デジタル遺言書とは、パソコンやスマートフォンなどを用いて電磁的記録として作成された遺言書のことです。デジタル遺言書の法的効力について結論からお伝えすると、2026年6月時点で、日本の法律ではデジタルデータで作成した遺言書には原則として法的効力はありません。ただし、2026年4月3日に閣議決定された民法改正案では「保管証書遺言」という新しいデジタル遺言制度の創設が盛り込まれており、施行は公布から3年を超えない範囲内、おおむね2028年前後になる見込みです。
終活や相続対策を進めるなかで、「パソコンで作成した遺言書は使えるのか」「メモアプリや動画で残した意思表示は遺言として認められるのか」「弁護士にはどのタイミングで何を確認してもらえばよいのか」と迷っている方は少なくありません。本記事では、デジタル遺言書の法的効力の最新状況、現行の3つの遺言方式の特徴、新しい保管証書遺言制度の概要、そして弁護士による確認の重要性と依頼の具体的な手順までを、相続や遺言の実務に沿って体系的に整理して解説します。

デジタル遺言書とは何か(定義と概要)
デジタル遺言書とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの電子機器を使って、電磁的記録として作成された遺言書を指します。手書きで紙に書く従来の遺言書とは異なり、文書ファイル、PDF、電子署名付きデータ、メールに記載した遺言内容、動画録画による遺言など、デジタル形式で残された意思表示の総称として用いられています。
近年、日常生活のあらゆる場面でデジタルツールを利用することが一般的になり、遺言書もデジタルで作成したいという需要が高まっています。特に高齢になっても字を書く機会が減り、入力作業のほうが楽だと感じる方や、身体的な事情で長文の自書が難しい方からは、デジタル遺言書への期待が大きくなっています。一方で、日本の法律は遺言の方式について厳格な要件を定めており、デジタル形式の遺言書が現行制度のなかでどのような位置づけにあるのかを正しく理解することが重要です。
デジタル遺言書の法的効力の現状(2026年6月時点)
デジタル遺言書の法的効力について端的に述べると、2026年6月時点では、パソコンやスマートフォンで作成した電子データの遺言書は日本の法律上、法的効力を持ちません。メモアプリに書いた遺言、電子メールで送った遺言内容、動画録画による遺言、電子署名付きPDFの遺言書も、現行法では遺言として認められていません。
この理由は、民法が遺言の方式について厳格な要件を定めているためです。日本の民法では、遺言は法律で定められた方式に従って作成しなければ無効とされており、どれほど本人の意思が明確であっても、法律が定めた形式を欠く遺言は効力を持ちません。形式の不備は、後日の相続トラブルや家族間の紛争を防ぐためにきわめて重要なルールとされています。
ただし、日本における遺言制度のデジタル化は着実に前進しています。2025年10月1日からは公正証書遺言作成手続きのデジタル化が段階的に始まり、指定公証人がいる公証役場ではメールによる書類の事前チェックやウェブ会議システムを利用した遺言作成の相談・打ち合わせが可能になりました。さらに2026年2月2日からは、自筆証書遺言書保管制度におけるオンライン手続きの試行範囲が拡大され、提出書類の電子メールによる事前チェックを利用できる遺言書保管所が39都道府県・68か所に増えています。
2026年民法改正案「保管証書遺言」の創設
2026年4月3日、政府は「民法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。この改正案には、デジタル技術を活用した新しい遺言方式として「保管証書遺言」の創設が盛り込まれています。施行は公布から3年を超えない範囲内とされており、2028年前後になる見込みです。
保管証書遺言とは、パソコンやスマートフォンなどで作成した電磁的記録を遺言書として認める新しい制度です。自筆証書遺言のように全文を手書きする必要がないため、身体的な理由で自書が困難な方でも利用しやすい仕組みとして設計されています。
保管証書遺言の特徴を整理すると、まずデジタルデータでの作成が認められる点が最大の特徴です。次に、遺言者は証書に署名またはこれに代わる措置(電子署名など)を講じる必要があり、マイナンバーカード等の顔写真付き本人確認資料を提示し、遺言書保管官による対面での視認確認が行われます。さらに、遺言者は遺言書保管官の前で証書に記録された遺言の全文を口述しなければならず、本人の真意に基づく遺言であることを確認する仕組みが組み込まれています。作成されたデジタルデータは法務局(遺言書保管所)で保管されるため、紛失・改ざん・破棄のリスクを防ぐことができます。現行の自筆証書遺言書保管制度と同様に、保管証書遺言も家庭裁判所による検認手続きが不要になる予定です。
