国民年金の受給額が月5万円未満の人が2割いる3つの理由と終活での対策

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国民年金の受給額が月5万円未満の人は、全体の約2割にのぼります。人数にすると約689万人です。この2割が生まれる主な理由は3つあり、10年の受給資格期間に届かないこと、ライフイベントに伴う切り替え手続きの漏れ、保険料を納められないまま未納で放置してしまうことです。

終活というと遺言書やエンディングノート、身辺整理、お墓や葬儀の準備といった話題が先行しがちですが、生活の土台を支えるのは公的年金です。厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を見ると、国民年金だけを受給する人の姿がはっきりと数字で見えてきます。以下では、月5万円未満という水準が生じる理由を整理し、追納や任意加入、付加年金、繰下げ受給といった老後資金を底上げする制度、さらに低所得層向けの年金生活者支援給付金までを、2026年7月時点の情報でまとめます。ねんきん定期便を手元に置きながら読み進めてください。

目次

国民年金の受給額が月5万円未満の人は全体の20.6%で約689万人

国民年金だけで月5万円未満で暮らす人は、全体の20.6%を占め、およそ689万人います。国民年金の受給者のうち5人に1人がこの水準に該当することになります。厚生労働省年金局が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の分布データから読み取れる事実です。

全体平均は月5万9310円で満額の7万608円に1万円以上届いていない

国民年金の全体平均月額は約5万9310円で、男性は約6万1595円、女性は約5万7582円となっています。2026年度の国民年金の満額は月額7万608円と定められているため、平均でも満額に1万円以上届いていません。加入期間に応じて受給額が決まる仕組みで、上限が満額と定められているぶん、厚生年金ほど大きな差は付きにくいものの、免除期間や未納期間があると平均を大きく下回る人が出てきます。

ボリュームゾーンとなっているのは「6万円以上7万円未満」の層ですが、その一方で「5万円未満」の層が約2割を占めているのが実態です。40年間欠かさず保険料を納め続けたケースが満額の基準になるため、途中でブランクが生じると、そのぶん受給額は削られていきます。老後の生活費として国民年金だけに頼る場合、月5万円未満という金額は、家賃や光熱費、食費、医療費などを賄うにはかなり厳しい水準です。

男女差が付きにくい国民年金に対し厚生年金は男女差が約6万円ある

同じ資料の厚生年金保険(第1号)の分布を見ると、全体平均月額は約15万289円で、男性平均は約16万9967円、女性平均は約11万1413円です。男女で約6万円の開きがあります。女性の非正規雇用比率の高さ、出産や育児によるキャリア中断、勤続年数の違いなどが積み重なった結果です。

厚生年金は現役時代の収入と加入期間がそのまま反映される仕組みのため、個人差が大きく出ます。国民年金は満額という上限が定まっている分、男女差が付きにくいのが特徴ですが、月5万円未満の層が2割にのぼる事実の重みは変わりません。

月5万円未満が2割に達する3つの理由

低年金や無年金に陥る背景には、いくつかの共通したパターンがあります。ここからは、国民年金の受給額が月5万円未満に留まる主な理由を、落とし穴として3つに整理します。ねんきん定期便を確認する前に、心当たりがないか点検しておきましょう。

受給資格期間10年に届かないケース

公的年金を受け取るための大前提として、「保険料を納めた期間」と「免除などを受けた期間」を合わせて10年以上の受給資格期間が必要です。この10年の壁をクリアできなければ、そもそも年金は1円も支給されません。

ただし、海外に住んでいた期間や、過去に任意加入しなかった期間などを「合算対象期間(カラ期間)」としてカウントできる救済措置があります。若い頃に海外留学や海外赴任の経験がある人、学生時代に国民年金へ加入していなかった人は、この救済対象になる可能性があります。期間が足りないと感じたら、まず年金事務所で自分の記録を確認するのが先です。諦める前に、記録の見直しから始めてください。

