2025年を目前に控え、終活への関心が急速に高まっています。団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」により、労働力不足、医療・介護体制の逼迫、社会保障費の増大といった課題が顕在化し、これまでの終活のあり方にも大きな変化が求められています。
現代の終活は、単なる死後の準備ではなく、残された時間をより充実させ、自分らしい人生を送るための前向きな活動として位置づけられています。実際に終活を始めた方の幸福度や生活満足度が高いという調査結果も、その価値を裏付けています。
2025年の終活市場規模は前年比109.7%増の257.3億円に達すると予測され、ワンストップサービスの需要が高まる一方で、サービスの質や価格の透明性といった課題も浮上しています。デジタル化の進展により、パソコンやスマートフォンに保存されたデータ、SNSアカウント、オンラインバンキングなど、デジタル遺品の整理も新たな終活の重要項目となりました。

Q1. 2025年問題が終活に与える影響とは?なぜ今から準備が必要なのか
2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、日本社会の様々な分野に深刻な影響が及ぶ課題の総称です。この社会変化は、終活のあり方を根本的に変えています。
労働力不足と医療・介護体制の圧迫が最も深刻な問題です。介護職員は2025年には約20万人の不足が見込まれ、現状のペースでは介護体制の維持が困難になります。医療においても「病院完結型」から「地域完結型」への移行が求められており、地域コミュニティによる支援の重要性が増しています。
社会保障費の増大も避けられない現実です。2025年には社会保障給付費が140兆円に達すると予測され、現役世代の負担がさらに重くなることが懸念されています。これは、公的サービスへの過度な依存が困難になることを意味します。
ビジネスケアラーの急増も見逃せません。仕事と家族の介護を両立する人々が2022年には約364万人に達し、2030年には経済的損失が約9兆円に達すると推測されています。これにより、終活は「高齢者だけの問題」から「全世代の問題」へと変化しています。
これらの社会的圧力は、終活において自助努力と地域連携の重要性を一層高めています。従来のように公的サービスに依存するのではなく、自身の健康維持、介護の自己負担能力の確保、地域での支え合いの構築といった側面を重視した準備が不可欠となります。
早期の終活着手により、変化する社会情勢に対応できる柔軟な計画を立て、家族の負担を軽減し、自分らしい人生の最期を迎える準備を整えることができるのです。
Q2. 2025年に向けて最優先で準備すべき終活項目は何か?
2025年に向けた終活では、財産管理・相続対策、医療・介護の意思表示、デジタル終活の3つが最優先項目となります。
財産管理・相続対策では、まず正確な財産リストの作成が基盤となります。プラスの財産(不動産、預貯金、有価証券、生命保険など)とマイナスの財産(住宅ローン、借金、未払い税金など)を網羅的に記載し、曖昧な表現を避けて具体的な情報を盛り込むことが重要です。
遺言書の作成においては、自筆証書遺言保管制度の活用が効果的です。2020年に創設されたこの制度により、法務局が遺言書を適切に保管し、紛失・偽造・改ざんのリスクを防げます。費用は遺言書1通につき3,900円と割安で、家庭裁判所での検認も不要となります。
医療・介護の意思表示では、尊厳死宣言書(リビング・ウィル)の作成が中核となります。回復の見込みがない状況での延命治療の要・不要、緩和ケアの希望などを明確にすることで、家族が治療方針を決定しやすくなり、「自分が諦めさせたのではないか」という罪悪感を軽減できます。
公正証書として作成する場合、基本手数料11,000円程度で本人の意思に基づいた強い証拠となります。また、介護保険制度の仕組みを理解し、要介護認定の申請からサービス利用までの流れを把握しておくことも重要です。
デジタル終活は現代終活の新たな必須項目です。SNSアカウント、オンラインバンキング、各種サブスクリプション、クラウドストレージなど、デジタル遺品を整理しないと、不要な課金継続、アカウント凍結、個人情報漏洩といったリスクが発生します。
パスワード管理アプリの活用や、重要なアカウント情報をエンディングノートに記載し、金庫など安全な場所に保管することが効果的です。また、家族に見せたいデータと見られたくないデータを分類し、適切にフォルダ分けしておくことも重要な準備です。
これら3つの項目を優先的に整備することで、社会変化に対応できる基盤を構築し、家族の負担を大幅に軽減できます。
Q3. デジタル終活が重要な理由と具体的な進め方について
現代社会では、私たちの生活にデジタルデータが深く浸透しており、その整理は終活において避けて通れない重要課題となっています。デジタル遺品には、パソコンやスマートフォンの写真・動画、SNSアカウント、オンラインバンキング、電子マネー、各種サブスクリプションなど、膨大な情報が含まれます。
デジタル終活を怠ることで生じるリスクは深刻です。まず、不要な課金継続により、亡くなった後も月額料金が発生し続ける可能性があります。次に、パスワード不明によるアクセス不能で、重要な金融機関の口座や資産情報にアクセスできず、相続手続きが滞る原因となります。さらに、個人情報漏洩のリスクや、極めてプライベートな内容が他人に知られる可能性もあります。
具体的な進め方として、まずパスワード管理が最重要となります。パスワード管理アプリを活用し、重要度の高いアカウントのパスワードをエンディングノートに記載する方法が効果的です。物理的な保管方法として、修正テープでパスワードを隠した「スマホのスペアキー」カードを作成し、預金通帳と一緒に安全な場所に保管する工夫も有効です。
