相続未登記の農地を名義変更しないまま放置するリスクとは

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相続した農地の名義が、数十年前に亡くなった祖父や曾祖父のままになっているケースは、地方ではめずらしくありません。こうした相続未登記の農地を放置すると、貸すことも売ることもできなくなるだけでなく、次の相続の場面で名義変更そのものが行き詰まってしまうリスクがあります。2024年に相続登記が義務化された今も、全国には数十年単位で名義が動いていない農地が大量に残っています。この記事では、相続未登記の農地がなぜ生まれるのか、そして名義変更を先送りにした結果どのようなリスクが待っているのかを、農地特有の手続きも含めて整理します。

目次

相続登記は2024年4月に義務化され猶予は2027年3月末まで

相続登記の義務化は、2024年4月から始まった制度変更です。それ以前は相続登記をしなくても罰則はありませんでしたが、所有者不明の土地が公共事業や災害復旧の妨げになっているという事情から法律が改正されました。

義務化後は、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に、法務局へ相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料の対象になります。ただし過料はいきなり科されるわけではなく、登記官からの催告に応じない場合に裁判所へ通知され、そこで決定されるという段取りを踏みます。

このルールは、2024年4月以降の相続だけでなく、それ以前に相続した土地にも遡って適用されます。何十年も前から名義変更をしていない農地や山林も対象に含まれ、そこには3年間の猶予期間が設けられています。そのタイムリミットは2027年3月末で、今からおよそ8か月後に迫っています。「昔からの相続だから義務化には関係ない」という思い込みのままでいると、過料の対象になりかねません。

書類が期限内に揃わない場合の救済策として、相続人申告登記という簡易な制度も用意されています。法務局に対して自分がその被相続人の相続人であると申し出るだけの暫定的な手続きで、これを行えば過料は回避できます。ただし正式な相続登記の代わりにはならず、遺産分割協議を経たうえで改めて登記を行う必要があります。

全国の農地の約1割が相続未登記で鹿児島県は2割を超える

農林水産省が公表した令和6年度の相続未登記農地の実態調査によると、登記名義人の死亡が確認された相続未登記農地は、全農地面積の約1割にあたります。地域差は大きく、鹿児島県では全農地の21.3パーセントが未登記のままという結果が出ています。5筆に1筆以上が、亡くなった人の名義のまま残っている計算です。

しかもこの数字は、行政が所有者の死亡を把握できている農地だけを集計したものです。死亡の事実そのものが確認できていない農地を含めれば、実際にはさらに多くの未登記農地が全国に眠っているとみられます。相続未登記の農地は、特殊な事情を抱えた一部の家だけの話ではなく、実家に農地を持つ多くの家庭にとって他人事ではありません。

名義変更が後回しになるのは司法書士費用と手続きの手間が理由

栃木県の中山間地域で農業を営むAさんは、名義変更が進まない背景を次のように語ります。「相続が発生しても登記申請をしない人は、地方では本当に多いですね。司法書士に頼むとお金がかかる、自分でやるのは面倒だ、というのが一番の理由です。田舎では何筆もの土地を相続することが多く、その分、司法書士への報酬や登録免許税も増えてしまう。そのため、実家が建っている宅地だけは登記を済ませても、その他の山林や農地はそのまま放置されるケースはよくあります」。

都市部であれば相続する不動産は自宅の土地建物一つ、というケースも多いものですが、農家の場合は事情が異なります。田や畑が何十筆にも分かれて点在していることが珍しくなく、一筆ごとに登録免許税や司法書士報酬が積み上がっていきます。加えて農地は宅地に比べて資産価値が低く見積もられがちで、費用をかけて登記するほどの価値があるのかという心理も働きやすくなります。結果として、生活の基盤である自宅の名義変更だけを優先し、農地や山林は先送りにされてしまうわけです。

相続未登記の農地はヤミ小作を生む土壌になっている

農地の貸し借りには、原則として農業委員会の許可が必要です。しかし相続未登記の農地では、登記簿上の所有者がすでに死亡しているため、現在の正当な権利者が誰なのかを確認できず、許可の手続き自体が前に進みません。

