近年、終活の一環として生前整理への関心が高まっており、その中でも着物の処分は多くの方が悩む問題となっています。着物は日本の伝統文化の象徴であり、高価で思い入れが深いものですが、適切に保管するには手間がかかり、時間が経つにつれて価値が下がってしまう傾向があります。
本人が着物を残したまま亡くなると、遺族にとっては代々受け継がれた大切なものとなり、本人以上に処分が困難になる可能性があります。「いつか着るかも」「家族が着るかも」という思いから手元に残す方も多いですが、実際には着る機会が限られることや、体型の変化でサイズが合わなくなることも少なくありません。
生前整理における着物の処分は、単なる物の整理を超え、自身の思い出と向き合う大切な作業です。この記事では、着物の処分方法から最新の買取情報まで、2025年8月時点での詳細な情報をQ&A形式で解説し、あなたとご家族にとって最適な選択ができるようサポートいたします。

Q1: 生前整理で着物を処分する理由とタイミングは?
生前整理とは、ご自身が元気なうちに、将来の老後や死後に備えて身の回りのものを整理することを指します。これは残される家族への「最後の思いやり」とも言われ、遺品整理をする際の精神的・身体的な負担を軽減することが主な目的です。
着物を生前整理の段階で処分を検討すべき理由はいくつかあります。まず、着物は年月が経つにつれて価値が下がってしまう傾向があることです。着用せずに保管していても時間が経つだけで傷む可能性があり、虫食いやカビの付着を防ぐために年に2回程度の虫干しが必要など、非常に手間がかかります。
また、古い着物は現在の日本人の平均身長に合わない小さなサイズであることが多く、着用が困難な場合も少なくありません。現代の生活様式では着物を着る機会も限定的で、「いつか着るかも」という思いだけで保管し続けることは現実的ではない場合が多いのです。
生前整理のタイミングとしては、体力と判断力があるうちに行うことが重要です。着物の価値を正しく判断し、適切な処分方法を選択するためには、冷静な判断力が必要だからです。また、家族と相談しながら進めることで、後々のトラブルを避けることができます。
着物の処分を先延ばしにすると、本人が亡くなった後に遺族が処分に困ることになります。遺族にとっては故人の思い出が詰まった品物であり、本人以上に捨てづらくなる可能性があるため、元気なうちに自分の意思で整理することが、家族への配慮にもつながるのです。
Q2: 着物の処分方法にはどのような選択肢がある?
着物の処分方法は大きく分けて「譲渡・寄付」「リメイク」「売却(買取)」「廃棄処分」の4つの選択肢があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく解説します。
譲渡・寄付では、家族・親戚・知人に譲る方法と、NPO法人や大学などの団体に寄付する方法があります。家族に譲る場合は、娘や孫が卒業式や成人式に「ママ振り」として着用できるなど、着物を活用する機会が生まれることもあります。ただし、生前贈与として課税の対象となる場合があるため、着物の価値を事前に確認する必要があります。
NPO法人への寄付では、NPO法人もったいないジャパンやWE21ジャパン、セカンドライフなどが着物の寄付を受け付けています。これらの団体は集まった着物を国内外で再利用したり、福祉活動に活用したりしています。セカンドライフの場合、送料・ワクチン募金・活動費を含む費用が2,500円~かかりますが、寄付した箱数に応じてポリオワクチン募金も実施されています。
リメイクは、着物の生地を活かしてドレスやアクセサリー、バッグ、クッションカバーなどの小物に作り変える方法です。故人の思い出の詰まった着物を形を変えて手元に残すことができるのが最大のメリットです。シミや穴が空いている着物でも、綺麗な部分を切り取って再利用できる場合があります。
売却(買取)は、着物を現金化する方法で、高価な着物の場合は特に有効な選択肢となります。買取方法には店頭買取、宅配買取、出張買取があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。出張買取は自宅で手間なく利用でき、大量の着物でも対応可能で、その場で現金を受け取れるという利点があります。
廃棄処分は最も手軽な方法で、自治体のゴミ出しルールに従って処分します。多くの場合「可燃ごみ」または「資源ごみ」に分類されますが、地域によって異なるため事前確認が必要です。汚れや変色がひどく、他の方法での活用が難しい場合に選択されることが多い方法です。
どの方法を選択するかは、着物の状態、価値、個人の価値観によって決まります。複数の方法を組み合わせることも可能で、価値の高いものは買取に出し、思い出深いものはリメイクして、状態の悪いものは廃棄するといった使い分けも効果的です。
Q3: 着物買取で高く売れる着物の特徴と相場は?
