終活で考えるマイホームの名義の整理、共有持分はどう解消する

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終活でマイホームの名義を整理するとは、共有名義になっている持分を、元気なうちに単独名義や特定の家族へ集約しておく生前対策を指します。実家や自宅が親子や夫婦、兄弟の共有名義のまま相続を重ねると、権利者は世代を追うごとに増え、売却や建て替えの判断が誰か一人の反対で止まってしまいます。2024年4月には相続登記も義務化されており、共有持分をいつまでも放置できる時代ではなくなりました。この記事では、共有名義がどんな場面で生まれるのか、放置するとどんなリスクを抱えるのか、そして生前のうちにどう手を打てるのかを、費用の目安や関係する法改正の情報とあわせて整理します。

目次

共有名義は住宅ローンの組み方と相続の2パターンで生まれる

共有名義とは、1つの不動産を複数人が持分という割合で登記している状態です。発生の経路は大きく2つに分かれます。

1つ目は、夫婦や親子でマイホームを買うときの資金の出し方です。ペアローンや収入合算で住宅ローンを組むと、出資割合に応じて夫婦それぞれの持分が登記され、自然と共有名義になります。

2つ目は、相続です。親が亡くなったあと実家を複数の子どもが相続し、遺産分割協議で持分を決めきれずに法定相続分どおりの共有名義にしてしまうケースが目立ちます。さらに、二次相続、三次相続と代替わりが進むと、当初は兄弟2人だった共有者が、それぞれの子ども世代を経て5人、6人にまで膨らむこともあります。ここまで人数が増えると、共有者同士に面識すらないという状態も珍しくありません。

共有名義のマイホームは売却も建て替えも全員の同意が必要になる

共有名義の不動産は、単独名義に比べて活用の自由度が大きく制限されます。民法上、共有物の売却は共有者全員の同意が必要な変更行為にあたり、1人でも反対すれば売却は成立しません。賃貸に出す場合も、持分の過半数の同意が要る管理行為として扱われます。増改築や大規模なリフォームも変更行為とみなされることがあり、同じく全員の合意が前提です。

共有者の1人が認知症などで判断能力を失った場合はさらに深刻です。本人の同意を得ること自体ができなくなり、成年後見制度を使わなければ法律行為を進められません。後見人の選任には時間も費用もかかり、後見人は本人の利益を優先する立場なので、売却の話が思うように進まないことも起きます。加えて、共有者の1人が持分だけを不動産会社や共有持分専門の買取業者へ売ってしまうと、面識のない第三者がいきなり共有者として加わる事態にもなります。持分は本人の財産である以上、他の共有者の同意なしに単独で売却できてしまうためです。

実家の共有名義は「住む人」と「売りたい人」の対立に発展しやすい

共有名義のリスクは制度の話にとどまりません。兄弟姉妹で実家を共有名義のまま相続した結果、実際にトラブルへ発展している例が数多く報告されています。

よくあるのは、兄弟のうち1人だけが実家に住み続け、他の兄弟は離れて暮らしているという構図です。売却して現金化したい側と、住み続けたい側、あるいは思い出の家を手放したくない側の意見が真っ向からぶつかり、話し合いが何年も平行線をたどることがあります。共有名義である以上、住んでいる共有者を強制的に退去させるのは簡単ではなく、かといって売却も進まないため、不動産が事実上動かせない状態になってしまいます。共有者は持分に応じた使用収益権を持つとはいえ、住んでいない共有者が家賃相当額を実際に受け取れないまま不満を溜め込み、法的な紛争に至った例もあります。

相続した実家に誰も住まず、空き家のまま放置されるケースも深刻です。相続人となる子ども世代がすでに自分の持ち家を構えていたり、遠方で暮らしていたりすると、実家の管理は後回しにされがちで、老朽化が進みます。空き家対策特別措置法にもとづき「特定空家等」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増える点にも注意が必要です。相続が発生した後に共有者間で話し合おうとしても、すでに感情のもつれが生じていて円満な解決が難しくなっているケースが多く、元気なうちに実家の行き先を決めておくことの意味はここにあります。

