終活ブームの変遷と最新動向|若い世代にも広がる終活の意義

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2012年にユーキャン流行語大賞でトップ10入りを果たした「終活」という言葉。それから10年以上が経過した今、この言葉は日本社会にしっかりと根付き、その意味も大きく変化してきています。当初は「死に向かう活動」というネガティブなイメージが強かった終活ですが、現代では「自分や家族の将来と理想に現実的に向き合い、不安や悩みを解消していく前向きな活動」として認識されるようになってきました。

特に注目すべきは、終活を始める適切な時期として「60代」と考える人が最も多く、続いて「50代」が続くという調査結果です。さらに、40代以下でも約10%の人が終活を意識し始めているという事実は、終活の若齢化が着実に進んでいることを示しています。この背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による影響も大きく、若い世代でも「いつ、何が起こるかわからない」という不安感が高まったことで、健康や死に対する意識が変化してきているのです。

現代の終活は、エンディングノートの作成や葬儀の準備といった従来のイメージから大きく広がり、「部屋の片付け・不要品処分」や「パソコン・スマホのIDパスワードの管理」といった、より身近で実践的な活動として捉えられるようになってきました。このように、終活ブームは単なる一過性のトレンドではなく、現代社会に必要不可欠な生活設計の一部として、着実に進化を遂げているのです。

目次

終活ブームはいつ頃から始まり、なぜ社会に受け入れられたのでしょうか?

「終活」という言葉が初めて世に出たのは、2009年の「週刊朝日」での連載「現代終活事情」がきっかけでした。この連載をきっかけに、人生の終わり方を考える活動を表す言葉として「終活」が広く認知され始め、2012年にはユーキャン流行語大賞でトップ10入りを果たすまでになりました。その後、この言葉は日本社会に深く浸透し、現在では一過性のブームを超えて、生活に欠かせない重要な概念として定着しています。

終活が社会に受け入れられた背景には、いくつかの重要な社会的要因が存在します。まず挙げられるのが、日本社会の構造的な変化です。少子化と核家族化の進行により、かつては複数の兄弟や親族で分担できていた親の介護や死後の諸手続きが、現在では限られた家族メンバーで担わなければならない状況が生まれています。また、医療技術の進歩による高齢者の長寿化も、終活の必要性を高める要因となっています。2010年当時の日本人の平均寿命は男性が79.55歳、女性が86.30歳と、1950年代に比べて20歳以上も伸長しており、この傾向は現在も続いています。

さらに、家族形態の多様化も終活ブームを後押しする要因となっています。離婚・再婚の増加により、2010年には約25万件もの離婚が報告され、婚姻の約4組に1組が再婚という状況になっています。これに加えて、事実婚やパートナー制度による同性カップルの増加など、従来の家族概念では対応できない新たな課題が生まれています。このような複雑化する家族関係において、遺産相続や終末期の意思決定をスムーズに進めるためにも、事前の準備や取り決めが重要視されるようになってきました。

2011年に発生した東日本大震災も、日本人の終活に対する意識を大きく変えた出来事でした。電通総研の調査によると、震災後1年を経て「想定外の事態の対策を立てたい」と考えた人が回答者の7割を占めたとされています。さらに2020年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、改めて「いつ何が起きてもおかしくない」という意識を社会全体に広めることとなり、若い世代の間でも終活への関心が高まるきっかけとなりました。

また、日本人の死生観にも大きな変化が見られます。かつては「死」を忌むべきものとして捉え、その話題を避ける傾向が強かった日本社会ですが、現代では自分の死や終末期について前向きに考え、語ることへの抵抗感が薄れてきています。X(旧Twitter)などのSNSでも、終活に関する情報交換が活発に行われ、「終活」という言葉自体がより身近なものとなっています。

このような社会の変化を背景に、終活の形も多様化しています。従来のような葬儀や墓の準備だけでなく、デジタル終活と呼ばれるパスワード管理や、生前整理としての部屋の片付けなど、より生活に密着した活動として捉えられるようになってきました。実際、最近の調査では終活として最も多く実践されているのが「部屋の片付け・不要品処分」(58.2%)となっており、次いで「パソコン・スマホのIDパスワードの管理」(33.6%)が続いています。

このように、終活ブームは単なるトレンドではなく、現代社会が直面する様々な課題や変化に対応するための、必然的な生活様式の変革として捉えることができます。それは今後も、社会の変化とともにさらに進化を続けていくものと考えられます。

終活に対する現代人の意識はどのようなものであり、実際にどの程度実践されているのでしょうか?

