遺言書作成なら自筆証書保管制度がおすすめ!費用3,900円で安全保管する方法

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遺言書作成を検討している方にとって、自筆証書遺言保管制度は画期的な選択肢として注目されています。令和2年7月に開始されたこの制度は、従来の自筆証書遺言が抱えていた「紛失」「改ざん」「隠匿」といったリスクを解決し、より安全で確実な遺言書保管を実現します。全国312箇所の法務局で利用でき、わずか3,900円という低費用で長期間の安全な保管が可能です。さらに、法務局で保管された遺言書は家庭裁判所での検認手続きが不要となり、相続手続きの大幅な簡素化も実現できます。高齢化社会が進む中、終活の一環として遺言書作成を考える方が増えていますが、どの方法を選ぶべきか迷う方も多いでしょう。本記事では、自筆証書遺言保管制度の詳細な仕組みから実際の利用方法、注意点まで、専門的な内容をわかりやすく解説します。

目次

自筆証書遺言保管制度とは何ですか?従来の遺言書保管との違いは?

自筆証書遺言保管制度は、令和2年7月10日に開始された法務局が自筆証書遺言を預かり保管する制度です。この制度最大の特徴は、遺言書の安全性と確実性を飛躍的に向上させることにあります。

従来の自宅保管では、火災や地震などの災害リスク、家族による不正な取扱いや隠匿の可能性、さらには単純な紛失のリスクが常に存在していました。しかし、法務局という公的機関での保管により、これらのリスクが完全に排除されます。保管期間は遺言者の出生日から120年間、または死亡日から50年間という長期にわたり、原本だけでなく画像データも同時保管されるため、万が一の災害時でも遺言内容を確認できます。

もう一つの重要な違いは、検認手続きが不要になることです。通常、自宅で保管されている自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で検認を受ける必要があり、これには1~2か月程度の時間がかかります。しかし、法務局保管制度を利用すれば、この手続きをスキップして速やかに遺言の執行に移ることができます。

費用面でも大きなメリットがあります。保管申請の手数料は1通につきわずか3,900円で、これは一度支払えば保管期間中の追加費用は発生しません。銀行の貸金庫を年間数万円で利用することと比較すると、長期的には大幅な節約となります。

さらに、死亡時通知制度も重要な特徴です。遺言者は申請時に死亡時の通知を受ける人を指定でき、これにより遺言書の存在が確実に相続人に伝わります。従来の自宅保管では、遺言書の存在自体が発見されないリスクがありましたが、この制度によってそうした心配もなくなります。

自筆証書遺言保管制度の申請手続きと必要書類は?

自筆証書遺言保管制度の申請手続きは、事前準備と正確な理解が成功の鍵となります。まず、申請できる法務局は、遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する法務局のいずれかから選択できます。

申請は必ず事前予約が必要で、法務省の専用ウェブサイト、電話、または窓口で予約を取ることができます。オンライン予約システムは24時間利用可能で、平日の昼間に時間を取りにくい働く世代にとっても便利です。

必要書類は以下の通りです:

  • 申請書(法務省ウェブサイトからダウンロード可能)
  • 遺言書(A4サイズで特定の様式要件を満たしたもの)
  • 本籍記載の住民票の写し
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書)

遺言書の様式要件は非常に重要です。用紙はA4サイズ限定で、余白は上部5mm以上、下部10mm以上、左20mm以上、右5mm以上を確保する必要があります。各ページには通し番号を記載し、片面のみに記載することが求められます。ホチキス留めは禁止されており、封筒に入れることもできません。

申請時は必ず本人が法務局に出頭する必要があり、どのような理由があっても代理申請は認められません。これは遺言者の真意確認と本人確認を確実に行うためです。重病や身体的制約がある場合でも例外はないため、この点は事前に十分検討する必要があります。

手数料は収入印紙3,900円で納付し、現金での支払いは受け付けていません。事前に郵便局等で収入印紙を購入しておきましょう。申請が完了すると、保管証が交付され、これは大切に保管する必要があります。

自筆証書遺言の正しい書き方と財産目録の作成方法は?

