遺言書の種類とメリット・デメリットを比較、自分に合う選び方は

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遺言書には、民法で定められた方式として自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの種類があります。それぞれ費用や無効になりにくさ、内容の秘密を守れるかどうかが異なり、特徴を比較したうえでどれを選ぶかを決める必要があります。相続人同士の関係が良くない場合や財産構成が複雑な場合は公正証書遺言、費用を抑えたい場合は法務局の保管制度を使った自筆証書遺言が向いているというように、置かれている状況によって最適な種類は変わってきます。この記事では、3つの遺言書それぞれのメリットとデメリット、費用の目安、そして自分に合った種類を選ぶための判断基準を整理してお伝えします。あわせて、遺言書がないまま相続が始まった場合に起こりやすい問題も確認していきます。

目次

遺言書がないと遺産分割協議が長期化し、解決までに数年かかることもある

遺言書を作成せずに相続が始まると、財産の分け方は法定相続人全員による遺産分割協議で決めることになります。相続人が一人でも反対すれば協議は成立せず、話し合いだけでは解決に至らないケースも少なくありません。相続人である兄弟姉妹同士でそれぞれ言い分が異なる場合、被相続人が再婚しており元配偶者との子と現在の配偶者との間で疎遠な関係にある場合、相続人の人数が多く遠方に住んでいる場合、相続人同士が長年会っておらず関係が疎遠な場合などは、協議が難航しやすい典型的なパターンとして知られています。話し合いでまとまらなければ家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになり、解決までに数ヶ月から数年単位の時間がかかることも珍しくありません。生前に遺言書を作成し、誰にどの財産を相続させるかを明確にしておけば、原則としてその内容に沿って手続きを進めることができ、相続人同士の話し合いの負担を大きく減らせます。

遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3方式がある

日本の民法が定める遺言のうち、一般的な終活や相続対策で使われるのは自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類です。このほかに、遭難時や病気で死期が迫っている場合などに用いる特別方式遺言もありますが、これは緊急時のみに使われる特殊な形式で、通常の遺言書作成では選択肢に入りません。以下、3つの方式それぞれの特徴とメリット、デメリットを見ていきます。

自筆証書遺言は費用ゼロで作れるが、検認手続きに1〜2ヶ月かかる

自筆証書遺言とは、遺言者本人が遺言の全文と日付、氏名を自書し、押印することで成立する遺言書です。民法改正により財産目録はパソコンでの作成や通帳のコピー添付が認められるようになり、以前より作成の負担は軽くなりました。ただし、誰にどの財産を相続させるかという本文の核心部分は、依然として自書が必要です。

最大のメリットは費用がほとんどかからないことです。紙とペン、印鑑さえあれば作成でき、公証人手数料や証人への謝礼は発生しません。何度でも無料で書き直せる点も見逃せない利点です。公証役場に予約を取ったり証人を手配したりする必要がなく、自宅で好きなタイミングですぐに作成できるうえ、公証人や証人が関与しないため内容を完全に秘密にしたまま作成できます。

一方でデメリットもあります。日付の記載漏れや押印忘れ、財産の特定が曖昧といった些細なミスで遺言そのものが無効と判断されるリスクがあり、専門家のチェックを受けずに作成した場合はこのリスクが特に高くなります。自宅で保管する場合、遺言書の存在に相続人が気づかなかったり、内容を知った相続人が自分に不利な部分を破棄や改ざんしてしまったりする可能性も残ります。さらに、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認という手続きを経なければ、不動産の名義変更や預金の解約などの相続手続きに使えません。検認には数週間から1〜2ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。後述する自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、これらのデメリットの多くを解消できます。

公正証書遺言は無効リスクがほぼゼロだが、数万円の費用と証人2人が必要

公正証書遺言とは、遺言者が公証役場に出向くか公証人に出張してもらい、公証人に遺言の内容を口述して公正証書として作成してもらう遺言です。作成には証人2人以上の立会いが必要になります。