着物の買取において重要なのは、購入時の価格と買取価格には大きなギャップがあるということを理解することです。着物は購入時に数十万円から数百万円と高価であっても、中古品として扱われるため、買取金額は購入時の約10%〜20%と大幅に下がるのが一般的です。これは着物市場の需要が減少傾向にあることも影響しています。
高く売れる着物の特徴として、まず種類が重要です。訪問着、振袖、留袖、友禅(京友禅、加賀友禅、東京友禅、十日町友禅など)、付け下げ、小紋、紬(大島紬、結城紬、黄八丈紬、塩沢紬、牛首紬など)、上布(宮古上布、越後上布など)は一般的に高額査定が期待できます。
作家物・人間国宝の着物は希少価値が高く、状態が悪くても高値がつきやすい傾向があります。久保田一竹、羽田登喜男、由水十久、松井青々などの著名な作家が手がけた着物は特に価値が高いとされています。また、大彦、銀座きしや、誉田屋源兵衛などの老舗呉服店や著名ブランドの着物も高値が期待できます。
素材では正絹(しょうけん)製の着物が最も高く評価されます。ポリエステルやウールなど化学繊維の着物は、元々の販売価格が安いため、買取価格も控えめになる傾向があります。保存状態も査定に大きく影響し、シミやカビ、虫食いがない、全体的に綺麗な状態であるほど査定額は上がります。
落款・証紙の存在も重要で、作家や産地を証明する「落款(らっかん)」や「証紙(しょうし)」が付属していると、品質の証明となり、高額査定に繋がりやすくなります。さらに、現在のトレンドに合った柄やデザイン、現在の日本人の平均身長に合う大きめのサイズの着物は、需要が高く高額査定が期待できます。
買取時の注意点として、悪質な業者によるトラブルが報告されています。国民生活センターには「貴金属を強引に買い取られた」「高額請求」「買い叩き」などの相談が寄せられているため、有名で信頼できる大手業者を選ぶこと、2社以上の業者に査定を依頼し相見積もりを取ること、買取を断る際はきっぱりと伝えることなどのトラブル回避策を実践することが重要です。
Q4: 2025年最新の着物買取業者はどこがおすすめ?