従来の遺言方式と比較すると、保管証書遺言は自筆証書遺言と異なりパソコンでの作成が認められる点で優れている一方、法務局への直接出向きと口述確認が必要になります。公正証書遺言と比較すると、公証人や証人2名の立会いが不要なため費用や時間の面でメリットがありますが、公証人による法的内容のチェックがない点では公正証書遺言に劣ります。
現行の遺言書3方式と法的要件
現在の日本の民法では、3種類の遺言方式が認められています。それぞれの特徴と法的要件を理解することが、有効な遺言書を作成する第一歩です。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆(手書き)で記載し、押印して作成する遺言書です。費用がかからず、一人でいつでも作成できる手軽さがある反面、形式不備による無効リスクがあります。
2019年の民法改正により、財産目録に限ってはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付が認められるようになりました。財産目録の各ページには署名と押印が必要です。しかし、遺言の本文そのものは依然として遺言者が全文を自書しなければなりません。有効となる要件は、遺言書の全文を自筆で記載すること、作成日(年月日)を具体的に記載すること、遺言者の氏名を自筆で署名すること、押印することの4点です。「吉日」などの曖昧な表現は無効となるため注意が必要です。
公正証書遺言の要件
公正証書遺言とは、公証人が遺言者から聞き取った内容を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言書です。公証役場で原本が保管されるため、紛失・破棄・偽造・改ざんのリスクがほぼなく、最も安全性が高い遺言方式とされています。
公正証書遺言の作成には、公証人の関与、証人2名以上の立会い、遺言者・証人全員の署名押印が必要です。証人については相続人や受遺者、その配偶者・直系血族などはなれません。2025年10月1日からは公正証書遺言作成手続きのデジタル化も段階的に開始されており、指定公証人のいる公証役場ではメールによる書類の事前チェックやウェブ会議を利用した公正証書作成も可能になってきています。
秘密証書遺言の要件
秘密証書遺言とは、遺言内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみを公証人と証人2名以上で証明してもらう方式です。パソコンで作成した遺言書でも利用できますが、公証人は内容を確認しないため、内容に不備があっても発見されないリスクがあります。実際には利用件数が非常に少ない方式となっています。
| 遺言方式 | 作成方法 | 証人 | 保管場所 | 検認 |
|---|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 全文自書(財産目録のみPC可) | 不要 | 自宅または法務局 | 必要(法務局保管は不要) |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成 | 2名以上 | 公証役場 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 自由(PC可) | 2名以上 | 自己保管 | 必要 |
| 保管証書遺言(施行予定) | 電磁的記録 | 不要 | 法務局 | 不要 |
遺言書の法的効力を弁護士に確認する重要性
遺言書を作成する際に弁護士に確認を依頼することは、遺言を確実に有効なものとするために非常に重要です。デジタル遺言書を含めて、どの方式を選ぶ場合でも弁護士のチェックを受ける意義は大きいといえます。
第一の意義は、形式不備による無効リスクの防止です。遺言書は民法の定める厳格な方式を満たさなければ無効になります。特に自筆証書遺言では、日付の記載漏れや曖昧な表現、自書の不備などで無効になるケースが少なくありません。弁護士が事前にチェックすることで、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。
第二の意義は、遺言内容の法的有効性の確認です。遺言の内容が法律上認められるものかどうかを確認することも重要です。たとえば、相続人の遺留分を完全に無視した遺言や、法的に不可能な内容を含む遺言は、後日トラブルの原因となります。弁護士は遺留分や相続税を考慮した内容のアドバイスも行えます。
第三の意義は、遺言能力の確認です。遺言書が有効とされるためには、遺言者が遺言作成時に適切な判断能力(遺言能力)を持っていることが必要です。認知症などで判断能力が低下している場合、後に遺言の有効性が争われることがあります。弁護士は遺言能力の確認に関するアドバイスも行えます。
