の構造的な安全性が著しく低下している状態がこれに該当します。

2つ目は、そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態です。ゴミが放置されて悪臭を放っている、ネズミやハエが大量発生している、浄化槽が破損して汚水が漏れているなど、衛生面で重大な問題がある状態です。

3つ目は、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態です。窓ガラスが割れたまま放置されている、外壁の塗装が剥がれて著しく汚い、庭木や雑草が生い茂って周囲の景観を損なっているなどの状態がこれに該当します。

4つ目は、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態です。不法侵入や放火のリスクがある、動物が住み着いて鳴き声や悪臭が発生している、落書きがされているなど、様々な問題が含まれます。

管理不全空き家とは、特定空き家になるおそれのある空き家のことで、早期の段階で指導が行われます。例えば、屋根の一部が破損し始めている、外壁にひび割れが見られる、雑草がかなり伸びてきているなど、放置すれば将来的に特定空き家となる可能性がある状態です。この段階で市町村から助言や指導が行われ、所有者に改善を促します。

固定資産税増加までのプロセス

空き家が特定空き家または管理不全空き家に指定されたからといって、すぐに固定資産税が6倍になるわけではありません。段階的な手続きがあり、所有者には改善の機会が与えられます。

まず、市町村による現地調査が行われます。近隣住民からの通報や、市町村の定期的なパトロールにより、問題のある空き家が把握されると、職員が現地を訪れて状態を確認します。外観の調査だけでなく、必要に応じて内部の調査も行われることがあります。

調査の結果、問題があると判断されると、特定空き家等への指定が行われます。この段階で、所有者には指定された旨が通知されます。

指定後、市町村は所有者への助言・指導を行います。具体的に、どのような点が問題であるか、どのように改善すべきかについて、助言や指導が行われます。この段階では、まだペナルティはありません。

助言・指導を行っても改善されない場合、次の段階として勧告が行われます。勧告は、助言・指導よりも強い行政指導であり、書面で通知されます。そして、勧告を受けた翌年度から、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍になります。この時点で、経済的なペナルティが発生することになります。

それでも改善されない場合、さらに強い措置として命令が出されます。命令に従わない場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、市町村が代わりに空き家を解体し、その費用を所有者に請求する行政代執行が行われることもあります。

このように、段階的な手続きが取られますので、助言や指導の段階で適切に対応すれば、固定資産税の増加を回避できます。市町村から通知が届いたら、決して無視せず、速やかに対応することが重要です。

相続放棄という選択肢

空き家を相続したくない場合、相続放棄という選択肢があります。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになり、不動産だけでなく、すべての相続財産を相続しないことになります。

相続放棄をするには、自分が相続人であることを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄申述書と必要書類を提出する必要があります。この3か月という期間は非常に短く、被相続人が亡くなった直後は葬儀や法要などで忙しく、あっという間に過ぎてしまいます。相続放棄を検討している場合は、早めに決断し、手続きを進める必要があります。

相続放棄の手続きに必要な書類は、相続放棄申述書、被相続人の戸籍謄本または除籍謄本、被相続人の住民票の除票、申述人の戸籍謄本です。相続放棄にかかる費用は比較的少額で、収入印紙が800円、郵便切手が500円程度、戸籍謄本等の取得費用が数千円で、合計5000円程度で済みます。

ただし、自分で手続きを行うのが不安な場合は、司法書士や弁護士に依頼することもできます。司法書士に依頼する場合の報酬は2万円から10万円程度、弁護士に依頼する場合は1人あたり10万円から15万円程度が相場です。

相続放棄後の管理義務

以前は、相続放棄をしても、次の相続人が管理を始めるまでは管理義務が継続するとされていました。例えば、子が相続放棄した場合、次順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が管理を始めるまで、子が空き家を管理し続けなければならないとされていました。

しかし、2023年4月の民法改正により、放棄の時点で実際に占有していた者のみが管理義務を負うことが明確化されました。つまり、実家を離れて暮らしており、空き家を実際に占有していなかった相続人が相続放棄した場合、管理義務は負わないことになります。

ただし、放棄の時点で実際に空き家に住んでいた場合や、空き家の鍵を管理していた場合、空き家内に自分の荷物を保管していた場合などは、実際に占有していたとみなされ、管理義務が継続する可能性があります。

相続放棄を検討する際は、自分が空き家を占有していたかどうかを慎重に判断する必要があります。

相続財産清算人の選任

すべての相続人が相続放棄した場合、空き家は相続人のいない財産となります。このような場合、利害関係者が家庭裁判所に申し立てることで、相続財産清算人を選任してもらうことができます。