自筆証書遺言には、民法で定められた厳格な要件があります。遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印することが必要で、これらの要件を一つでも欠くと遺言全体が無効となってしまいます。

日付の記載は特に注意が必要です。「令和7年8月吉日」のような曖昧な記載は無効となります。「令和7年8月16日」のように、年月日を正確に記載する必要があります。氏名についても、通称名ではなく戸籍上の正式な氏名を記載することが重要です。

平成31年1月13日の民法改正により、財産目録については自書要件が緩和されました。この改正により、財産目録に限ってはパソコンで作成したり、通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付したりすることが可能となりました。ただし、財産目録の各ページ(両面使用の場合は両面)には、遺言者の署名と押印が必要です。

財産目録をパソコンで作成する場合、ExcelやWordなどのソフトウェアを使用できます。不動産については登記簿謄本に記載されているとおりに正確に記載する必要があります。例えば、「東京都世田谷区○○町○丁目○番○号の土地(宅地、○○平方メートル)及び同所在の建物(木造2階建、床面積1階○○平方メートル、2階○○平方メートル)を長男田中太郎に相続させる」といった具体的な記載が必要です。

預貯金については、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を明記します。「○○銀行○○支店の普通預金口座(口座番号:○○○○○○○)の預金債権を妻田中花子に相続させる」という書き方が適切です。

重要な注意点として、遺言書の本文は依然として全て自筆で書く必要があります。パソコンで作成できるのは財産目録のみで、遺言の本文や付言事項をパソコンで作成すると、遺言全体が無効となってしまいます。財産目録と本文は別の用紙に作成し、本文からは「別紙財産目録記載の財産一切を妻○○に相続させる」といった形で参照することができます。

自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言はどちらを選ぶべき?

自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言の選択は、個人の状況や優先事項によって決まります。両者の特徴を正確に理解することで、最適な選択ができます。

費用面では、自筆証書遺言保管制度が圧倒的に有利です。保管制度の手数料3,900円に対し、公正証書遺言は財産額に応じて手数料が決まり、3,000万円から5,000万円の財産の場合、5万円から8万円程度の費用がかかります。さらに証人2名への謝礼も必要となる場合があります。

作成の手間については、自筆証書遺言保管制度の場合、遺言者自身が全文を自書する必要があるため、体力的な負担があります。一方、公正証書遺言は公証人が作成を支援するため、病気や高齢で字を書くことが困難な場合でも作成可能です。

法的有効性の確実性では、公正証書遺言が優れています。公証人が関与することで、形式的な不備や内容の曖昧さによる無効のリスクがほとんどありません。自筆証書遺言保管制度では、法務局は形式チェックのみで内容の適法性は確認しないため、無効となるリスクが残ります

本人が出向けない場合の対応も異なります。自筆証書遺言保管制度は本人の出頭が絶対条件ですが、公正証書遺言は公証人が病院や自宅に出張することが可能です(出張料が必要)。

紛争防止の観点では、公正証書遺言の方が効果的とされています。公証人という法律の専門家が関与し、証人も立ち会うことで、遺言の真正性について争いが生じにくくなります。

選択の指針として、シンプルな財産構成で費用を抑えたい場合は自筆証書遺言保管制度、複雑な財産や相続関係で確実性を重視する場合は公正証書遺言が適しています。また、健康状態や年齢も重要な判断要素となります。

保管制度利用時の注意点とトラブル防止策は?

自筆証書遺言保管制度を利用する際には、いくつかの重要な注意点と限界を理解することが不可欠です。

最も重要な注意点は、法務局が行うのは形式的なチェックのみであることです。遺言書の全文・日付・氏名が自書されているか、押印があるか、A4用紙を使用しているかなどの外形的・形式的な点のみをチェックし、遺言書の内容が実現可能か、法律的に適切かといった内容の精査は行いません。

このため、遺言内容が不明確・不明瞭だったり、法律的に問題があったりして、結局遺言内容が実現できない可能性があります。例えば、遺留分を侵害する内容や、実行不可能な指示、相続人の特定が困難な記載などがあっても、法務局はこれらを指摘しません。

本人出頭義務も重要な制約です。重大な病気や怪我で動けない場合、高齢で外出が困難な場合でも、代理申請は一切認められていません。司法書士や弁護士、家族であっても代理申請はできないため、利用できる人が限定されてしまいます。

トラブル防止策として最も重要なのは、専門家との事前相談です。遺言書作成前に司法書士や弁護士に相談し、財産の把握と評価、相続人の確定、遺留分の計算、税務上の影響などについてアドバイスを受けることが重要です。

遺言書の文言は、できるだけ具体的かつ明確に記載することが大切です。「全財産を長男に相続させる」といった包括的な記載よりも、個々の財産について具体的に記載する方が、後々のトラブルを避けることができます。

定期的な見直しも重要です。家族構成の変化、財産状況の変動、法改正などにより、遺言書の内容を更新する必要が生じることがあります。保管制度を利用していても、新しい遺言書を作成して差し替えることは可能です。

遺言執行者の指定も忘れてはいけません。遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者で、相続手続きを円滑に進めるために欠かせない存在です。相続人の中から選ぶことも、専門家を指定することも可能です。

最後に、保管申請後に住所や氏名に変更があった場合は、遅滞なく変更の届出をする必要があります。この届出を怠ると、死亡時の通知が適切に行われない可能性があります。

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