厚生労働省の調査によると、人生の最終段階における医療・ケアについて「考えたことがある」と回答した人は59.3%に上るものの、実際に家族や医療関係者と「詳しく話し合ったことがある」という人は、わずか2.7%にとどまっています。この数字が示すように、終活の必要性は広く認識されているものの、具体的な行動に移せている人はまだ少数派であるというのが現状です。

話し合いを行っていない理由として最も多く挙げられているのが「話し合うきっかけがなかった」(56.0%)という回答です。次いで「話し合う必要性を感じない」(27.4%)、「知識がないため、何を話し合えばよいのか分からない」(22.4%)となっています。興味深いことに、「話し合いたくない」という消極的な理由を挙げた人はわずか5.8%に過ぎず、多くの人々が終活に対して前向きな姿勢を持っていることが分かります。

一方で、実際に終活を始めている人々の動機を見てみると、マクロミルの調査では、終活経験者やこれから始めようとしている人の約9割が「家族に迷惑をかけたくない」という理由を挙げています。この結果は、現代の終活が、自分自身のためだけでなく、家族への配慮や思いやりを重要な要素として含んでいることを示しています。

具体的な実践内容を見ると、最も多いのが「部屋の片付け・不要品処分」で、58.2%の人が実践または関心を示しています。これは、故人の遺品整理が遺族にとって大きな負担となることが広く認識されているためと考えられます。特に、一戸建ての持ち家を所有している場合、空き家問題にも発展する可能性があり、その対策としても重要視されています。

次に多いのが「パソコン・スマホのIDパスワードの管理」で33.6%となっています。これは、デジタル社会の進展に伴う新しい形の終活として注目を集めています。特に、X(旧Twitter)やその他のSNSアカウント、オンラインバンキング、各種サブスクリプションサービスなど、デジタル資産の管理と引き継ぎが現代の終活における重要な課題として認識されているのです。

さらに、親の終活に関する意識も興味深い傾向を示しています。自分や配偶者の親に望む終活として最も多かったのが「部屋の片付け・不要品処分」(42.2%)で、次いで「遺言書を書く」(28.4%)、「資産管理・資産運用」(27.8%)となっています。しかし、終活について親に相談すると答えた人は10.6%と低く、終活に関する親子間のコミュニケーションの難しさが浮き彫りになっています。

男女による終活への関心の違いも見られ、「資産管理・資産運用」や「家系図作成」については男性の関心が女性の2〜6倍高くなっています。一方、「エンディングノートを書く」については女性の方が関心が高いという結果が出ています。これは、終活に対するアプローチや優先順位が性別によって異なることを示唆しています。

このように、終活に対する現代人の意識は総じて前向きであり、その必要性についても広く認識されているものの、実践に移せている人はまだ少数にとどまっているのが現状です。しかし、終活の内容は従来の葬儀や墓の準備といった範囲を超えて、より生活に密着した実践的な活動へと広がりを見せており、今後はさらに多くの人々が自分なりの終活スタイルを見つけていくことが期待されています。

終活として具体的にどのような取り組みが必要で、どのように始めればよいのでしょうか?

現代の終活は、従来のような葬儀や墓の準備だけにとどまらず、より幅広い活動として捉えられています。最新の調査結果を基に、具体的な終活の取り組み方について解説していきましょう。まず、終活として最も多くの人が取り組んでいるのが「部屋の片付け・不要品処分」で、全体の64.4%の人がこれを終活の一部として認識しています。これは、単なる掃除や整理整頓の延長として気軽に始められる活動であり、終活の入り口として最適な取り組みといえます。

次に注目すべき取り組みが「資産管理・資産運用」で、46.4%の人が重要視しています。これには預貯金や保険の見直し、不動産の管理などが含まれます。特に近年は、持ち家を所有している人が半数以上を占める中で、将来の空き家問題を防ぐための対策として、不動産の売却や活用方法についても、早い段階から検討することが推奨されています。

現代社会を反映した特徴的な終活として、「パソコン・スマホのIDパスワードの管理」が41.4%と高い割合を示しています。このいわゆる「デジタル終活」は、X(旧Twitter)などのSNSアカウントや、インターネットバンキング、各種オンラインサービスのアカウント管理が含まれ、情報化社会における新しい課題への対応として注目を集めています。

従来から終活の代表格とされてきた「エンディングノート作成」は36%の人が重要視しています。エンディングノートには、財産や所有物の管理情報から、医療や介護に関する希望、大切な人への思いまで、幅広い内容を記録することができます。特に、認知症などで意思表示が難しくなった場合に備えて、自分の希望を書き残しておくことは、家族の負担を軽減することにもつながります。