ライフイベントに伴う切り替え忘れで未納扱いになるケース

会社員の配偶者の扶養に入っていた専業主婦や主夫が、次のような場面で自ら切り替え手続きをしなかったケースも典型的です。配偶者が独立や退職で会社員でなくなった、自分がパートで一定以上の収入を得て扶養から外れた、離婚した、といったタイミングです。

これらに該当すると「第1号被保険者」への切り替えが必要になり、保険料を自分で納める義務が生じます。手続きを忘れると未納扱いになり、将来の年金が減額されるだけでなく、そのまま無年金の原因にもなります。過去の手続き漏れ、いわゆる「第3号不整合記録」に気づいた場合は、「時効消滅不整合期間にかかる特定期間該当届」を提出することで、未納期間をカラ期間として受給資格期間に組み込んでもらえる可能性があります。心当たりがある人は、ねんきんダイヤルや年金事務所へ早めに相談してください。

保険料が払えず未納のまま放置してしまうケース

自営業やフリーランス、無職期間がある人にとって、国民年金保険料は決して軽い負担ではありません。2026年度の国民年金保険料は月額1万7920円、年額に直すと約21万円です。収入が不安定な時期に、この負担を丸ごと支払うのは現実的でないこともあります。

ここで重要なのが免除制度です。国民年金には、本人・配偶者・世帯主それぞれの前年所得に応じて審査される「全額免除」「4分の3免除(4分の1納付)」「半額免除」「4分の1免除(4分の3納付)」の4種類が用意されています。20歳以上の学生であれば「学生納付特例」、50歳未満の人であれば所得基準を満たすことで「納付猶予」を利用できます。

未納のまま放置すると、老後の年金だけでなく、ケガや病気で障害を負った際の「障害年金」、家族が亡くなった際の「遺族年金」まで受け取れなくなるおそれがあります。免除や猶予の申請をしておけば、その期間は受給資格期間としてカウントされ、障害年金や遺族年金の対象からも外れずに済みます。「払えないから放置」ではなく、「払えないから申請」が正解です。

65歳以上の夫婦無職世帯の生活費は月25万円前後で年金だけでは月15万円のギャップ

月5万円未満という数字がどれほど厳しいかは、実際の生活費と並べるとより鮮明になります。総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月々の消費支出はおおむね25万円前後にのぼります。実収入が消費支出をわずかに下回り、家計が赤字になる世帯も報告されています。

仮に夫婦とも国民年金のみで、しかも2人とも月5万円未満だったとします。世帯全体の年金収入は月10万円未満、生活費との差額は月15万円以上になります。これを埋めるためには、貯蓄の取り崩しか、就労収入か、家族からの援助のいずれかが必要になります。終活の早い段階でこのギャップを把握しておくと、あとから取れる対策の幅が変わってきます。

一年の折り返し地点となる7月は、夏のボーナスをきっかけに家計や将来の資産形成を見直す人が多い時期でもあります。住宅資金や教育資金と並んで、シニア世代やこれからシニアになる世代にとって大きなテーマとなるのが「老後資金をどう確保するか」という問題です。ねんきん定期便が届いたタイミングで数字を確認し、必要であれば早めに手を打つのが、後悔しないための順序になります。

ねんきん定期便で老齢年金の見込額と月別状況の2点を確認する

現状把握のスタート地点は、毎年届く「ねんきん定期便」です。50歳以上の人に届く定期便には、現在の条件のまま60歳まで納付したと仮定した「老齢年金の見込額」が記載されています。フリーランスや自営業の期間が長かった人ほど、会社員として厚生年金に加入し続けた人との差を実感しやすい傾向があります。

まず1つ目のポイントは、「老齢基礎年金(1階部分)」と「老齢厚生年金(2階部分)」の合計として印字された見込額です。この数字が月5万円や自分の想定を下回っていないかを、現実の生活費と重ねてシミュレーションします。持ち家か賃貸か、扶養家族の有無、退職金や個人年金の有無で必要な老後資金は大きく変わります。エンディングノートに、年金見込額や生活費の試算を書き込んでおくと、家族との話し合いの際にも役立ちます。

