空き家の3000万円特別控除は12月31日が期限!相続から3年以内の売却で節税する方法

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相続した実家が空き家になっているものの、売却すると多額の税金がかかるのではないかと心配されている方は少なくありません。しかし、空き家の譲渡所得の3000万円特別控除という制度を活用すれば、最大3000万円まで譲渡所得から控除でき、大幅な節税が可能です。ただし、この制度には12月31日という重要な期限が設定されており、期限を過ぎると適用を受けられなくなってしまいます。具体的には、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があり、さらに制度全体の適用期限として令和9年12月31日という期限も存在します。また、令和6年1月1日以降の税制改正により、買主による耐震改修や解体も対象となるなど制度が使いやすくなった一方で、相続人が3人以上の場合は控除額が2000万円に減額されるといった変更点もあります。本記事では、空き家の3000万円特別控除について、期限の意味や要件、手続き、節税効果まで詳しく解説していきます。

目次

空き家の3000万円特別控除とはどのような制度なのか

空き家の譲渡所得の3000万円特別控除は、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋やその敷地を売却した場合に、一定の要件を満たすときは譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除できる特例措置です。この制度は、全国で増加している空き家の発生を抑制し、適切な管理や利活用を促進することを目的として設けられました。

制度の適用期間は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までとなっています。当初は令和5年12月31日までとされていた適用期限が、令和5年度の税制改正により令和9年12月31日まで延長されたことで、より多くの相続人がこの制度を活用できる期間が確保されることになりました。この延長により、相続から3年以内という個別の期限に加えて、全体としての適用期限も考慮する必要が生じています。

令和6年1月1日以後に行う譲渡で相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額が2000万円までに減額される点には注意が必要です。これは令和5年度の税制改正により導入された新しい規定であり、複数の相続人がいる場合の控除額に制限が設けられました。一方で、相続人が1人または2人の場合は従来通り3000万円の控除が適用されます。

この制度を活用することで、相続した空き家を売却する際の税負担を大幅に軽減できるため、空き家を放置せず早期に市場に流通させるインセンティブとなっています。特に、相続税の支払いなどで資金が必要な時期に空き家を売却するケースでは、この節税効果は非常に大きな意味を持ちます。

12月31日期限が持つ2つの重要な意味

空き家の3000万円特別控除における12月31日という期限には、2つの異なる意味があり、それぞれをしっかりと理解しておく必要があります。

第一の意味は、個別の譲渡期限です。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があります。例えば、令和4年3月15日に相続が開始した場合、3年後は令和7年3月15日となり、その日が属する年の12月31日、つまり令和7年12月31日が譲渡の期限となります。この期限の計算方法は、単純に3年後ではなく、3年を経過する日が属する年の年末まで猶予があるという点がポイントです。

この期限を1日でも過ぎてしまうと、たとえ他の要件をすべて満たしていても特例措置を受けることができなくなります。売買契約の締結日ではなく、所有権の移転登記や引き渡しまで完了している必要がありますので、年末に近い時期に売却を検討する場合は、手続きに十分な時間的余裕を持って進めることが極めて重要です。

第二の意味は、制度全体の適用期限です。令和9年12月31日という期限が設定されており、この日までに譲渡が完了していなければ、相続からの期間にかかわらず特例措置を受けることができません。したがって、実際の譲渡期限は、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日と、令和9年12月31日のうち、いずれか早い方となります。

例えば、令和8年6月1日に相続が開始した場合、3年を経過する日は令和11年6月1日で、その年の12月31日は令和11年12月31日となりますが、制度の適用期限である令和9年12月31日の方が早いため、実際の期限は令和9年12月31日となります。このように、相続の時期によっては制度全体の期限が先に到来することもあるため、注意が必要です。

この12月31日という期限は年末を意味しており、年度末の3月31日ではないことにも注意が必要です。暦年の最終日であるため、年末年始の休暇期間と重なることもあり、不動産業者や司法書士などの専門家のスケジュールも考慮して、早めに手続きを進めることが推奨されます。