相続登記は2024年4月に義務化され、過去の相続も2027年3月末が期限

共有名義を語るうえで欠かせないのが、2024年4月1日から始まった相続登記の義務化です。それまで相続登記に申請期限はなく、罰則もなかったため、名義変更をしないまま放置される不動産が全国で積み上がり、所有者不明土地問題の大きな原因になっていました。

改正後は、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に相続登記を申請する義務が課されます。正当な理由なくこの申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。しかも、この義務化は2024年4月以降に発生した相続だけでなく、それより前に発生していた相続にもさかのぼって適用されます。経過措置として、2027年3月31日までに相続登記を済ませる必要があるため、何十年も前に相続していながら名義変更をしていない実家を持っている人は、早めの対応を検討したほうがいい局面に立っています。

遺産分割協議がまとまらない場合に備えて、相続人申告登記という簡易な制度も新設されました。自分が相続人であることを法務局に申し出れば、ひとまず義務を履行したとみなされる仕組みです。ただしこれはあくまで暫定的な措置であり、共有関係そのものを解消するわけではない点は押さえておく必要があります。

遺産分割は2023年4月の改正で10年を過ぎると特別受益が使えなくなった

相続登記義務化と並んで押さえておきたいのが、2023年4月1日に施行された遺産分割協議の期限に関する民法改正です。改正前は、特別受益(生前に特定の相続人だけが受けた贈与など)や寄与分(介護や事業への貢献など)を考慮した遺産分割協議に、明確な期限がありませんでした。何十年経ってからでも、これらの事情を主張して法定相続分と異なる割合での分割を求められたのです。

改正後は、相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分での分割ができなくなり、法定相続分または遺言による指定相続分での分割のみが可能になります。10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割調停や審判を申し立てていれば、10年経過後でも特別受益や寄与分を考慮した分割は認められます。

「生前に自分だけ多く援助してもらった」「自分だけが親の介護をしてきた」といった事情を抱える相続人にとって、この10年という期限は重い意味を持ちます。共有名義のまま長期間放置する期間が長引くほど、本来主張できたはずの取り分を反映できなくなる法的な不利益を被りかねません。

共有名義の解消は持分放棄と持分売買が最も動きやすい

共有名義を単独名義に近づける、あるいは共有関係そのものを解消する方法はいくつかあります。代表的な手段を整理すると次のとおりです。

解消方法進め方向いている場面
持分放棄自分の持分を放棄し、他の共有者へ持分割合に応じて帰属させる対価を求めず、他の共有者の同意なしに手続きを進めたい場合
持分の買取・売却共有者間で価格に合意し、一方が他方の持分を買い取る共有者同士で円満に単独名義へまとめたい場合
第三者への持分売却共有持分専門の買取業者などへ自分の持分だけを売る他の共有者との交渉が難航し、自分の持分だけでも早く現金化したい場合
共有物分割請求協議がまとまらない場合に地方裁判所へ訴訟を提起する話し合いが完全に決裂し、裁判所の判断に委ねるしかない場合
換価分割不動産全体を売却し、代金を持分割合で分配する共有者全員が売却に同意できる場合

持分放棄は他の共有者の同意を必要としない分、手続き自体はシンプルですが、放棄する側に金銭的な対価は残りません。持分を取得する側には贈与税が発生する可能性があるため、事前に税理士へ相談したほうが安全です。共有物分割請求では、裁判所が現物分割(土地を物理的に分ける)、代償分割(1人が単独取得し他の共有者に金銭を支払う)、換価分割のいずれかを判断しますが、時間も費用もかかるため、あくまで最終手段と位置づけるべきです。

共有持分だけを自分の判断で売れるのかと聞かれれば、答えは売れます。持分は本人の財産なので、他の共有者の同意がなくても第三者へ売却できます。ただし、買い手が見知らぬ第三者になると、残る共有者にとっては不安の種になりますし、価格も市場価格より下がりやすいのが実情です。今からでも間に合うのかという不安には、間に合うと答えられます。相続登記の経過措置は2027年3月31日までですし、持分放棄や持分売買は共有者の判断能力が保たれているうちであればいつでも動けます。動き出すタイミングが早いほど、選べる手段は多く残ります。