Aさんは、近所の人から農地を貸してあげようかと声をかけられた経験があります。念のため登記簿を確認すると、所有者は40年前に亡くなった祖父のままでした。「本人はちゃんと相続をしたと言うのですが、県内外に兄弟が何人もいます。本当にその人が所有者なのかわからない。後で権利関係で揉めたくないので、泣く泣く借りるのを断りました」とAさんは振り返ります。

このように、正規の手続きを踏もうとする側は権利関係の不透明さゆえに断念せざるを得ません。一方で、こうした確認を省き、当事者間だけでこっそりと農地を貸し借りしてしまうヤミ小作が横行する土壌にもなっています。ヤミ小作は農業委員会を通さない非公式な貸借であるため、賃料の取り決めやトラブル時の法的保護が曖昧になりやすく、次の相続の場面で深刻な火種になります。

農地は農業委員会の許可なしに売買も貸借もできない

宅地や建物であれば、所有者の判断だけで自由に売却できるのが原則ですが、農地は違います。農地を農地のまま売買したり贈与したり貸し借りしたりする場合には、農地法第3条に基づいて農業委員会の許可を受けなければならず、この許可を得ずに行われた売買や貸借は無効になります。

しかもこの許可を受けられる相手は限られています。日本の農地政策は農地の効率的な利用と生産性の向上を重視しており、農地を取得できるのは一定規模以上の農地を経営する農家などに限られます。条件を満たす買い手を見つけること自体が簡単ではなく、これが農地は売りたくても売れないと言われる大きな要因です。許可申請そのものは、提出から許可までおおむね3週間から4週間程度で下りるとされていますが、それ以前の買い手探しの段階でつまずくケースが多くなっています。

買い手が見つかったとしても、農業委員会は正当な権利者からの申請でなければ許可を出せません。相続未登記の状態は、ただでさえ流動性の低い農地という資産を、さらに身動きの取れないものにしてしまいます。

農業委員会への届出は権利取得を知った日から10か月以内

農地を相続した場合、通常の相続登記とは別に、農業委員会への届出義務も課されています。これは農地法第3条の3に基づくもので、相続や遺産分割、包括遺贈などによって農地の権利を取得し、農業委員会の許可を受けることなく取得した場合、その農地の権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内に、農地が所在する市町村の農業委員会へ届け出なければならないというルールです。

届出を行わなかったり虚偽の届出をした場合には、こちらも10万円以下の過料の対象になります。つまり農地を相続した場合、法務局への相続登記と、農業委員会への相続届出という、二つの手続きをそれぞれ期限内に済ませる必要があります。相続登記さえ済ませれば手続きは完了したと思い込むと、農業委員会への届出を見落としたまま過料のリスクを抱えることになります。農地が含まれる相続では、法務局だけでなく地元の農業委員会にも早めに相談しておきたいところです。

数世代放置すると相続人が数十人規模に膨れ上がる

相続未登記の農地は、放置している間はなかなか表面化しません。しかし次の相続が発生したタイミングで、一気に深刻なトラブルへと発展します。Aさんはこう続けます。「親の農地を相続しようとしたら、登記が数代前で止まっていて、戸籍をたどりながら何十年も前の相続人を探すことになり、困惑する人も少なくありません。また、親がヤミ小作でこっそり他人に貸していた場合、土地を整理しようとした際に小作人との間で返す返さないで揉めやすいですね」。

登記が数代前で止まっているケースでは、法定相続人が数十人規模に及ぶことも珍しくありません。祖父の代で止まっていた名義を今になって整理しようとすれば、祖父の子、孫、さらにその配偶者にまで相続の権利が枝分かれしていき、関係者全員の同意を取り付けなければ遺産分割協議がまとまりません。

なかでも厄介なのが、県外に転出して所在がわからない相続人や、話し合いに応じない相続人が一人でもいる場合です。遺産分割協議は相続人全員が参加して合意しなければ成立せず、1人でも欠けた協議は無効になります。行方不明の相続人がいる場合、戸籍の附票や住民票で最後の住所をたどり、郵便や親族への照会などで連絡を試みるところから始まり、それでも見つからなければ家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる手続きが必要になることもあります。管理人は行方不明者本人の利益を守る立場で協議に参加することになり、手続きの手間だけでなく、数十万円規模の予納金を家庭裁判所から求められるケースもあります。

