高齢化社会が進む中で、身寄りのない方やご家族に負担をかけたくない方にとって、身元保証サービスは重要な選択肢となっています。病院への入院や介護施設への入居時に必要な身元保証人を専門の団体や企業が代行するこのサービスは、単なる書類上の手続きにとどまらず、緊急時の対応から死後事務まで幅広いサポートを提供します。
しかし、サービス内容や料金体系は事業者によって大きく異なり、中には悪質な業者も存在するため、慎重な選択が求められます。総務省の調査では、サービス利用開始時に必要な費用は少なくとも100万円以上とされており、契約トラブルも多数報告されています。
本記事では、身元保証サービスの基本的な仕組みから具体的な選び方、料金比較、そして安全に利用するための注意点まで、2025年7月時点の最新情報に基づいて詳しく解説します。終活を検討中の方や、将来の不安を解消したい方は、ぜひ参考にしてください。

Q1. 身元保証サービスとは何ですか?なぜ終活で注目されているのでしょうか?
身元保証サービスとは、高齢者や身寄りのない方が、病院への入院、介護施設への入居、賃貸契約、そして万が一の際の葬儀や納骨といった様々な場面で必要となる身元保証人を、専門の団体や企業が有償で引き受けるサービスです。
なぜ今注目されているのか
終活において身元保証サービスが注目される背景には、深刻な社会問題があります。65歳以上の単独世帯は671.7万世帯に達し、約5人に1人が一人暮らしという現状があります。さらに、日本総研の予測では、2040年には家族などの身内から身元保証人を立てることが難しい高齢者が1,000万人を超えるとされています。
一方で、病院や介護施設の9割以上が入院・入所時に身元保証人を求めているのが実情です。これは、医療費や施設費用の未払い、患者・入居者の死亡後の遺体引き取り人の不在といったリスクを回避するためです。
提供される主なサービス内容
身元保証サービスでは、以下の3つの主要なサービスが提供されます:
1. 身元保証サービス
- 病院・介護施設等への入院・入所時の身元保証
- 賃貸住宅契約時の身元保証
- 入退院・入退所手続きの支援
- 身元の引き受け
2. 日常生活支援サービス
- 24時間365日緊急時駆けつけサービス
- 買い物や通院の付き添い
- 定期的な安否確認
- 金銭管理のサポート
3. 死後事務サービス
- 葬儀・納骨の手配
- 遺品整理
- 行政手続き(死亡届、年金停止など)
- 公共料金の解約手続き
成年後見制度との違い
身元保証サービスは、成年後見制度とは異なる役割を果たします。成年後見制度は判断能力が不十分な人を法律的に保護する公的制度ですが、手続きが煩雑で時間がかかり、医療同意の権限もありません。一方、身元保証サービスは判断能力がある方でも利用でき、より柔軟で包括的なサポートを提供します。
このように、身元保証サービスは現代の高齢社会における重要なセーフティネットとして、終活の一環として多くの方に検討されているのです。
Q2. 身元保証サービスの料金相場はどのくらい?各社の費用を比較したいのですが
身元保証サービスの料金体系は非常に複雑で、入会金、年会費、基本料、都度払い、預託金など、項目が細かく分かれています。総務省の調査によると、サービス利用開始時に必要な費用は少なくとも100万円以上です。
料金項目別の相場
初期費用(入会金・申込金など)
- 相場:10,000円~150,000円
- イオンライフ:10,000円(コールセンター申込で無料)
- シニア総合サポートセンター:10,000円
- 終活協議会:10,000円
会費(年額・月額)
- 年額:10,000円程度
- 月額:1,000円~20,000円
事務管理費
- 相場:150,000円~500,000円程度
- 預託金の保管・管理費用
- 2年目以降は発生しない場合が多い
身元保証料(預託金)
- 相場:200,000円~600,000円前後
- イオンライフ:356,481円
- シニア総合サポートセンター:356,481円
- 信託会社を通じて管理・保全されることが多い
葬儀・納骨・死後事務支援費(預託金)
- 相場:500,000円~700,000円程度
- イオンライフ:500,000円(不課税)
- シニア総合サポートセンター:500,000円(不課税)
生活支援費用(都度払い)
- 平日昼間:1時間あたり3,564円~4,584円程度
- 土日祝日・夜間:約1,020円増し
- 交通費別途
主要事業者の料金比較表
| 事業者名 | 入会金・会費 | 身元保証サービス料金 | 生活サポート料金 | 葬儀・死後事務 |
|---|---|---|---|---|
| 終活協議会 | 入会金:10,000円、会費:0円 | 385,000円 | 入会金のみで利用可能 | 一本化 |
| プラスらいふサポート | – | 198,000円~616,000円 | 4,400円/時~ | 770,000円~1,000,000円 |
| シニア総合サポートセンター | 入会金:10,000円、年会費:10,000円 | 1,396,296円(身元保証のみ:356,481円) | 3,564円/時~ | 身元保証プランに含む |
| えにしの会 | 入会金:150,000円、月会費:5,000円 | 275,000円 | 3,300円/時~ | 葬儀:275,000円、納骨:110,000円 |
料金の注意点