法律の専門家である公証人が内容までチェックしながら作成するため、形式不備や記載内容の曖昧さで遺言が無効になるリスクはほぼありません。原本は公証役場で厳重に保管されるため、自宅保管のように紛失したり第三者に改ざん・隠匿されたりする心配もなく、正本や謄本を紛失しても公証役場に原本が残っているため再発行が可能です。家庭裁判所の検認も不要なので、相続開始後すぐに不動産の名義変更や預貯金の払い戻しに着手できます。病気や高齢で自書が困難な人でも、口述によって遺言を残せる点も強みです。

費用面はデメリットとなります。公証人手数料は相続財産の価額に応じて法定されており、遺産額が5000万円程度で相続人2人に分ける内容であれば5万円〜7万円前後になることが多いとされます。財産が1億円以下の場合は遺言加算として11,000円が加算されます。証人への謝礼は自分で手配する場合1人あたり5,000円〜1万円程度、公証役場に紹介してもらう場合は7,000円〜1万5,000円程度かかり、専門家に作成を依頼すればその報酬も別途必要です。公証人に病院などへ出張してもらう場合は、通常の1.5倍の手数料に加えて交通費もかかります。未成年者や推定相続人、受遺者、その配偶者・直系血族などは証人になれないため、身近な人に頼みにくい場合は公証役場に紹介してもらうか専門家に依頼する必要があり、作成の過程で公証人と証人に内容を伝えるため完全な秘密にはできません。必要書類の準備や公証役場との日程調整にも時間がかかります。

秘密証書遺言は内容の秘密性が最も高いが、年間利用件数は100件前後にとどまる

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言書に署名・押印したうえで封筒に入れて封印し、公証役場で公証人と証人2人以上の前に自分の遺言書である旨と氏名・住所を申述する方式です。公証人は遺言書の存在を証明する記載を封紙にしますが、中身の内容そのものはチェックしません。

公証人や証人も遺言の中身を見ないため、内容の秘密性は3種類の中で最も高いといえます。自筆証書遺言と違い本文もパソコンで作成したり第三者に代筆してもらったりでき、署名だけは本人が自書すれば足ります。公証役場で手続きを行うため、遺言書が存在すること自体は公的に証明されます。

ただし公証人は内容の有効性まではチェックしないため、形式や内容に不備があれば無効になる可能性は自筆証書遺言と同様に残ります。自宅などで保管する形式のため、相続開始後は家庭裁判所での検認も必要です。公証役場での手続きが必要なため、自筆証書遺言に比べて定額11,000円程度の手数料と証人の手配もかかります。手間や費用はかかるのに内容の有効性は保証されないという中途半端な位置づけになりやすく、実際の利用件数は年間100件前後と少なく、実務では自筆証書遺言か公正証書遺言のいずれかが選ばれるのが一般的です。

自筆証書遺言書保管制度を使えば3,900円で検認も不要になる

2020年7月に始まった自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言のデメリットを補うための制度です。遺言者が作成した自筆証書遺言を法務局の遺言書保管所に持参し、保管を申請できます。

法務局の職員が日付や氏名、押印の有無といった外形的な要件をその場で確認してくれるため、明らかな形式不備による無効を防げます。ただし内容そのものの有効性までは保証されません。原本は法務局で厳重に保管され、画像データとしても保存されるため、火災や盗難、第三者による改ざんのリスクがなく、公正証書遺言と同様に検認手続きも不要になるため相続開始後すぐに手続きへ移れます。費用は遺言書1通につき一律3,900円と低廉で、遺言者があらかじめ希望すれば死亡時に指定した相続人などへ保管の事実が通知される死亡時通知の仕組みも用意されています。

一方で、代理申請は認められておらず、遺言者本人が法務局へ出向く必要があるため、病気や怪我で外出が困難な場合は利用しにくい制度です。チェックされるのはあくまで形式面のみで、内容が法的に問題ないか、意図通りの効果を生むかどうかは審査対象外のため、内容面の確実性を求めるなら専門家によるチェックや公正証書遺言のほうが安心です。死亡時通知を希望していない場合や通知対象者を指定していない場合は、相続人が遺言書の存在自体に気づかないまま遺産分割が進んでしまうリスクも残ります。