特別控除の対象となる建物の詳細要件

被相続人居住用家屋として特例措置の対象となるためには、建物が次の3つの要件すべてに当てはまる必要があります。これらの要件は厳格に定められており、一つでも満たさない場合は特例を受けることができません。

第一の要件は、昭和56年5月31日以前に建築されたことです。これは、旧耐震基準で建築された建物を対象とすることを意味しています。昭和56年6月1日に施行された建築基準法の改正により新耐震基準が導入されましたので、それ以前に建築された建物が対象となります。建築時期は、建築確認済証や登記事項証明書の記載内容で確認することができます。昭和56年6月1日以降に建築された建物は、たとえ他の要件を満たしていても対象外となりますので、建築日が境界線付近にあるケースでは正確な日付の確認が不可欠です。

第二の要件は、区分所有建物登記がされている建物でないことです。これは、マンションなどの集合住宅は対象外であることを意味します。区分所有建物とは、一棟の建物を区分して、それぞれを独立した建物として所有権の対象とする建物のことで、一般的にはマンションがこれに該当します。したがって、この特例は主に戸建て住宅が対象となります。

第三の要件は、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことです。これは、被相続人が一人で暮らしていた家屋であることが条件となります。配偶者や子供などと同居していた場合は、この要件を満たさないため特例を受けることができません。

ただし、平成31年4月1日以降の譲渡については、要介護認定等を受けて被相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば適用対象となります。この場合、老人ホーム入所前は被相続人が一人で暮らしていたこと、入所後は空き家のままであったことなどの要件が求められます。

譲渡する際に満たすべき条件とは

特例措置を受けるためには、建物や敷地の譲渡について次のような要件を満たす必要があります。これらの要件は譲渡の方法によって異なる部分がありますので、自分の状況に応じて確認することが重要です。

譲渡価格については1億円以下であることが要件となっています。これは、同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋またはその敷地等について、その相続の時から譲渡の時までの間に行った譲渡の対価の額の合計額が1億円を超えないことを確認する必要があることを意味します。複数回に分けて譲渡する場合は、その合計額が判定対象となりますので、最初の売却時から全体の価格を意識しておく必要があります。

建物を取り壊さずに建物付きで売却する場合は、譲渡の時において一定の耐震基準を満たすことが必要です。具体的には、地震に対する安全性に係る規定または基準に適合するものであることが求められます。令和6年1月1日以降の譲渡については、売買契約等に基づいて買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修工事を行った場合でも特例が適用されるようになりました。これは制度改正による大きな変更点で、売主が事前に数百万円かけて耐震改修を行う必要がなくなり、買主による改修でも対象となるため利用しやすくなりました。

建物を取り壊して更地で売却する場合は、相続の時から取り壊しの時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないことが要件となります。また、取り壊しの時から譲渡の時まで、建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないことも必要です。つまり、相続してから取り壊しまでの間、そして取り壊してから売却までの間、空き家のままにしておく必要があります。相続後に賃貸に出していたり、駐車場などに利用していたりした場合は、この要件を満たさないことになります。

令和6年1月1日以降の譲渡については、売買契約等に基づいて買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに家屋の除却工事を行った場合でも特例が適用されるようになりました。これにより、売主が取り壊しを行わなくても、買主が取り壊す前提での売却が可能になり、不動産会社への買取などが利用しやすくなりました。

令和6年度税制改正による重要な変更内容

令和6年1月1日以降の譲渡から適用される税制改正により、いくつかの重要な変更点があります。これらの変更は制度の使いやすさに大きく影響するため、売却を検討している方は必ず確認しておく必要があります。

最大の変更点は買主による解体や耐震改修も対象になったことです。令和5年12月31日までは、売主が譲渡前に耐震改修や取り壊しを行う必要がありましたが、令和6年1月1日以降の譲渡からは、売買契約等に基づいて買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却工事を行った場合でも特例が適用対象となりました。