追加費用の確認が重要です。「190万円以外にお金はいらない」と説明されたにもかかわらず、サービス利用時に都度追加費用を請求されたトラブル事例も報告されています。
預託金の管理方法も確認しましょう。適切に管理されているか(事業者の運営資金と分別して信託会社などを通じて管理されているか)、解約時や死亡時の返金条件なども重要なポイントです。
Q3. 信頼できる身元保証サービスの選び方のポイントを教えてください
身元保証サービスは長期にわたる契約で高額な費用が発生するため、慎重な検討と複数の観点からの評価が必要です。独立行政法人国民生活センターも、高齢者を対象とした身元保証サービスの契約トラブルに注意を呼びかけています。
1. サービス内容の明確さ
希望するサービスに対応しているかを詳細に確認しましょう。事業者によって提供内容が大きく異なります。特に死後事務に関するサービスは、ご自身で確認できない部分であるため、具体的にどこまで行われるかをしっかり確認することが重要です。
また、「不要なサービス」が含まれていないかも要注意です。希望していないオプションが勝手に付けられていたり、不必要なサービスが多く含まれていると、余分に費用がかかる場合があります。
2. 料金体系の透明性
総額と内訳の明確化は最重要ポイントです。入会金、年会費、預託金、事務管理費、生活支援費など、細分化された費用項目の総額と内訳、それぞれの費用が発生するタイミング、支払い方法が明確に提示されているかを確認しましょう。
追加費用が発生する条件についても詳しく確認が必要です。契約時の説明と実際のサービス利用時で費用が異なるトラブルが多発しています。
預託金の管理方法も重要な確認事項です。事業者の運営資金と分別して信託会社などを通じて管理されているか、定期的な報告があるかなども確認しましょう。
3. 信頼性と実績
法人格と事業継続性を確認しましょう。総務省の調査では、事業継続年数が5年以下の事業者が半数以上を占めるため、なるべく長く事業を継続している事業者を選ぶことが安心です。
情報公開の透明性も重要です。事業者の基本情報(組織、人員体制など)や財務諸表、提供サービス内容、費用、預託金の管理方法、個人情報保護方針などが、ホームページなどで公開されているかを確認しましょう。
ガイドラインの遵守状況も確認ポイントです。内閣府が策定した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を遵守している事業者を選びましょう。
4. 担当者の対応と相性
親身な説明をしてくれるかどうかは重要な判断材料です。契約締結に至る前に、サービス内容や料金について、丁寧かつ分かりやすく説明してくれる事業者は信頼できます。
強引な勧誘がないかも要注意です。「契約しないと生活が維持できなくなる」と不安を煽ったり、契約を不必要に急がせたり、相談できる人の同席を嫌がるなど、不審な対応をする業者には注意が必要です。
担当者との相性も重要です。長期的な関係になるため、担当者の専門知識や経験に加え、ご自身との相性も考慮しましょう。
5. 契約内容と条件
契約解除・変更の可否と条件を必ず確認しましょう。契約期間が長く、金額も高額になるため、解約事由、手続き、解約時の返金条件が明確に定められているかが重要です。
判断能力低下時の対応も確認事項です。万一、利用者の判断能力が低下した場合の対応が明確に規定されているか、成年後見制度への移行や連携方法なども含まれていると安心です。
利益相反行為の禁止についても注意が必要です。事業者が利用者から遺贈を受けたり、死因贈与契約を結んだりする契約が含まれていないか確認しましょう。
Q4. 身元保証サービスを利用するメリット・デメリットは何ですか?
身元保証サービスは多くの利点を提供する一方で、注意すべき点も存在します。利用を検討する際は、メリットとデメリットの両方を理解した上で慎重に判断することが重要です。
メリット
1. 安心感の提供とスムーズな手続き
独居高齢者や身寄りのない方にとって、病院への入院や介護施設への入居、賃貸契約などの際に、身元保証人を確保できることで、手続きがスムーズに進み、大きな安心感を得られます。これまで身元保証人がいないために受け入れを断られていた方でも、適切なサービスを受けられるようになります。
2. 緊急時のサポート
持病がある方や一人暮らしの高齢者が急に体調を崩した場合など、24時間365日対応の緊急駆けつけサービスがあれば、万一の時でも迅速な対応が期待できます。医療機関や警察からの連絡を受け、必要に応じて駆けつけたり、関係者に連絡したりしてくれます。
3. 家族・親族の負担軽減
親族や家族が身元保証人となる場合、医療費や施設費用の支払い義務が発生する可能性がありますが、身元保証サービスを利用することで、これらの経済的・精神的負担を軽減できます。特に「親族に迷惑をかけたくない」という方にとって重要なメリットです。
4. 包括的なサポート
医療、介護、死後の手続きまで一貫して対応してくれる事業者も多く、利用者は複数のサービスを個別に調整する手間を省けます。入院中の荷物の購入から遺品整理まで、幅広いサポートを一つの窓口で受けられます。
5. 日常生活の質の向上
買い物や通院の付き添いなど、家族や親族には遠慮してしまうような些細な困りごとでも、料金を支払って依頼していると考えれば気兼ねなくサポートをお願いできます。介護の資格を持つスタッフがサポートする場合もあり、専門的な支援を受けられます。
デメリット・注意点
1. 高額な費用負担