戸籍をたどって相続人を特定する作業だけでも膨大な時間がかかり、専門家に依頼すればその分の費用もかさんでいきます。先送りにしたツケは、何十年も後になって子や孫の世代がまとめて背負わされることになります。

相続未登記の農地は荒廃農地25.7万ヘクタールの一因になっている

相続未登記の農地がもたらす影響は、当事者の家庭内だけにとどまりません。所有者がわからない農地が地域に増えていけば、農地の集約や意欲ある担い手への貸し付けが進まなくなり、耕作放棄地の増加にもつながっていきます。

道路や河川の整備といった公共事業、あるいは地震や豪雨などの災害復旧の場面でも、用地の所有者確認に時間を要するようになり、事業や復旧作業そのものが停滞する要因になりかねません。個々の家庭が自分の農地くらい放置していても迷惑はかけていないと考えていたとしても、その積み重ねが地域全体の防災力や農地の生産性を下げてしまう構造があります。

農林水産省の調査では、2024年時点の荒廃農地は25.7万ヘクタールに達し、このうち約16万ヘクタールはすでに森林のような状態になってしまい、再生自体が難しいとされています。毎年新たに2.4万ヘクタール前後の農地が荒廃する一方で、再生されるのは0.8万ヘクタール程度にとどまり、発生量の3分の1ほどしか食い止められていません。日本全体の耕地面積も、1961年の608.6万ヘクタールから直近では423.9万ヘクタールへと、60年余りでおよそ3割減少しています。荒廃の理由がすべて相続未登記に起因するわけではありませんが、所有者が判然としない農地が耕作の担い手に引き継がれず、そのまま荒廃地予備軍になっていく構図は、各地の農業委員会が共通して指摘しています。

相続登記は戸籍謄本の収集から始まり数か月かかることもある

いざ名義変更に取り組もうとしても、何から始めればよいのかわからず足が止まってしまう人は多いはずです。相続登記までの一般的な流れを整理しておきます。

最初のステップは必要書類の収集です。相続登記では、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本に加え、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票、そして相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。祖父母の代から名義変更をしていない農地の場合、この戸籍収集だけで何か月もかかることも珍しくありません。転籍を繰り返している家系だと、複数の市町村役場に問い合わせなければならず、郵送でのやり取りが何往復も発生することもあります。

この負担を軽くする制度として、2017年5月から法定相続情報証明制度が始まっています。被相続人と相続人の続柄を法務局の登記官が証明してくれる制度で、収集した戸籍一式をもとに法定相続情報一覧図というA4用紙一枚の書類を作成し、法務局に申し出ることで交付を受けられます。この一覧図があれば、以後は分厚い戸籍謄本の束を何度も提出し直す必要がなくなり、銀行口座の解約や複数の不動産の相続登記など、並行して進める手続きがぐっと楽になります。農地が何筆も含まれているケースでは、この制度を活用する価値が特に大きくなります。

書類が揃ったら、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成へと進み、対象の不動産を管轄する法務局へ申請します。近年はオンライン申請にも対応していますが、農地や山林が複数筆にわたる場合は、地番の確認や評価証明書の取得など、事前の準備に時間がかかりやすい点も念頭に置いておきたいところです。

相続登記の費用は司法書士報酬と登録免許税で10万円から30万円が目安

司法書士に頼むとお金がかかるという理由で名義変更が先送りにされがちだと先述しましたが、実際の費用感を把握しておくことも放置を防ぐ第一歩になります。

日本司法書士会連合会が令和6年3月に行ったアンケートによると、土地1つと建物1棟の相続登記で、固定資産評価額の合計1,000万円、法定相続人3名という一般的なケースでは、司法書士報酬の平均は74,888円でした。最も回答数が多かったのは5万円台で、次いで6万円台、7万円台と続きます。おおむね報酬5万円から15万円程度が相場の目安です。

これに加えて、登記の際には登録免許税という税金が別途かかります。相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額に0.4パーセントを掛けた金額で、評価額1,000万円の土地であれば4万円です。司法書士報酬と登録免許税を合わせると、標準的な案件でおおむね10万円から30万円程度が目安になります。