3種類の遺言書を費用・確実性・秘密保持・手続きの手間で比較する

ここまでの内容を軸ごとに整理すると、次のように比較できます。

比較項目自筆証書遺言(自宅保管)自筆証書遺言(保管制度利用)公正証書遺言秘密証書遺言
費用の目安ほぼ0円3,900円数万円〜十数万円11,000円程度
無効になりにくさ低い(チェックなし)やや高い(形式面のみ確認)最も高い(内容まで確認)低い(存在の証明のみ)
秘密の保ちやすさ最も高い高いやや低い(公証人・証人に開示)最も高い
相続開始後の検認必要不要不要必要

費用の面では自筆証書遺言が最も安く、保管制度を使っても3,900円で済みます。確実性の面では公証人が内容までチェックする公正証書遺言が最も高く、次に保管制度を利用した自筆証書遺言、そして自宅保管の自筆証書遺言と秘密証書遺言の順になります。秘密保持の面では内容を誰にも見せずに済む自筆証書遺言と秘密証書遺言が優れており、公証人や証人に内容が知られる公正証書遺言はやや劣ります。相続開始後の手続きの手間では、検認が不要な公正証書遺言と保管制度利用の自筆証書遺言が優れており、検認が必要な自宅保管の自筆証書遺言と秘密証書遺言は相続人に一定の負担がかかります。

相続トラブルが予想される人は公正証書遺言を選ぶべき

以上を踏まえたうえで、実際にどの遺言書を選ぶべきかをケースごとに見ていきます。

子どものいない夫婦や相続人が疎遠なケースにも公正証書遺言が有効

推定相続人同士の関係が良くない、内縁関係の人や事業承継など複雑な事情がある、多額の財産があるといった場合は、無効リスクが最も低く検認も不要な公正証書遺言が第一選択です。多少の費用がかかっても、確実性を最優先すべきケースといえます。子どものいない夫婦の場合、配偶者だけでなく兄弟姉妹やその子にも相続権が発生することがあり、遺産分割協議がまとまりにくくなりがちです。このような場合も、公正証書遺言によって配偶者へ財産を集中させる意思を明確に残しておくことが有効です。

費用を抑えて安全性も確保したいなら自筆証書遺言書保管制度が現実的

推定相続人同士の関係が比較的良好で財産構成もシンプルな場合は、自筆証書遺言書保管制度を利用するのがバランスの良い選択です。低コストで無効リスクを一定程度抑えつつ、検認も不要になります。

内容を柔軟に書き直したいなら保管制度を使わない自筆証書遺言が向く

資産状況や家族関係が今後変わる可能性が高く、内容を何度も柔軟に書き直したいという人には、費用がかからず何度でも書き直せる自筆証書遺言が向いています。ただし、最終的に効力を発生させる遺言は、内容に不備がないか専門家に確認してもらうことを強くおすすめします。

外出が難しい高齢者には公証人が出張してくれる公正証書遺言が適する

法務局へ出向く必要がある保管制度は、体が不自由で外出が難しい人や高齢で自書が困難な人には利用しにくい面があります。公証人に自宅や病院へ出張してもらえる公正証書遺言であれば、文字が書けなくても口述で作成できます。

家族にも内容を隠したいなら保管制度付き自筆証書遺言のほうが現実的

内容の秘密性を最優先するなら秘密証書遺言という選択肢もありますが、内容の有効性は保証されないという弱点があります。実務上は、専門家にだけ内容を確認してもらったうえで、自筆証書遺言を保管制度で保管するといった方法のほうが現実的な場合が多いといえます。

遺言書作成では遺留分への配慮と遺言執行者の指定が欠かせない

種類を問わず、遺言書を作成する際には共通して注意したい点があります。まず、財産は誰が見ても特定できるよう具体的に記載することが必要です。不動産は登記事項証明書の記載通りに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで記載します。