2025年8月時点での最新情報をもとに、主要な着物買取業者の特徴とおすすめポイントをご紹介します。ただし、ランキングや査定額は調査機関や検証方法によって異なる場合があるため、複数の情報を参考にすることをおすすめします。
福ちゃん(REGATE)は査定実績800万点以上を誇る総合買取業者で、ある調査では24社中査定額No.1を獲得しています。店舗出店を最小限に抑えることで高価買取を実現し、国内だけでなく海外にも販売経路を持っています。シミや色褪せなど状態不良の着物も買取可能で、他社で断られた着物も買い取る場合があります。女性査定士の指名が可能で、「押し買いしない宣言」をしており誠実な対応を約束しています。2025年8月現在、買取金額が最大5万円アップするキャンペーンを実施中です。
バイセル(BuySell Technologies)は東証マザーズ上場企業で、着物を含む買取実績3700万点以上を誇ります。どのような状態の着物でも相談可能で、証紙がない着物や汚れのある着物も査定対象としています。電話申込が24時間365日可能で、宅配買取では「フォローコール」サービスも提供しています。大手企業のため着物の販路を多数持ち、比較的高価買取を実現しています。
ザ・ゴールド(マックスガイ)は全国76店舗を展開する創業62年の老舗で、顧客満足度に関する調査で5冠を達成しています。最新の着物相場を常に把握し、独自ルートの開拓により適正価格以上での買取を実現しています。査定価格ゼロでも無償引取が可能で、出張買取では「思いやりサポート」として掃除やスマホ操作などの身の回りの困りごとにも対応しています。
きものおおばは東京・日本橋に店舗を構える着物買取専門店で、ある調査では全業者中1位の査定金額を記録しています。特に「落款あり」の着物に高い値がつき、著名な作家や有名ブランドの着物、産地作品の高級呉服の買取に強みを持っています。160cm未満の小さな着物にも比較的高い値が付くのが特徴です。
業者選びの際は、有名で信頼できる大手業者を選ぶ、査定料・出張料・送料が無料の業者を選ぶ、女性査定士の指名が可能かどうか確認する、クーリング・オフ制度があることを確認するなどのポイントを重視しましょう。また、必ず2社以上の業者に査定を依頼し、相見積もりを取ることで適正な価格を把握し、競争原理で買取額が上がる可能性もあります。
契約時には書面の内容をしっかり確認し、不審な点があれば消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談することも大切です。
Q5: 着物を手放す前に確認すべき重要なポイントは?
着物を手放す前には、感情的な側面と実用的な側面の両方を考慮し、後悔のない判断をするための準備が必要です。以下の重要なポイントを確認してから処分を進めましょう。
手元に残すものの選別が最初のステップです。複数の着物の中から「どの着物を手元に残すか」を明確に決定します。「どんな時に着物を着たいか」を具体的に想像し、リスト化することで必要な着物の種類や枚数を絞り込みやすくなります。子供の卒業式や成人式、親族の結婚式、カジュアルなお出かけなど、具体的な用途を考えることで残すべき着物が見えてきます。「とりあえずとっておく着物」は再びタンスの肥やしになる可能性が高いため、思い出だけのものは思い切って断捨離することも重要です。
事前の相談と情報収集も欠かせません。着物を処分する際には、自分ひとりの判断だけでなく、親族などと相談した上で実施することが基本です。特に先祖代々引き継がれてきた着物の場合、勝手に処分すると親族間でのトラブルに発展する可能性があります。着物の価値や相場は分かりにくいため、複数の買取業者から相見積もりを取るなどして、事前に情報を集め妥当な価格感を把握しておくことが大切です。
着物の状態確認では、残す着物や売却する着物を広げて明るい場所でシミ、虫食い、縫い目のほつれ、生地の強度、カビや匂いがないかを目視で確認しましょう。古すぎるシミ、虫食い、生地の劣化があるものは着用不可と諦めた方が良いでしょう。着物を売る前にクリーニングに出す必要はありません。正絹の着物のクリーニング代は高額(10,000〜15,000円)であり、買取金額によっては赤字になる可能性があるためです。
サイズの確認も重要で、着物を羽織って腰ひもで結び、丈、幅、裄(ゆき)の長さを確認し、現在の体形に合うかをチェックします。お直しでサイズを合わせることも可能ですが、高額になることが多いので事前に見積もりを取ることが重要です。
処分に迷うものは一旦保管することも大切です。処分すべきかどうかの判断に迷う着物については、無理に手放す判断をせず、一旦保留にしておくことで後悔を防げます。しばらく期間を空けてから再度判断したり、プロに相談して客観的な意見を聞いたりすることも有効です。
最後に保管方法についても確認しておきましょう。残すことにした着物は、たたんで一枚ずつ「たとう紙」に入れ、湿度の低い場所に平らに置くことが基本です。理想的には年に2回程度の虫干しを行い、時間がない場合は扉や引き出しを時々開けて空気を通わせるようにしましょう。
着物の生前整理は、単なる物の整理を超えて自身の人生と向き合う大切な作業です。これらのポイントを参考に、ご自身とご家族にとって最適な選択をしてください。
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