第四の意義は、相続人同士のトラブル防止です。弁護士が作成に関与した遺言書は内容が法律的に適切で明確なため、相続人同士での解釈の違いによるトラブルが生じにくくなります。第五の意義は、遺言執行者の選定です。遺言の内容を確実に実行するための遺言執行者の選定も重要で、弁護士が遺言執行者を務めることで遺言の執行がスムーズに進みます。
デジタル遺言書を含む遺言書を弁護士に確認依頼する手順
弁護士に遺言書の確認や作成を依頼する場合、一般的には5つのステップに沿って進みます。デジタル遺言書(保管証書遺言)の施行後も基本的な流れは同じです。
ステップ1:弁護士の選定と初回相談の予約
まず、相続・遺言を専門とする弁護士を探します。代表的な探し方として、各都道府県の弁護士会が設置している法律相談センターへの問い合わせがあります。電話での無料相談や、対面相談(30分程度で5,000円前後)を利用できます。インターネットで「相続 遺言 弁護士 お住まいの地域」と検索すれば、地域の相続専門弁護士事務所を見つけることができ、初回無料相談を提供している事務所も多くあります。
費用面で不安がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用が有効です。法テラスでは、収入・資産が一定基準以下の方を対象に弁護士・司法書士への法律相談を無料(最大3回)で受けることができ、弁護士費用の立替制度も用意されています。利用条件の目安は、手取り月収額が1人家族で18万2,000円以下、2人家族で25万1,000円以下などとなっています。信頼できる知人や家族から相続に詳しい弁護士を紹介してもらうことも有効な方法です。
ステップ2:初回相談での情報整理
初回相談を効率的に進めるためには、事前に必要な情報を整理しておくことが大切です。配偶者・子供・兄弟姉妹などの相続人の範囲、不動産・預貯金・有価証券・負債といった財産の概要、特定の人に特定の財産を渡したいなど遺言で希望する事項、前婚の子供や認知した子供の有無などの家族関係の複雑な事情、現時点での遺言書の有無と保管状況を整理してから訪問するとスムーズです。
ステップ3:弁護士との打ち合わせと文案作成
依頼が決定したら、弁護士と正式な依頼契約を締結します。その後、遺言書に記載する内容について詳細な打ち合わせを行い、弁護士が文案を作成します。この段階で、遺留分への配慮、税務上の影響、相続後の紛争リスクなども含めた総合的なアドバイスを受けることができます。
ステップ4:遺言書方式の選択
弁護士のアドバイスを踏まえて、どの遺言方式が最適かを検討します。費用を抑えたい場合は自筆証書遺言と法務局の遺言書保管制度の併用、安全性を最重視する場合は公正証書遺言、保管証書遺言制度施行後(2028年前後)に身体的理由で自書が難しい場合は保管証書遺言が有力な選択肢となります。
ステップ5:遺言書の作成と保管
弁護士の指導のもとで遺言書を完成させた後、安全な保管方法を決定します。自筆証書遺言の場合は法務局の遺言書保管制度の利用が強く推奨されます。遺言書保管所(法務局)に保管すると、遺言者の死後に相続人が遺言書の存在を確認できるほか、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。原本は遺言者死亡後50年間、画像データは150年間保管されます。公正証書遺言の場合は、公証役場で原本が保管されるため追加の保管手続きは不要です。
弁護士費用の相場と利用できる費用補助制度
弁護士に遺言書の作成・確認を依頼する場合の費用相場は、依頼内容によって異なります。費用を事前に把握しておくことで、安心して相談に臨むことができます。
初回相談料は30分から1時間程度で5,500円から11,000円(税込)が相場で、初回無料の事務所も多くあります。自筆証書遺言の作成支援は実費と弁護士報酬をあわせて10万円から50万円前後、公正証書遺言の作成支援は実費と弁護士報酬をあわせて20万円から75万円前後が目安です。公正証書遺言の作成では公証人手数料(遺産総額によって異なる)も別途かかり、遺産総額が1億円以下の場合に「遺言加算」として1万3,000円が上乗せされます。弁護士を介さず公正証書遺言のみを作成する場合は、公証人手数料と必要書類取得費用あわせて10万円から15万円前後となります。証人を公証役場で紹介してもらう場合は1人につき5,000円から1万円の謝礼が必要です。
費用補助制度も活用できます。法テラスの無料法律相談制度では、収入・資産が一定基準以下の方が弁護士・司法書士への法律相談を無料で最大3回受けることができます。法テラスの費用立替制度では、弁護士費用が払えない場合でも法テラスが費用を立て替え、分割で返済することが可能です。各弁護士会が独自の法律援助制度を設けている場合があるため、お住まいの地域の弁護士会へ問い合わせるとよいでしょう。多くの市区町村でも弁護士による無料法律相談会を月に数回程度開催しており、相談時間は限られますが(30分程度)、最初の相談窓口として活用できます。
遺言書が無効になるケースと防止策