生前贈与は2024年の改正で持ち戻し期間が7年に延びた

マイホームや実家の持分を、生前に子どもへ移しておく生前贈与を検討するなら、2024年1月1日から施行された税制改正を踏まえる必要があります。暦年課税制度における持ち戻し加算の対象期間は、これまでの相続開始前3年以内から7年以内へ延長されました。亡くなる直前に慌てて生前贈与をしても相続財産に加算されてしまう期間が長くなったわけで、駆け込み的な節税の効果は薄れています。裏を返せば、終活を早めに始め、時間をかけて持分や財産をコツコツ移転しておくことの価値が、この改正でむしろ高まったといえます。

一方、相続時精算課税制度には新たに年間110万円の基礎控除が設けられました。これまで相続時精算課税を一度選択すると少額の贈与でも申告が必要でしたが、改正後は基礎控除の範囲内であれば申告も相続財産への持ち戻しも不要になります。不動産の持分を段階的に贈与していく使い方や、値上がりが見込まれる不動産を早めに贈与時の評価額で移す使い方など、共有持分の整理と組み合わせる余地は広がりました。ただし、相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税へ戻せず、小規模宅地等の特例が使えなくなる場合もあります。持分の生前贈与は、贈与税と将来の相続税の両方をシミュレーションしたうえで、税理士に相談しながら進めるべきです。

家族信託は認知症による不動産凍結を防ぐ受け皿になる

共有名義の解消と並行して検討したいのが、家族信託です。委託者(親など)が持つ不動産を、信頼できる受託者(子など)に信託し、管理や処分の権限を託す仕組みです。認知症などで判断能力を失った後も、信託契約にもとづいて受託者が売却や賃貸の手続きを進められるため、いわゆる不動産の凍結を防げます。終活の相談窓口や司法書士事務所でも、この数年で家族信託の相談件数が増えています。

任意後見制度も選択肢の1つです。将来判断能力が低下した場合に備え、後見人となる人と支援内容をあらかじめ契約しておく制度で、法定後見に比べて本人の意思をより反映した財産管理が可能になります。不動産を特定の相続人に単独で相続させる代わりに、他の相続人には現金(代償金)を渡して公平性を保つ代償分割という考え方もあり、その原資として生命保険を活用する家庭も見られます。

制度の話より前に効くのは、家族間の対話です。誰がどの不動産を引き継ぐのか、実家をどう扱うのかについて、元気なうちに家族全員で話しておくことが、後のトラブルを防ぐ最も基本的な備えになります。エンディングノートに希望を書き残しておくだけでも、相続人同士の認識のずれを減らせます。

エンディングノートには共有持分の内訳まで書いておく

エンディングノートに法的な効力はありませんが、財産目録の欄に不動産の所在地、登記名義人、共有の有無、持分割合、住宅ローンの残債の有無を整理して書き残しておくと、残された家族が権利関係を把握しやすくなり、相続手続きの初動が円滑になります。

共有名義の不動産については、誰と誰の共有か、持分はそれぞれ何分の何か、共有に至った経緯が購入時の負担割合によるものか相続によるものかまで具体的に書いておきたいところです。その不動産を将来どうしたいのか、住み続けたい家族に単独で相続させたいのか、売却して兄弟で分けてほしいのか、本人の希望も添えておけば、相続人同士の話し合いの出発点になります。ただし、記載した内容どおりに相続させたいなら、公正証書遺言など法的に有効な書面を別途用意する必要があります。エンディングノートと遺言書は役割が違うものとして両方使うのが実際的です。引っ越しや家族構成の変化、大規模なリフォームがあったタイミングで、内容を定期的に見直すことも忘れないでください。

固定資産税は連帯納付義務があり代表者が立て替えて揉めやすい

共有名義の不動産に課される固定資産税は、共有者全員が連帯して納付する義務を負います。実務上は共有者の代表者1人に納税通知書が届き、その代表者がいったん全額を納め、他の共有者から持分割合に応じた負担分を回収する運用が一般的です。