2つ目のポイントは、「最近の月別状況」欄です。過去の納付状況欄に「未納」や「*(アスタリスク=未加入)」のマークがないかを確認します。この空白期間を早めに見つけられれば、次に紹介する制度で満額に近づける余地があります。数字と向き合う作業は気が重いかもしれませんが、確認しないまま老後を迎えると、取り返しの付かない機会損失になりかねません。50歳未満の人にも簡易版のねんきん定期便が届きます。マイナポータル経由でねんきんネットに連携すれば、いつでもオンラインで自分の記録を照会でき、記録の食い違いも早い段階で気づけます。

国民年金の受給額を満額に近づける5つの制度

過去に未納期間があったり、フリーランス期間が長くて「年金が少ないかもしれない」と不安を抱える人でも、いくつかの制度を組み合わせれば老後の土台を厚くできます。ここでは活用しやすい5つの制度をまとめます。

過去10年分をさかのぼれる追納制度

学生納付特例や保険料の免除・猶予を受けていた期間がある場合、承認から10年以内であれば後から保険料を納める「追納」ができます。追納した分は将来の老齢基礎年金にそのまま上乗せされます。学生時代に学生納付特例を利用した人が社会人になってから追納するケースは典型的で、期限があるぶん早めの検討が向いています。

60歳から65歳まで加入できる任意加入制度

60歳の時点で受給資格期間の10年に届いていない場合や、満額の40年(480カ月)に達していない場合には、任意加入制度が使えます。60歳から65歳までの5年間、自主的に保険料を納めることで、不足分をカバーできる仕組みです。60歳以降も体力や気力に余裕がある人にとって、有力な選択肢になります。

月400円で将来の年金が増える付加年金

自営業やフリーランスの人であれば、毎月の国民年金保険料に400円を上乗せするだけで将来の年金額が増える「付加年金」があります。少額の負担で受給額を着実に伸ばせるのが魅力で、手続きも比較的シンプルです。

税制優遇を受けながら備えられる国民年金基金とiDeCo

より手厚く備えたい場合は、税制優遇を受けながら年金を上乗せできる「国民年金基金」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」が候補になります。掛金が全額所得控除の対象になるため、現役時代の節税と老後資金の準備を並行して進められる仕組みです。

自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者にとって、iDeCoの掛金上限は現行で月額6万8000円、年額81万6000円です。この上限はiDeCo単独ではなく、国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料と合算した金額であるため、付加年金(月400円)を利用している場合はiDeCoの実質的な上限が減ります。国民年金基金とiDeCoを併用する場合も、両者の掛金合計が月6万8000円以内に収まるよう調整する必要があります。

2026年12月1日からは、第1号被保険者向けの共通拠出限度額が月7万5000円へ引き上げられる予定です。改正後は、国民年金基金の掛金や付加保険料との合算で、月額6万8000円から7万5000円へと7000円分の余地が広がります。老後資金の上乗せを厚くしたい人にとっては歓迎できる変更です。

最大84%増える繰下げ受給

年金額そのものを底上げする方法として、受給開始のタイミングを本来の65歳より後ろにずらす「繰下げ受給」があります。1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ増額され、上限となる75歳0カ月まで繰り下げると84%の増額になります。健康状態に問題がなく、当面は年金以外の収入で暮らせる見込みがある人には、有効な手段です。

あわせて押さえておきたいのが、2026年4月から見直された「在職老齢年金制度」です。給与と年金の合計が一定額を超えると年金の一部が支給停止される仕組みで、この基準額が月51万円から65万円へ引き上げられました。60代以降も働きながら厚生年金を受け取りやすくなっています。60代の約5割が「66歳以降も働きたい・働いている」と回答している状況で、就労時間を調整しながら働く人も増えています。ただし在職老齢年金で支給停止となった部分は繰下げ受給による増額の対象にならないため、両制度を組み合わせるときは事前のシミュレーションが必要です。