この改正により、売主は多額の耐震改修費用や取り壊し費用を負担することなく、そのままの状態で売却することが可能になりました。特に、不動産買取業者に売却する場合など、買主側で建物の処分や改修を行うことが前提となっているケースでは、この改正により大幅に利用しやすくなりました。従来は売主が数百万円の費用を先に負担する必要があったため、資金面で余裕のない相続人にとっては大きな障壁となっていましたが、この改正により障壁が取り除かれました。

もう一つの重要な変更点は、相続人が3人以上の場合は控除額が減額されることです。令和6年1月1日以降の譲渡で、相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額が2000万円までに減額されました。令和5年12月31日までは、相続人の数に関わらず3000万円の控除が可能でしたが、この改正により複数の相続人がいる場合の控除額に制限が設けられました。

ただし、相続人が1人または2人の場合は従来通り3000万円の控除が適用されます。したがって、相続人の数によって控除額が異なることに注意が必要です。複数の相続人で共有している物件を売却する場合は、控除額の合計が2000万円となり、各相続人の持ち分に応じて按分されることになります。

さらに、適用期限の延長も重要な変更点です。令和5年度の税制改正により、令和5年12月31日までとされていた適用期限が令和9年12月31日まで延長されました。これにより、より多くの相続人がこの制度を活用できる期間が延長されています。ただし、今後さらに延長されるかどうかは不確実ですので、現在の制度を確実に利用できるよう計画的に進めることが推奨されます。

老人ホーム入所の場合でも適用を受けられるケース

被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば特例措置の適用対象となります。この特例は平成31年4月1日以降の譲渡について適用されており、高齢化社会における実態に即した制度となっています。

老人ホーム入所の場合に適用を受けるためには、まず被相続人が要介護認定等を受けていたことが必要です。具体的には、介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定または同条第2項に規定する要支援認定を受けていた場合、あるいは障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する障害支援区分の認定を受けていた場合などが該当します。

次に、被相続人が相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所していたことが要件となります。老人ホーム等には、老人福祉法に規定する養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護保険法に規定する介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅などが含まれます。

重要な注意点として、要介護認定等を老人ホーム等に入所する直前に受けていたことが必要です。これは、他の相続税の小規模宅地等の特例などとは異なる点で、相続開始時点で要介護認定を受けていればよいというわけではありません。入所時点で既に要介護認定を受けていることが求められます。この点を見落とすと、せっかく他の要件を満たしていても適用を受けられなくなってしまいます。

また、被相続人が老人ホーム等に入所した後、その家屋が事業の用、貸付けの用または被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないことも要件となります。つまり、老人ホームに入所した後も、その家屋は空き家のままにしておく必要があります。家族が住んだり、賃貸に出したりしていた場合は、この要件を満たさないことになります。

特例措置を受けるための手続きの流れ

この特例措置を受けるためには、適切な手続きを踏む必要があります。手続きは大きく分けて2つの段階があり、それぞれで必要な書類や期限が異なります。

第一段階は市区町村での確認書の取得です。家屋の所在地を管轄する市区町村に対して、被相続人居住用家屋等確認書の交付申請を行います。申請には、被相続人居住用家屋等確認申請書のほか、様々な添付書類が必要となります。

主な添付書類としては、登記事項証明書、被相続人の除票の写し、相続人の戸籍謄本、売買契約書の写し、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(建物付きで譲渡する場合)、取り壊し証明書(取り壊して譲渡する場合)などがあります。老人ホーム入所の場合は、さらに入所時の契約書の写し、要介護認定等の証明書などが必要となります。

市区町村での確認書の交付には、通常1日から10日程度かかりますが、書類の不備がある場合や確定申告の期限が近い繁忙期には、さらに時間がかかることがあります。余裕を持って申請することが重要です。特に、相続から時間が経過している場合、被相続人の除票の保存期間が経過して取得できなくなる可能性もありますので、早めの準備が推奨されます。

第二段階は税務署での確定申告です。市区町村から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書を添付して、譲渡所得の確定申告を行います。確定申告は、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までの間に行う必要があります。この確定申告を行わないと、特例措置を受けることができませんので、必ず期限内に申告を行う必要があります。