費用の内訳目安
司法書士報酬(平均)74,888円
登録免許税固定資産税評価額の0.4パーセント
合計の目安10万円から30万円程度

農地特有の事情として意識したいのが、農地は宅地に比べて一筆あたりの評価額こそ低いものの、その分、相続財産の中で農地や山林が何十筆にも分かれて点在しやすいという点です。登録免許税は評価額に対する定率課税なので一筆ごとの負担額自体は小さくても、司法書士報酬は取り扱う不動産の数に応じて加算されていく事務所が多く、筆数が増えるほど総額は積み上がっていきます。相続財産全体の筆数を洗い出したうえで、まとめて見積もりを取ることが、想定外の出費を避けるコツになります。

名義変更が進まない場合は法務局の無料相談と相続人申告登記を使う

相続未登記の農地を放置するリスクは小さくありませんが、司法書士への依頼費用がネックになって動けない家庭も多いはずです。まず知っておきたいのが、法務局が相続登記に関する無料相談を受け付けているという点です。何から手をつければよいかわからない段階でも、相談して必要な書類や手続きの流れを確認するだけで大きな一歩になります。

期限内に遺産分割協議がまとまりそうにない場合は、前述の相続人申告登記を暫定的に利用して過料を回避しつつ、時間をかけて正式な相続登記の準備を進めるという方法も選択肢になります。

農地バンクと相続土地国庫帰属制度という二つの出口

相続はしたものの、遠方に住んでいて農地を管理できない、耕作する予定もないという場合には、農地の活用や処分に関する制度も用意されています。ひとつは農地中間管理機構、いわゆる農地バンクの活用です。相続未登記の農地であっても、共有者(相続人)のうち1人からでも簡易な手続きで農地バンクに貸し出すことができる仕組みが整えられており、共有名義人の持分の過半の同意が得られれば、最長40年という長期の貸し付けも可能とされています。農地バンクを通じて貸し出せば、賃料は確実に振り込まれ、固定資産税の軽減措置を受けられるといった利点もあります。

もうひとつの選択肢が、2023年4月から始まった相続土地国庫帰属制度です。相続したものの活用予定のない土地を、一定の要件のもとで国庫に帰属させることができる制度で、農地も対象になり得ます。ただし建物がある土地や、担保権・使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地などは対象外とされており、誰でも無条件に利用できるわけではありません。土地が共有名義になっている場合は共有者全員で申請する必要があるため、そもそもの前提として相続人同士の合意形成が欠かせません。

いずれの制度を利用するにしても、まず大前提となるのは、誰が現在の正当な権利者であるかを法務局と農業委員会の双方で明確にしておくことです。名義変更を済ませないままでは、農地バンクへの貸し出しも、国庫帰属の申請も、スムーズには進められません。

名義が定まらないと相続税の納税猶予の特例も使えない

農地を相続した際、資産価値によっては相続税の負担が発生します。ここで見逃せないのが農地の納税猶予の特例です。相続税のうち一定額の納税を繰り延べられる制度で、相続人が営農を継続する限り、原則として一生涯(市街化区域内など特定の地域にある農地は20年間)にわたって納税が猶予され、要件を満たし続ければ最終的に免除される仕組みになっています。猶予される税額は、農地を通常の路線価方式で評価した場合の相続税額と、国が定める農業投資価格で評価した場合の相続税額との差額にあたる部分です。

この制度を利用するには、農地、被相続人、相続人のそれぞれについて細かな要件を満たす必要があるほか、適用を受けたあとも3年ごとに継続届出書を提出し続けなければなりません。相続した農地を譲渡したり、転用したり、耕作を放棄したりすると、猶予が打ち切られ、猶予されていた税額に利子税を加えて一括で納めなければならなくなります。

こうした制度を活用しようにも、その前提となるのは、誰がその農地を相続し、実際に営農を担っていくのかが名義のうえでも明確になっていることです。名義変更を先送りにしたまま何年も経過してしまうと、相続税の申告期限(原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内)に間に合わせること自体が難しくなり、有利な特例を使いそびれてしまうおそれもあります。農地の名義変更は、権利関係を整理するだけでなく、税負担を左右する場面にも直結しています。