身元保証サービスを利用するには、初期費用、年会費、預託金、都度払い費用など、高額な費用が発生します。サービスの総額は100万円以上になることも珍しくなく、年金生活者にとっては大きな経済的負担となる可能性があります。
2. サービス提供元の倒産リスク
長期間にわたる契約の場合、サービス提供会社が倒産したり、事業を停止したりするリスクもゼロではありません。倒産した場合、サービスの提供が途中で終了し、預託金などが返還されない可能性もあります。
3. 悪質な事業者の存在
身元保証サービスは比較的新しい分野であり、行政による規制が不十分なため、悪質な業者も存在します。消費生活センターには以下のようなトラブル事例が報告されています:
- 契約内容の不明瞭さ
- 追加サービスによる高額化
- 預託金の説明不足や不適切な管理
- 契約解除・返金に関するトラブル
- 不当な勧誘
4. 過度な期待は禁物
身元保証サービスは万能ではありません。提供できるサービスには限界があることを理解しておく必要があります。例えば、日常的な介護や個人的な世話などは、サービスに含まれていない場合がほとんどです。
5. 「人とのつながり」の重要性
身元保証支援サービスは心強い一方で、全てをサービスに任せるだけでは万事安心というわけではありません。友人やご近所の方、親戚と定期的に連絡を取る習慣を持つことや、地域の高齢者サポートサービスや趣味のコミュニティに参加することで、新しい人間関係を築き、人とのつながりを大切にすることも、より豊かで安心な老後を送る上で非常に重要です。
Q5. 身元保証サービスでトラブルを避けるための注意点はありますか?
身元保証サービスに関するトラブルは年々増加しており、独立行政法人国民生活センターへの相談も多数寄せられています。事前の準備と適切な対処法を知っておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
契約前の準備と確認
必要なサービス内容の明確化が最重要です。契約する前に、自分がどのようなサービスを必要としているのかを明確にしておきましょう。これにより、不必要なサービスが含まれることを避け、適切なプランを選択できます。
予算の設定も重要です。支払える費用の範囲を事前に決めておくことで、高額な契約を避けることができます。身元保証サービスは総額100万円を超えることが多いため、無理のない範囲での契約を心がけましょう。
複数事業者の比較検討は必須です。複数の身元保証サービス提供事業者から資料を取り寄せ、面談を行い、サービス内容、料金体系、信頼性などを比較検討しましょう。
契約前の第三者への相談を強く推奨します。契約内容が複雑で理解が難しいと感じる場合や、高額な契約である場合は、必ず家族、信頼できる友人、または専門家(弁護士、司法書士、消費生活センターなど)に相談し、契約書の内容を一緒に確認してもらいましょう。
よくあるトラブル事例と対策
契約内容の不明瞭さに関するトラブルが最も多く報告されています。「契約内容がよくわからず高額なので解約したい」「詳しい内容を把握せずに契約してしまった」といった事例があります。
対策:契約書、重要事項説明書、約款などの書面を隅々まで丁寧に読み込み、内容を十分に理解することが重要です。疑問点があれば納得するまで質問しましょう。
追加サービスによる高額化も頻繁に発生するトラブルです。事業者に勧められるままにサービスを追加した結果、「思ったより高額な契約になった」や「契約するつもりのなかったサービスが含まれていた」という事例があります。
対策:必要なサービスだけに絞って契約したい旨を明確に伝えることが重要です。追加サービスを勧められても、本当に必要かどうか冷静に判断しましょう。
預託金の説明不足に関するトラブルも多発しています。「預託金を支払うように言われているが、詳細な説明がない」といった事例や、預けたお金の保管方法、使途、残金の報告義務が定められていないといった問題があります。
対策:預託金の管理方法、使途、返金条件について詳細な説明を求め、信託会社などを通じて適切に管理されているかを確認しましょう。
トラブル発生時の相談先
地域包括支援センターは、高齢者の生活における困りごとをサポートするための公的な相談窓口です。身元保証サービスに関する相談も受け付けています。
消費者ホットライン188番は、消費生活に関する相談や苦情を受け付けている無料の公的なホットラインです。身元保証会社とのトラブルも相談でき、トラブル解決への助言や事業者との交渉、専門家の紹介などのサポートを受けられます。
弁護士への相談も有効な対処法です。財産の管理・遺贈に関するトラブルなど、法的な専門知識が必要なケースで特に役立ちます。
公的制度の活用
内閣府が策定した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」により、事業者には重要事項説明の義務が課せられています。このガイドラインを遵守している事業者を選ぶことで、トラブルのリスクを軽減できます。
また、厚生労働省の通知により、身元保証人等がいないことのみを理由にサービス提供を拒否することは適切ではないと明確に示されています。無理に身元保証サービスを契約する必要がない場合もあることを知っておきましょう。
身元保証サービスは適切に利用すれば非常に有益なサービスですが、慎重な選択と十分な準備が成功の鍵となります。









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