遺留分とは、法律上、配偶者・子(またはその代襲相続人)・直系尊属に最低限保障されている遺産の取り分のことです。例えば全財産を長男に相続させるという遺言書を残した場合でも、その内容自体は有効ですが、遺留分を侵害された他の相続人は、長男に対して遺留分に相当する金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求を行うことができます。以前は現物の返還を求める遺留分減殺請求という制度でしたが、2019年7月の民法改正により金銭での支払いを求める遺留分侵害額請求に変更されました。この請求権は、相続の開始と遺留分侵害の事実を知ったときから1年、相続開始から10年で時効により消滅します。遺言書を作成する際は、こうした遺留分を巡る紛争を避けるため、あらかじめ遺留分に配慮した分配にするか、付言事項でその意図を説明しておくことが望まれます。付言事項として、なぜこのような分け方にしたのかという理由や家族への感謝の気持ちを書き添えることで、相続人の納得感を高め、トラブルを防ぎやすくなります。

遺言執行者をあらかじめ指定しておくと、相続開始後の手続きがスムーズに進みやすくなります。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために不動産の名義変更や預貯金の解約・分配などの手続きを行う人のことで、相続人の中から選ぶことも、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。相続人同士の関係が良好でない場合ほど、利害関係のない専門家を遺言執行者に指定しておくと手続きが進みやすくなります。一度作成した後も、財産状況や家族関係の変化に応じて内容を見直し、必要があれば書き直すことが大切です。

専門家への依頼費用は弁護士が20万円〜300万円、行政書士が10万円〜20万円

自分だけで遺言書を作成することも可能ですが、内容の有効性や遺留分への配慮を考えると、専門家に相談しながら作成するケースも少なくありません。依頼先によって得意分野や費用感が異なります。

依頼先得意分野費用相場
弁護士遺留分侵害の可能性や相続人同士の対立が予想されるケース20万円〜300万円程度
司法書士不動産の名義変更(相続登記)を含むケース10万円〜25万円程度(公正証書遺言作成サポート)
行政書士紛争性の低いシンプルな内容の書類作成10万円〜20万円程度
信託銀行・信託会社保管から遺言執行まで一括のサポート30万円〜100万円程度

遺言内容についての個別具体的な法律相談ができるのは弁護士だけで、司法書士や行政書士は法律で相談業務が制限されています。将来的に紛争へ発展しそうなケースに強いのが弁護士、遺産の中に不動産が含まれる場合に適しているのが司法書士、費用を抑えやすいのが行政書士という住み分けです。いずれの専門家に依頼する場合も、費用だけでなく、遺産の内容や相続人同士の関係性、紛争の可能性の高さを踏まえて選ぶことが大切です。迷った場合は、まず無料相談を実施している事務所に相談し、見積もりを比較してから決めるとよいでしょう。

遺言書に関するよくある疑問に答える

遺言書は何度でも書き直すことができます。内容が矛盾する複数の遺言書がある場合は、原則として日付の新しいものが優先されます。ただし、公正証書遺言を書き直す場合は、その都度あらためて公証人手数料がかかる点に注意が必要です。遺言書は一人につき一通が原則で、夫婦であっても連名で1通の遺言書を作ることはできません。民法上、共同遺言は禁止されているため、夫婦それぞれの財産について、それぞれが自分名義で遺言書を作成する必要があります。遺言書はあくまで誰にどの財産を相続させるかを定めるものであり、相続税の課税を回避するものではありません。相続税の申告や納付が必要かどうかは、遺産総額や基礎控除額などに基づいて別途判断されます。自筆証書遺言と公正証書遺言の両方を作成すること自体は法律上問題ありませんが、内容が矛盾する場合は日付の新しいものが優先されるため、混乱を避ける意味でも最終的にどちらか一方に内容を一本化しておくことが望ましいといえます。