確認書の交付を受けただけでは、自動的に特例措置が適用されるわけではありません。確認書はあくまで要件の一部を満たすことを証明する書類であり、最終的な判断は税務署が行います。要件を満たしているかどうか不明な点がある場合は、事前に税務署に相談することが推奨されます。

実際の節税効果を計算例で確認

この特例措置による節税効果がどの程度になるか、具体的な計算例を見てみましょう。実際の数字で確認することで、制度の有用性がより明確になります。

計算例1として、売却価格3500万円、取得費1200万円、譲渡費用300万円の場合を考えます。

まず、特例措置を適用しない場合の計算です。譲渡所得は売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額となりますので、3500万円マイナス1200万円マイナス300万円で2000万円となります。この譲渡所得に対して、長期譲渡所得の税率(所得税15パーセント、住民税5パーセント、合計20パーセント、別途復興特別所得税0.315パーセント)を適用すると、税額は2000万円かける20.315パーセントで約406万円となります。

次に、特例措置を適用した場合の計算です。課税譲渡所得は譲渡所得から特別控除を差し引いた金額となりますので、2000万円マイナス3000万円となりますが、マイナスになる場合は0円となります。したがって、税額は0円となり、約406万円の節税効果があることがわかります。

計算例2として、売却価格3500万円、取得費1200万円、譲渡費用300万円、相続人が3人の場合(令和6年1月1日以降の譲渡)を考えます。譲渡所得の計算は計算例1と同じで2000万円です。令和6年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上の場合は、特別控除額が2000万円となります。課税譲渡所得は2000万円マイナス2000万円で0円となります。この場合も税額は0円となりますが、譲渡所得が特別控除額と同額だったため、結果的に課税所得は0円となりました。

計算例3として、売却価格5000万円、取得費1500万円、譲渡費用500万円の場合を考えます。譲渡所得は5000万円マイナス1500万円マイナス500万円で3000万円となります。特例措置を適用しない場合、税額は3000万円かける20.315パーセントで約609万円となります。特例措置を適用した場合、課税譲渡所得は3000万円マイナス3000万円で0円となり、税額は0円となります。節税効果は約609万円となります。

このように、この特例措置は非常に大きな節税効果があることがわかります。特に、譲渡所得が3000万円以下の場合は、課税所得が0円となり、税金がかからなくなります。数百万円単位での節税が可能であるため、相続した空き家を売却する際にはぜひ活用を検討すべき制度です。

よくある質問と注意すべきポイント

実際に制度を利用する際によくある質問や注意すべき点について説明します。これらを事前に理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。

質問1:売買契約書に建物は土地引渡し後に取り壊すという条項がある場合、特例措置は適用されますか。

この場合、建物を取り壊した後の譲渡とは認められませんので、令和5年12月31日までの譲渡では特例措置は適用されませんでした。建物を取り壊して譲渡する場合は、譲渡前に取り壊しを完了している必要がありました。ただし、令和6年1月1日以降の譲渡で、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに取り壊す場合は、特例が適用されます。

質問2:相続してから空き家を賃貸に出していた場合、特例措置は適用されますか。

相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないことが要件となっていますので、賃貸に出していた場合は特例措置は適用されません。空き家のままにしておく必要があります。この点は厳格に判定されますので、たとえ短期間であっても賃貸に出していた場合は適用を受けられません。

質問3:複数の相続人で共有している場合、それぞれが3000万円の控除を受けられますか。

令和5年12月31日までの譲渡の場合、各相続人がそれぞれ3000万円の控除を受けることができました。しかし、令和6年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除額の合計が2000万円となり、各相続人の持ち分に応じて按分されます。相続人が2人以下の場合は、各相続人がそれぞれ3000万円まで控除を受けることができます。