民法上は持分割合に応じて税負担を分担すべきとされていますが、「代表者だから」「実家に住んでいるのは自分ではないから」といった認識のズレから、負担分の支払いを渋る共有者が出てくることがあります。代表者が他の共有者の負担分まで立て替えた場合、法律上は求償権にもとづいて請求できますが、実際に請求し回収するのは手間がかかり、親族間ゆえに強く言い出しにくいという事情も重なりがちです。こうした固定資産税をめぐる不公平感が、共有名義そのものを解消したいという動機につながることも珍しくありません。

誰にも住まれない実家は相続土地国庫帰属制度という受け皿もある

共有名義を整理しようとしても、誰も住む予定がなく売却先も見つからない土地に行き着くことがあります。その場合の選択肢の1つが、2023年4月から始まった相続土地国庫帰属制度です。相続または遺贈で土地を取得した人が、一定の要件を満たせば所有権を手放して国に引き渡せる制度です。

利用には2段階の費用がかかります。土地一筆あたり1万4千円の審査手数料に加え、国庫帰属が承認された場合はさらに10年分の土地管理費用相当額として、原則20万円の負担金を納めなければなりません(宅地や農地は面積に応じて金額が変わります)。対象はあくまで土地であり、建物が残った状態では申請できないため、空き家を引き取ってもらいたい場合はまず解体して更地にする費用を自己負担する必要があります。ハードルは高いものの、共有持分を整理した末に土地だけが残ってしまった場合の最後の受け皿として、頭に入れておく価値はあります。

名義変更にかかる費用は登録免許税が評価額の0.4パーセント

相続登記や持分の名義変更には、登録免許税と司法書士報酬がかかります。相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の1000分の4、つまり0.4パーセントです。司法書士へ依頼する場合の報酬相場は、不動産の数や相続人の数、遺産分割協議書の作成有無によって変わりますが、一般的な戸建て1軒であれば数万円から十数万円程度が目安です。

持分放棄や持分売買では、登録免許税に加えて、放棄によって持分を取得する側に贈与税が課される可能性があります。贈与税は基礎控除額を超える部分に課税されるため、事前に税理士へ相談し、評価額や特例の適用可否を確認しておいたほうがいいでしょう。家族信託を組成する場合は、信託契約書の作成費用、公正証書化の費用、不動産の信託登記費用がかかり、専門家によって報酬体系も変わるため、複数の専門家から見積もりを取ることをおすすめします。

共有名義の整理は司法書士と弁護士、税理士に役割を分けて相談する

共有名義や共有持分の整理は、法律と税務、登記の知識が絡み合う分野です。相続登記や持分移転登記の手続きは司法書士、共有者間の交渉や共有物分割請求訴訟が必要な場合は弁護士、贈与税や譲渡所得税の判断が必要な場合は税理士と、状況に応じて頼る専門家を分けたほうが話が早く進みます。共有持分の問題に特化した相談窓口や、終活カウンセラー、相続診断士のような専門家も増えており、まずは無料相談を使って自分の家族に合う選択肢を整理してもらうところから始めるのが現実的です。複数の専門家の意見を聞き比べると、判断の材料も増えます。

終活でマイホームや実家の名義を整理することは、財産の分配だけでなく、家族間の将来のトラブルを未然に防ぐ準備でもあります。共有名義のまま放置すれば、売却や活用の自由度は制限され続け、相続が重なるたびに共有者が増えて権利関係は複雑になっていきます。2024年4月の相続登記義務化と2027年3月末という経過措置の期限が示すとおり、共有名義・共有持分の整理はもう先送りできる話ではありません。持分放棄や持分売買、共有物分割請求、換価分割といった解消方法に加え、遺言書の作成、生前贈与、家族信託、任意後見制度の活用まで、生前に打てる手はいくつも用意されています。判断能力がしっかりしているうちに家族と話し合い、専門家の助言を受けながらマイホームの名義と共有持分を整理しておくことが、残された家族への何よりの備えになります。

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