また、終活として取り組むべき内容は、年齢によっても変化していくことが分かっています。若い世代では身近な整理整頓や資産管理から始め、年齢が上がるにつれて「葬儀の見積もり」「お墓の検討」「介護施設の見学」など、より具体的な準備へと広がっていきます。これらはいずれも約20%の人が重要視している項目です。

興味深いことに、「旅行」(16.4%)や「趣味を見つける」(16.2%)といった活動も、終活の一環として捉えられています。これは、終活が単なる「終わりの準備」ではなく、残された時間をより豊かに過ごすための生活設計として認識されていることを示しています。

終活を進める際の相談相手としては、「インターネットの質問コーナー」(35.4%)が最も多く利用されています。これは、デリケートな内容を匿名で気軽に相談できるというメリットがあるためです。次いで「無料で相談できる専門家」(33.8%)、「友人」(25.6%)という順になっており、「親以外の家族」への相談も23.4%と比較的高い割合を示しています。

終活を始めるタイミングについては、60代が最適と考える人が36%で最も多く、50代が30.4%でこれに続いています。しかし、40代以下でも約10%の人が終活を意識し始めており、若い世代からの取り組みも珍しくなくなってきています。これは、コロナ禍の影響で「いつ何が起きてもおかしくない」という意識が若い世代にも広がったことが一因とされています。

終活を始める際の重要なポイントは、無理のない範囲で身近なところから着手することです。特に部屋の整理や身の回りの整理整頓は、将来の家族の負担を減らすだけでなく、現在の生活も快適にする効果があります。また、資産やデジタル情報の管理は、いざというときのために整理しておくべき重要事項です。このように、終活は決して特別なものではなく、より良い人生を送るための生活改善活動として捉えることで、自然に取り組むことができるのです。

親の終活について、子世代はどのように考え、どう対応すべきなのでしょうか?

親の終活は多くの人が直面する重要な課題でありながら、なかなか話し合いのきっかけを見出せないという現状があります。調査によると、終活について親に相談するという人はわずか10.6%にとどまっており、多くの人が親との終活に関するコミュニケーションに難しさを感じていることが分かります。

一方で、子世代が親に望む終活の内容は明確になってきています。最新の調査では、自分または配偶者の親に望む終活として、「部屋の片付け・不要品処分」が42.2%と最も高い数値を示しています。これは、親の家の整理が将来的に子世代にとって大きな負担となることへの不安が反映された結果といえます。特に、親が長年住み慣れた家に様々な思い出の品や所有物を抱えている場合、その整理は物理的にも精神的にも大きな課題となります。

次いで多いのが「遺言書の作成」で28.4%、「資産管理・資産運用」が27.8%となっています。これらの項目が上位に挙がっているのは、相続に関わる問題が家族間の深刻な争いに発展するケースが少なくないためです。特に近年は、家族形態の多様化により、遺産分割がより複雑化する傾向にあります。再婚による複合家族やステップファミリーの増加、事実婚やパートナー制度による同性カップルの存在など、従来の相続の枠組みでは対応が難しいケースも増えています。

しかし、このような切実な願いがありながらも、親との終活に関する対話はなかなか進んでいないのが実情です。その背景には、「親の気持ちを考えると話し出しにくい」「死や相続の話題を出すことで親を不快にさせたくない」といった子世代の配慮や遠慮があります。また、親の側も「まだ早い」「縁起でもない」と考えて、終活の話題を避けようとする傾向があります。

この状況を打開するためには、終活を「死に向かう準備」ではなく、「より良い人生を送るための生活設計」として捉え直すことが重要です。例えば、部屋の片付けや整理は、現在の生活をより快適にするための活動として提案することができます。また、資産管理についても、将来の生活設計を一緒に考えるという前向きな視点で話し合いを始めることが可能です。

特に注目すべきは、終活の開始時期として60代が最適と考える人が36%と最も多く、50代が30.4%でこれに続いているという調査結果です。つまり、多くの人が「元気なうちから」終活を始めることが望ましいと考えています。この認識を共有することで、「まだ早い」という意識を克服することができるかもしれません。

また、終活の相談相手として、インターネットの質問コーナー(35.4%)や無料で相談できる専門家(33.8%)が上位に挙がっていることも重要なポイントです。これらの第三者的な立場からの情報や助言を活用することで、親子間の対話をより円滑に進められる可能性があります。特に、専門家を交えることで、より客観的な視点から終活の必要性を説明することができます。