相続放棄をしても農地の管理責任は即座には消えない

遠方に住んでいて農地を管理できないし、相続する気もないという場合、相続放棄という選択肢が頭に浮かぶ人もいるでしょう。相続放棄をすれば、農地を含めた被相続人の財産をいっさい引き継がずに済み、名義変更や農業委員会への届出といった手続きからも解放されます。相続したい財産がほかになく、農地の管理負担だけが重くのしかかっているようなケースでは、有効な選択肢になり得ます。

ただし見落とされがちな注意点があります。農地の所有権を相続放棄したとしても、ほかの相続人が管理できる状態になるまで、あるいは家庭裁判所が選任する相続財産清算人に引き継がれるまでは、放棄した人にも一定の管理責任が及び続けるという点です。放棄すれば即座に一切の関わりがなくなるわけではないため、荒れた農地を放置して近隣に迷惑をかけていたような場合には、放棄後であっても責任を問われる可能性が残ります。

また、相続放棄は農地だけを選んで放棄することはできず、預貯金や自宅など、ほかのプラスの財産も含めてすべてを放棄することになります。農地だけが不要でそれ以外の財産は受け取りたいという場合には、相続放棄以外の方法、たとえば農地のまま売却する、転用したうえで売却する、農業を続けるほかの相続人にまとめて相続してもらう、あるいは前述の相続土地国庫帰属制度を利用するといった選択肢を、専門家と相談しながら比較検討することが望ましいでしょう。

登記簿の名義確認が今日からできる最初の一歩

相続登記が義務化されたのは2024年4月ですが、それ以前に相続した土地については3年間の猶予期間が設けられており、そのタイムリミットは2027年3月末に迫っています。司法書士に依頼することが費用面で難しい場合でも、法務局では相続登記に関する無料相談を受け付けています。まずは相談し、何が必要なのかを確認するだけでも大きな一歩になります。

相続未登記の農地は、実家に農地がある人であれば誰もが無関係ではいられない問題です。まだ大丈夫と思っているうちに、その土地は家族や地域を巻き込む重荷に変わってしまうかもしれません。次の世代に問題を先送りしないためにも、一度、実家の土地の登記がどうなっているのか確認してみることが大切です。

今日からできる確認事項を整理しておきます。まず、実家や親族の農地について、法務局で登記簿(登記事項証明書)を取得し、名義が誰になっているかを確認すること。名義が祖父母や曾祖父母など、すでに亡くなった人のままになっていないかをチェックします。次に、名義変更がまだであれば、法務局の無料相談窓口を予約し、必要な戸籍や書類の見通しを立てること。あわせて、農地が含まれている場合は、地元の農業委員会にも連絡し、農地法第3条の3に基づく届出が必要かどうかを確認しておきたいところです。そして、相続人が複数世代にわたって未整理になっている場合は、早い段階で司法書士や弁護士といった専門家に相談し、戸籍調査や遺産分割協議の進め方について道筋をつけておくことが望ましいでしょう。

こうした一つひとつの確認は、決して大掛かりな作業ではありません。しかし、その小さな一歩を踏み出すかどうかが、数十年後に子や孫の世代が直面する負担の大きさを大きく左右します。栃木県のAさんの体験が示すように、農地の相続をめぐるトラブルの多くは、ある日突然降ってくるわけではありません。近所からの貸借の申し出、次の世代への相続、あるいは公共事業に伴う用地確認など、何かのきっかけで登記簿を開いたときに初めて、名義が数十年前のままだったという現実に直面します。そのときになって慌てて戸籍をたどり始めても、関係する相続人が広範囲に散らばっていれば、解決までにはさらに長い時間がかかってしまいます。

2027年3月末という猶予期限は、単なる行政上の区切りではなく、先送りにしてきた問題と向き合うための一つの節目でもあります。相続登記の義務化と農地法の届出義務、そして農地特有の売買・貸借の制限という複数のルールが重なり合う農地の相続は、決して単純な手続きではありません。だからこそ、期限が迫ってから慌てるのではなく、余裕のあるうちに登記簿を確認し、必要であれば専門家の力を借りながら、家族全員が納得できる形で名義を整理しておくことが、次の世代への何よりの備えになります。

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