相続財産清算人は、相続人のいない財産を管理・処分する役割を担います。空き家を売却したり、解体したりして、適切に処理します。

ただし、相続財産清算人の選任には、予納金として数十万円から100万円以上が必要となる場合があります。予納金は、相続財産清算人の報酬や、管理・処分にかかる費用の前払いとして納めるものです。相続財産から費用を賄える場合は予納金が不要または少額で済みますが、価値のない空き家の場合は、高額な予納金が必要となることがあります。

また、相続財産清算人への報酬も月額1万円から5万円程度かかるため、1年間で最低でも13万円から60万円以上の費用がかかる計算になります。

相続放棄をすれば費用負担から解放されると考えがちですが、すべての相続人が放棄した場合、最終的に相続財産清算人の選任費用を誰かが負担しなければならないことがあります。

空き家の活用方法

空き家を放置せず、有効活用する方法もあります。主な活用方法として、売却、賃貸、解体があります。

空き家を売却することで、管理の手間や固定資産税の負担から完全に解放されます。相続した空き家を売却する場合、税制上の優遇措置があります。被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合、譲渡所得から最大3000万円の特別控除を受けられる可能性があります。

この特例を利用するには、いくつかの要件があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物いわゆるマンション等でないこと、相続開始直前に被相続人が一人で居住していたこと、売却価格が1億円以下であることなどです。

この特例は期限付きですので、該当する場合は早めの売却を検討しましょう。また、売却前に相続登記を完了させておく必要があります。登記が未了のままでは売却できませんので、注意が必要です。

空き家を賃貸物件として活用する方法もあります。リフォームやリノベーションを行い、賃貸住宅や民泊として貸し出すことで、継続的な収入を得ることができます。ただし、初期投資としてリフォーム費用がかかることや、借主が見つからないリスク、管理の手間などを考慮する必要があります。また、賃貸経営には、入居者とのトラブル対応や、建物の維持管理など、継続的な手間とコストがかかります。

空き家の解体と補助金

空き家を解体し、更地にすることで、駐車場として貸し出したり、新たに建物を建てたりすることができます。空き家の解体には、多くの自治体で補助金制度が設けられています。

補助金の上限はおおむね50万円から100万円程度が中心で、補助率は工事費の2分の1程度とされることが多いです。延床面積30坪の木造住宅なら解体費用は約90万円から150万円、鉄筋コンクリート造40坪なら200万円から300万円を超えるケースもあります。補助金を利用することで、費用負担を大幅に軽減できます。

ただし、補助金の交付申請は、ほとんどの場合、解体工事の前に行う必要があります。申請のタイミングを誤ってしまうと、着工後の工事は対象外となり、補助金が受け取れなくなる場合があります。必ず、工事を始める前に、自治体の窓口で申請手続きを行いましょう。

また、補助金には予算の上限があり、申請者が多い場合は抽選となることや、年度の途中で予算が尽きて受付が終了することもあります。補助金の利用を検討している場合は、年度の初めに早めに申請することをお勧めします。

解体により住宅がなくなると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍程度に上がることがあります。解体後は更地としての活用方法、例えば駐車場、アパート建設、売却などもあわせて考えることが大切です。更地のまま放置すると、高い固定資産税を払い続けることになりますので、解体前に出口戦略を考えておくことが重要です。

よくあるトラブルと失敗例

相続登記義務化において、よくある誤解が、遺産分割協議が成立するまで登記しなくてよいというものです。実際には、まず相続開始から3年以内に相続人申告登記または法定相続分での相続登記を行い、その後、遺産分割協議が成立したら、成立時点から3年以内に改めて登記を行う二段階ロケット方式が必要です。

遺産分割協議の成立を待っていると、3年の期限を過ぎてしまい、過料の対象となる可能性があります。協議が難航している場合は、必ず期限内に相続人申告登記を行いましょう。

相続登記申請が却下される理由として非常に多いのが、地番の間違いです。不動産登記における地番は、住所とは異なる番号体系です。住所をそのまま登記申請書に記載すると、申請が却下されてしまいます。地番は、法務局で取得できる登記事項証明書や公図で確認できます。また、固定資産税の納税通知書にも記載されています。

相続放棄を検討している場合、相続財産を使用してしまうと単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。例えば、被相続人の預金を引き出して使用する、相続財産である不動産を売却する、遺品を処分するなどの行為は、単純承認とみなされる可能性があります。相続放棄を検討している場合は、相続財産に手を付けないよう注意が必要です。

相続登記を次の世代に先送りすると、相続人の数が指数関数的に増加し、権利関係が極めて複雑になります。例えば、祖父の代で登記を済ませていなかった土地について、孫の代で登記しようとすると、すでに相続人が10人以上になっていることも珍しくありません。相続人全員の同意を得るのは非常に困難です。相続が発生したら、速やかに登記を済ませることが重要です。

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