質問4:昭和56年6月1日に建築された建物は対象になりますか。

対象となるのは昭和56年5月31日以前に建築された建物ですので、昭和56年6月1日に建築された建物は対象になりません。建築日が境界線上にあるケースでは、建築確認済証や登記事項証明書で正確な日付を確認する必要があります。1日の違いで適用の可否が変わりますので、慎重な確認が必要です。

質問5:確認書を取得すれば確実に特例措置を受けられますか。

確認書は要件の一部を市区町村が確認したものであり、確認書を取得したからといって確実に特例措置を受けられるとは限りません。最終的な判断は税務署が行いますので、不明な点がある場合は税務署に相談することが推奨されます。

注意点1:期限は厳守する必要があります。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限は、1日でも過ぎると特例措置を受けることができなくなります。また、令和9年12月31日という制度全体の期限もあります。余裕を持って手続きを進めることが重要です。

注意点2:必要書類は早めに準備しましょう。相続後に取得が困難になる書類もあります。特に、被相続人の除票は保存期間が定められているため、相続から時間が経過すると取得できなくなる可能性があります。売却を検討し始めた段階で、必要な書類を確認し、準備を始めることが推奨されます。

注意点3:売却価格は1億円以下である必要があります。売却価格が1億円を超えると、特例措置を受けることができません。複数回に分けて売却する場合は、その合計額が判定対象となりますので注意が必要です。

注意点4:確定申告は必ず行う必要があります。特例措置を受けるためには、確定申告が必須です。普段は確定申告を行っていない給与所得者であっても、不動産を売却して特例措置を受ける場合は確定申告が必要です。期限内に申告を行わないと、特例措置を受けることができなくなります。

制度が持つ社会的意義と個人へのメリット

この制度は、個人にとっての節税効果だけでなく、社会全体にとっても重要な意義があります。両面からの価値を理解することで、制度の重要性がより明確になります。

個人にとっての最大のメリットは大きな節税効果です。前述の計算例で見たように、数百万円単位での節税が可能です。相続した空き家の売却は、相続税の支払いなどで資金が必要な時期に行われることが多いため、この節税効果は非常に大きな意味を持ちます。相続税を支払った後に空き家を売却して、さらに多額の譲渡所得税を支払うとなると、相続人の負担は非常に重くなります。この制度により、その負担を大幅に軽減できます。

また、この制度により空き家を早期に売却するインセンティブが生まれます。相続から3年以内という期限があることで、相続人は空き家を放置せず、早めに処分を検討するようになります。空き家を長期間放置すると、建物の老朽化が進み、近隣に迷惑をかけたり、治安上の問題が生じたりする可能性があります。早期の売却により、こうした問題を防ぐことができます。

令和6年の改正により、買主が耐震改修や取り壊しを行う場合も対象となったことで、売主の負担が大幅に軽減されました。これまでは、売主が数百万円の費用をかけて耐震改修や取り壊しを行う必要があり、特に資金面で余裕のない相続人にとっては、この負担が障壁となっていました。改正後は、不動産会社などに現状のまま売却することが可能になり、より多くの人がこの制度を活用できるようになりました。

社会全体にとっての意義としては空き家問題の解決への寄与が挙げられます。日本では、人口減少や高齢化により空き家が増加しています。総務省の調査によると、全国の空き家数は増加傾向にあり、地域によっては深刻な問題となっています。空き家は、景観の悪化、治安の悪化、火災のリスク増加、建物の倒壊リスクなど、様々な問題を引き起こします。

この制度により、相続した空き家が早期に市場に流通することで、新たな居住者や事業者が利用することが可能になります。特に、旧耐震基準の建物が対象となっているため、これらの建物が耐震改修されたり、取り壊されて新しい建物が建設されたりすることで、地域の安全性向上にも寄与します。

また、空き家の流通促進は中古住宅市場の活性化にもつながります。日本では新築住宅が好まれる傾向がありますが、中古住宅をリノベーションして活用することは、資源の有効活用という観点からも重要です。この制度により、相続した空き家が適正価格で市場に供給されることで、中古住宅市場がより活性化することが期待されます。