さらに、親以外の家族、特に兄弟姉妹やいとこなどとの相談(23.4%)も有効な手段として挙げられています。同じ立場にある親族と情報交換することで、より良いアプローチ方法を見出せる可能性があります。

終活に関する親子間の対話を進める具体的なステップとしては、まず日常的な会話の中で、同世代の知人の終活の話題などを出してみることから始めるのが効果的です。また、X(旧Twitter)などのSNSで話題になっている終活関連の情報を共有することで、自然な形で話題を展開することもできます。

重要なのは、一度に多くのことを話し合おうとせず、少しずつ段階的に進めていくことです。例えば、まずは身近な整理整頓から始めて、徐々に重要な事項について話し合っていくというアプローチが望ましいでしょう。このように、終活を通じて親子のコミュニケーションを深め、お互いの思いを理解し合える関係を築いていくことが、真の終活の目的といえるのではないでしょうか。

終活は今後どのように発展していき、どのような社会的意義を持つと考えられるでしょうか?

終活は2009年に生まれた比較的新しい概念ですが、この十数年の間に大きな進化を遂げています。当初は「死に向かう活動」という受け止め方が主流でしたが、現在では「自分や家族の将来と理想に現実的に向き合い、不安や悩みを解消していく前向きな活動」として認識が大きく変化しています。このような認識の変化は、今後の終活の発展方向を示唆する重要な指標となっています。

特に注目すべきは、終活の若齢化傾向です。調査結果によると、終活を始める最適な時期として60代が36%、50代が30.4%と高い支持を集める一方で、40代以下でも約10%の人が終活を意識し始めています。この傾向は、終活が「人生の終わりの準備」から「より良い人生設計のための活動」へと概念が拡大していることを示しています。

現代の終活で最も実践されている「部屋の片付け・不要品処分」(64.4%)という活動も、単なる整理整頓ではなく、持続可能な生活スタイルを確立するための重要な取り組みとして捉えることができます。特に、日本の空き家問題や環境問題との関連で考えると、この活動は個人の生活改善にとどまらない社会的な意義を持っています。

また、「パソコン・スマホのIDパスワードの管理」(41.4%)に代表されるデジタル終活の重要性は、今後ますます高まっていくと予想されます。デジタル社会の進展に伴い、X(旧Twitter)などのSNSアカウントやデジタル資産の管理は、新たな社会的課題として認識されつつあります。将来的には、このようなデジタル資産の継承や管理に関する法整備も進んでいくことが期待されます。

家族関係の多様化も、終活の在り方に大きな影響を与えています。離婚・再婚の増加により、約4組に1組が再婚という状況の中で、ステップファミリーや事実婚カップルなど、従来の家族制度では想定されていなかった形態が増加しています。このような状況下で、「遺言書の作成」(36%)や「資産管理・資産運用」(46.4%)といった活動は、将来の家族間の争いを防ぎ、円滑な財産継承を実現するための重要な手段となっています。

さらに、終活の相談方法として「インターネットの質問コーナー」(35.4%)が最も多く利用されているという事実は、今後のオンラインサービスの発展可能性を示唆しています。特に、新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの相談や手続きの需要は高まっており、この傾向は今後も継続すると考えられます。

終活の社会的意義として特に重要なのは、高齢化社会における新しい生活設計モデルの確立です。日本の高齢化率は今後も上昇を続け、2025年には65歳以上の人口が総人口の30%を超えると予測されています。この中で、終活は単なる個人的な準備にとどまらず、社会全体で高齢期の生活の質を向上させるための重要な取り組みとして位置づけられるでしょう。

また、終活は世代間コミュニケーションの新しいあり方も提示しています。現状では親との終活の相談は10.6%と低い水準にとどまっていますが、この課題に向き合うことで、家族間の対話や相互理解を深める機会となることが期待されます。特に、高齢者の孤立化が社会問題となる中で、終活をきっかけとした家族や地域社会とのつながりの強化は、重要な意味を持つと考えられます。

このように、終活は今後ますます多様化・深化していくことが予想されます。それは単に個人の死後の準備にとどまらず、持続可能な社会の構築、世代間の相互理解の促進、デジタル社会への適応など、様々な社会的課題の解決に寄与する可能性を秘めています。終活という概念が生まれてから十数年、その意義と可能性は着実に広がりを見せており、今後も社会の変化とともに進化を続けていくことでしょう。

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