2026年4月の民法改正案閣議決定でデジタル遺言「保管証書遺言」が創設される

遺言書に関する制度は、2026年に入り大きな転換点を迎えました。公正証書遺言については2025年10月から手続きのデジタル化が始まっており、公証役場に出向かなくてもオンラインのWeb会議を通じて公証人とやり取りし、遺言を電子データとして保存できるようになっています。これにより、遠方に住んでいる人や体が不自由で公証役場への移動が難しい人でも、公正証書遺言を作成しやすくなりました。

さらに、2026年1月20日に法制審議会民法(遺言関係)部会が要綱案を取りまとめ、同年2月12日に法制審議会総会で承認され、4月3日には成年後見制度の見直しとあわせて民法改正案が閣議決定されました。この改正案の柱の一つが、保管証書遺言と呼ばれる新しいデジタル遺言方式の創設です。保管証書遺言では、公的機関が本人確認と真意性の確認を行う仕組みのもとで、パソコンやスマートフォンなどを使って遺言データを作成し、そのデータやプリントアウトを法務局に提出したうえで、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述する手続きが想定されています。あわせて、自筆証書遺言を作成する際の押印義務も廃止される見込みです。

この改正の施行時期は、原則として公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内で政令により定められ、保管証書遺言の制度や遺言書保管制度に関する改正部分は公布の日から3年を超えない範囲内での施行とされています。今すぐデジタル遺言が使えるようになるわけではありませんが、今後数年のうちに遺言書作成の選択肢はさらに広がっていく見込みです。現時点で遺言書を作成する際は、こうした将来の制度変更を待つのではなく、現行の3つの方式や自筆証書遺言書保管制度の中から自分の状況に合ったものを選んで着手することが重要です。

遺言書と家族信託は目的が異なり、認知症対策なら家族信託が向く

近年、遺言書と並んで家族信託という相続対策の手法も選択肢に挙がるようになりました。両者は目的が異なるため、混同しないよう整理しておく必要があります。

遺言書は、遺言者の死亡時に効力が発生し、その時点で保有している財産の承継先を定めるものです。作成後も遺言者の意思だけで自由に書き直すことができ、生前の財産管理そのものには関与しません。一方、家族信託は財産の管理を家族などの受託者に託す契約であり、契約締結後すぐに効力が生じます。委託者が元気なうちから財産管理を任せられるため、認知症などによる資産凍結を防ぐ生前対策として活用されることが多く、遺言と異なり数世代先までの資産承継先を指定できる点も特徴です。ただし、契約内容の変更には受託者との合意が必要で、遺言に比べると自由な書き直しはしにくく、設計や手続きにかかる費用も遺言書より高くなる傾向があります。

生前の財産管理や認知症対策まで含めて備えたい場合は家族信託の活用を検討する価値がありますが、単に死後、誰にどの財産を渡すかを決めておきたいだけであれば、費用を抑えやすい遺言書で十分なケースが多いといえます。実務上は、遺言書と家族信託を組み合わせて活用するケースもあり、財産の内容や目的に応じて専門家に相談しながら決めるのがよいでしょう。

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの基本形があり、さらに自筆証書遺言には法務局による保管制度という選択肢も加わります。費用を抑えたいのか、確実性を最優先したいのか、内容の秘密性を重視したいのか、自分や家族の状況に照らしてどの点を優先するかによって、最適な種類は変わってきます。一般的には、相続トラブルのリスクが少しでもある場合や多額の財産・複雑な家族関係がある場合には公正証書遺言が安心であり、費用を抑えつつ一定の安全性も確保したい場合には自筆証書遺言書保管制度が現実的な選択肢になります。いずれの方法を選ぶにしても、内容面での不備がないよう、可能であれば弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談しながら作成を進めることが、将来の相続トラブルを防ぐ確実な方法だといえるでしょう。遺言書は元気なうちに、早めに作成しておくことが何よりも大切です。認知症などにより判断能力が低下してしまうと、有効な遺言書を作成すること自体が難しくなります。今回紹介した3つの種類とそれぞれのメリット・デメリット、そして今後始まるデジタル遺言などの制度改正の動向も踏まえながら、自分と家族にとって最適な形で、できるだけ早いタイミングで準備を始めることをおすすめします。

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