専門家への相談が成功の鍵となる理由

この制度は要件が複雑であり、個別のケースによって適用の可否が異なることがあります。そのため、専門家への相談が成功の鍵となります。

税理士は譲渡所得の計算や確定申告の手続きについて専門的なアドバイスを提供できます。特に、取得費が不明な場合の概算取得費の適用、他の特例措置との選択適用、相続税の取得費加算の特例との併用可否など、複雑な税務上の判断が必要な場合は、税理士に相談することが推奨されます。税理士は、個々の状況に応じた最適な節税策を提案してくれます。

不動産業者は物件の査定や売却戦略についてアドバイスを提供できます。特に、耐震改修や取り壊しを行うべきか、そのまま売却すべきかの判断や、売却のタイミング、適正な売却価格の設定などについて、専門的な知識を持っています。令和6年の改正により買主が改修や取り壊しを行う場合も対象となったため、不動産業者との連携がより重要になっています。

弁護士や司法書士は相続人間での遺産分割協議や所有権移転登記など法律面でのサポートを提供できます。特に、相続人が複数いる場合や、相続関係が複雑な場合は、専門家のサポートが重要です。遺産分割協議が整わないと売却自体ができませんので、早めに専門家に相談することが推奨されます。

市区町村の空き家対策担当部署や国土交通省のウェブサイトなども、制度に関する情報を提供しています。制度の概要や手続きの流れについては、これらの公的機関の情報を参照することも有効です。各市区町村では確認書の申請に関する相談窓口を設けているところもあります。

税務署では、制度の適用要件や確定申告の手続きについて相談することができます。特に、自分のケースが要件を満たすかどうか不明な場合は、事前に税務署に相談することで、後のトラブルを避けることができます。税務署は事前相談にも応じてくれますので、積極的に活用することが推奨されます。

複数の専門家に相談することも有効です。例えば、税理士に税務面の相談をしつつ、不動産業者に売却戦略の相談をするなど、それぞれの専門家の知識を活用することで、より適切な判断ができます。相談のタイミングも重要です。相続が発生した時点で早めに相談することで、必要な書類の準備や売却のタイミングなどについて、計画的に進めることができます。期限が迫ってから相談すると、選択肢が限られてしまうこともあります。

制度の今後と活用に向けた心構え

この制度の適用期限は現在、令和9年12月31日までとされています。これまでも何度か期限が延長されてきた経緯があり、今後も延長される可能性はありますが、確実ではありません。

空き家問題は今後も継続すると予想されており、特に地方部や高齢化の進んだ地域では深刻さを増す可能性があります。そのため、この制度の必要性は今後も続くと考えられ、さらなる延長や制度の恒久化を求める声もあります。しかし、税収への影響も考慮する必要があるため、延長が確実とは言えません。

一方で、令和6年の改正で相続人が3人以上の場合の控除額が減額されたように、制度の見直しも行われています。これは、税収への影響や制度の適正な利用を確保するための措置と考えられます。今後も、制度の利用状況や空き家問題の状況に応じて、要件や控除額などが変更される可能性があります。

また、令和6年の改正で買主による耐震改修や取り壊しも対象となったように、制度がより使いやすい方向に改正されることもあります。今後も、実際の利用状況や課題を踏まえて、制度がさらに改善される可能性があります。利用者の声や社会の状況に応じて、制度は進化していくものと考えられます。

制度を利用する側としては現行の制度を最大限活用することが重要です。特に、適用期限である令和9年12月31日が近づいている場合や、相続から3年の期限が近い場合は、早めに行動を起こす必要があります。期限後に制度が延長されるかどうかは不確実ですので、現在の制度を確実に利用できるよう、計画的に進めることが推奨されます。

空き家問題は社会的にも重要な課題であり、この制度はその解決に寄与しています。制度を適切に活用することで、個人の節税だけでなく、社会全体の空き家問題の解決にも貢献することができます。相続した空き家をお持ちの方は、12月31日という期限を意識しつつ、この制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。早めに専門家に相談し、計画的に進めることで、最大限のメリットを得ることができるでしょう。

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