2026年度は3.2%増額改定された年金生活者支援給付金

国民年金だけで月5万円に届かない人にとって、押さえておきたいのが「年金生活者支援給付金」です。老齢基礎年金を受給していて、なおかつ本人の前年所得が一定基準以下である人などが対象となり、年金とは別に毎月の年金へ上乗せで支給される公的給付金です。

給付基準額は毎年度見直されており、2026年度(令和8年度)は前年度から3.2%の増額改定が行われました。国民年金の受給額が月5万円未満に該当する層は、多くの場合この所得基準の範囲内にあり、申請すれば追加の給付を受け取れるケースが少なくありません。障害基礎年金を受給する人向けの「障害年金生活者支援給付金」、遺族基礎年金を受給する人向けの「遺族年金生活者支援給付金」もあります。厚生年金のみを受給する人は対象外です。

給付金は自動的に振り込まれるものではなく、原則として自分での申請手続きが必要です。日本年金機構から案内が届いた場合は放置せず、内容を確認して手続きに進んでください。障害基礎年金は国民年金加入中に初診日がある場合や、20歳前・60歳以上65歳未満の期間に初診日がある場合などが受給対象です。遺族基礎年金は、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れます。ここでいう「子」は18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で一定の障害状態にある方です。これらのセーフティーネットも、保険料の未納が続くと受給できなくなるおそれがある点は、免除・猶予の申請と合わせて理解しておきたいところです。

エンディングノートに年金情報を書き残すときの整理軸

終活の実践としてよく知られているのが「エンディングノート」の作成です。医療や介護の希望、行政手続きの情報を書き込むノートですが、年金や老後資金の情報を整理する場としても機能します。

具体的には、資金の性質を「使うお金」「旅立ちのためのお金」「家族に残したいお金」という3つの軸で分けて管理する方法があります。ねんきん定期便で確認した見込額、加入していた年金の種類(国民年金・厚生年金・企業年金など)、iDeCoや国民年金基金の加入状況を書き残しておくと、家族が今後の手続きを進めるうえで助けになります。年金額の少なさに気づいたときこそ、こうしたエンディングノートの作成やライフプランの見直しに着手する良いタイミングです。

一方で、記載する情報の範囲には注意が必要です。金融口座の残高やインターネットバンキングのパスワードといった機密情報まで誰でも見られる状態にしておくのは、防犯上望ましくありません。エンディングノート自体は家族だけが把握できる安全な場所に保管し、家族には「ノートの存在と保管場所」だけを伝えておく運用が、実務的には現実的です。

終活で年金を見直すのは早いほど打てる手が多い

国民年金の受給額が月5万円未満に留まる人が全体の約2割いるという現実は、単に「保険料未納」の一言で片付く話ではありません。10年の受給資格期間の壁、ライフイベントに伴う切り替え漏れ、収入が不安定な時期に免除・猶予の申請をせず放置してしまうこと。これらが絡み合った結果として、約689万人という規模の低年金層が生まれています。

まず自分のねんきん定期便を開き、見込額と月別状況の2点を確認してみてください。不足があれば、追納・任意加入・付加年金・国民年金基金・iDeCo・繰下げ受給の6つの制度から、自分に合うものを組み合わせます。所得基準に該当しそうであれば、年金生活者支援給付金の対象になるかも合わせて調べておきましょう。

終活は、人生の終わりを意識する作業であると同時に、残りの時間をどう安心して過ごすかを組み立てる準備でもあります。数字と正面から向き合うのは気が重い作業ですが、早いほど打てる手は多く残っています。国民年金の受給額が月5万円未満という「約2割」の現実は、誰にとっても未来の自分の姿になり得るものだからこそ、早いうちからねんきん定期便を確認し、使える制度を1つずつ把握しておくことが、老後の安心につながります。

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