データ整理とバックアップでは、家族に見せたいデータを「共有フォルダ」に保存し、見られたくないデータは別の場所にパスワード付きで保管します。Google DriveやDropboxなどのクラウドサービスの共有機能を活用し、特定のデータのみ家族がアクセスできるよう設定することも重要です。
不要なサービスの解約も忘れてはいけません。定期的に契約中の有料サブスクリプションサービスの一覧を作成し、不要なものは解約することで、死後の不必要な出費を回避できます。
専門業者の活用も選択肢の一つです。デジタル終活サービスの費用は約2万円から5万円程度が目安で、業者選びでは実績と信頼性、料金体系の透明性、プライバシー保護体制を重視することが重要です。
デジタル終活は、単に情報を削除するだけでなく、価値ある情報の保全や次世代への継承にも関わるため、時間をかけて丁寧に取り組むことが大切です。
Q4. 2025年の税制改正が相続・贈与に与える影響と対策方法
令和5年度税制改正により、相続税と贈与税に関する制度が大幅に変更され、将来的な一体化に向けた動きが見られます。この改正は終活における財産計画に大きな影響を与えるため、適切な理解と対策が不可欠です。
主な改正内容として、最も重要なのが生前贈与の持ち戻し期間の延長です。贈与者が死亡した場合に相続財産に加算される生前贈与の期間が、従来の3年から7年以内に延長されました。これは暦年贈与による節税効果を抑制する狙いがあり、従来の節税戦略の見直しが必要となります。
相続時精算課税制度の変更では、年間110万円の基礎控除が追加され、この範囲内の贈与であれば贈与税も相続税も発生しなくなりました。また、相続時精算課税に係る土地または建物の評価額の特例も創設され、制度のメリットが増加しています。
効果的な節税戦略として、まず生前贈与の活用が挙げられます。年間110万円の基礎控除を活用した暦年贈与は、長期的な視点では依然として有効な節税策となります。相続時精算課税制度と暦年贈与は贈与者ごとに選択できるため、父親からは相続時精算課税、母親からは暦年贈与といった併用も可能です。
特例制度の利用では、「結婚・子育て資金の一括贈与」や「教育資金の一括贈与」などの非課税措置を活用できます。これらの制度の適用期限は延長されており、積極的な活用を検討すべきです。
小規模宅地等の特例は、亡くなった被相続人が居住や事業のために使っていた宅地の相続税評価額を最大80%減額できる重要な特例です。ただし、安易な生前贈与により適用できなくなるケースがあるため、専門家とのシミュレーションが不可欠です。
生命保険の活用では、死亡保険金に設けられた「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額を利用した節税が可能です。養子縁組により法定相続人の数を増やすことで、基礎控除額や生命保険の非課税限度額を増加させる方法もありますが、相続税法上の制限(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで)があります。
これらの節税戦略は個々の状況によって最適な方法が異なるため、税理士などの専門家と連携し、詳細なシミュレーションを行うことが極めて重要です。早期の対策により、税制改正の影響を最小限に抑え、効果的な資産承継を実現できます。
Q5. 終活にかかる費用の相場と専門家の選び方のポイント
終活にかかる費用は平均約503万円と報告されており、その内訳を理解することで適切な資金計画を立てることができます。最も平均金額が高いのは「投資信託、株式投資など資産運用をはじめる」であり、次いで「終のすみかとして、自宅をリフォーム」が挙げられています。
主要な終活費用の相場は以下の通りです。葬儀費用では、家族葬が約105万円、一日葬が約52.7万円、直葬・火葬式が最低82,500円からとなっています。お墓・供養では、一般墓地が約202万円(永代使用料約68万円+墓石代金約134万円)、納骨堂が約5万円~100万円、永代供養墓が約10万円~150万円と幅広い選択肢があります。
遺言書作成では、自筆証書遺言保管制度の利用で3,900円、公正証書遺言で数万円~十数万円が目安です。デジタル終活サービスは約2万円~5万円程度となっています。
専門家選びのポイントとして、まず専門分野の理解が重要です。弁護士は相続人間の紛争や複雑な遺言書作成(費用:遺言書作成10万円~30万円)、司法書士は不動産の相続登記や法務局関連手続き、税理士は相続税申告や節税対策(費用:財産評価・節税策提案10万円~30万円)、行政書士は遺産分割協議書作成などの書類作成に特化しています。
初回相談の活用が効果的で、多くの専門家が初回無料相談を実施しているため、自身の状況に合ったサポートを見つけることから始めましょう。複数の専門家からの見積もり比較も重要で、料金体系の透明性、追加料金の有無、実績や口コミを総合的に判断することが大切です。
公的支援機関の活用により費用を抑えることも可能です。地域包括支援センターでは65歳以上の高齢者とその家族が無料で介護保険サービスの相談を受けられます。社会福祉協議会では、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家による無料相談会が定期的に開催されています。
業者選びの注意点として、実績と信頼性(年間対応件数、口コミ・評判の確認)、料金体系の透明性(各サービスの料金設定、追加料金の有無の明確化)、アフターサポート体制(問い合わせのしやすさ、継続的なサポートの有無)を重視することが重要です。
終活費用は単なる支出ではなく、残された人生を豊かにするための「自己投資」であり、次世代への負担を軽減するための「未来への投資」として捉えることで、適切な資金計画と専門家選びができるようになります。
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