遺言書が無効になる代表的な事由を把握しておくことで、デジタル遺言書を含むどの方式を選んでもリスクを抑えることができます。形式上の不備と、能力・意思に関する事由の2つに大別されます。
形式上の不備による無効としてまず挙げられるのが、日付の記載不備です。自筆証書遺言で最も多い無効事由で、「吉日」「○月吉日」などの曖昧な表記は有効な日付とは認められません。「令和○年○月○日」のように具体的な年月日を記載する必要があります。次に自書の不備があり、遺言書の全文(財産目録を除く)は遺言者が自書しなければなりません。ワープロで作成した本文部分や他人が代筆した部分は無効です。体が不自由で自書が難しい場合は、公正証書遺言を選択することが重要です。押印の欠如もよくある事由で、押印は遺言書の有効要件のひとつであり、実印でなくても認印でも拇印でも可ですが、まったく押印がない遺言書は無効になります。証人要件の不備にも注意が必要で、公正証書遺言や秘密証書遺言では証人の立会いが必要ですが、証人になれない人(相続人や受遺者、その配偶者・直系血族など)が証人になっていると遺言が無効になります。
能力・意思に関する無効事由としては、遺言能力の欠如と詐欺・脅迫による意思の瑕疵があります。遺言を作成した時点で遺言者が認知症などにより判断能力を欠いていた場合、遺言は無効となります。認知症と診断されていても軽度の場合は有効な場合もありますが、争いになることが多いため、心配な場合は医師の診断書を取得しておくことが推奨されます。詐欺や脅迫によって真意でない遺言を作成させられた場合、その遺言は取り消すことができます。
防止策として有効なのは、弁護士に事前チェックを依頼すること、自筆証書遺言の場合は法務局の保管制度を利用すること、最も無効リスクが低い公正証書遺言を選択すること、遺言書を書いた後に定期的に内容を見直すこと、認知症が心配な場合は判断能力がしっかりしているうちに作成することです。
自筆証書遺言書保管制度の活用方法
デジタル遺言(保管証書遺言)の施行を待たずとも、現在利用できる制度として自筆証書遺言書保管制度があります。この制度は2020年7月に開始されており、手書きの遺言書を法務局に保管できます。
法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言を預けることができ、保管所は遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所、本籍地を管轄する遺言書保管所、所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の3種類から選べます。
主なメリットは多岐にわたります。家庭裁判所での検認手続きが不要になること、遺言書の紛失・破棄・改ざんのリスクがないこと、遺言者の死後に相続人が遺言書の存在を照会できる(遺言書情報証明書の交付申請)こと、原本は遺言者死亡後50年間・画像データは150年間保管されることが大きな利点です。
申請は遺言者本人が直接法務局に出向く必要があり、代理人・郵送は認められていません。手数料は1件3,900円です。2026年2月からは、申請書類の電子メールによる事前チェックを38都道府県以上の遺言書保管所で利用できるようになり、利便性が向上しています。
エンディングノートとデジタル遺言書の違い
エンディングノートとは、自分が亡くなった後や判断能力を失った場合に備えて、家族や関係者への希望や情報を書き留めておくノートのことです。デジタル遺言書(保管証書遺言)と混同されがちですが、法的効力の面で根本的な違いがあります。
エンディングノートには法的効力がありません。たとえ「○○の財産を△△に渡してほしい」と書いてあっても、相続人が従う義務はなく、遺産分割は法律の規定に従って行われます。一方、適式に作成された遺言書には法的拘束力があり、遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。ただし、遺言書に書ける内容は法律で定められており、相続・遺贈に関する事項、認知や廃除に関する事項、遺言執行者の指定など、民法が定める特定の事項に限られます。
エンディングノートには、葬儀や埋葬についての希望、医療・介護についての意思、デジタル資産に関する情報、財産に関する情報、家族や友人へのメッセージ、ペットの世話についての希望などを自由に記載できます。両者は対立するものではなく、補完し合うものです。法的に確実に遺産を分割したい事項は遺言書で定め、葬儀の希望や医療についての意思、家族へのメッセージなどはエンディングノートに記すという使い分けが有効です。特に近年は「デジタル終活」として、スマートフォンやパソコン内のデジタルデータ、SNSアカウント、オンライン金融資産(ネット銀行・証券・仮想通貨など)の情報をエンディングノートにまとめておくことが重要視されています。
海外のデジタル遺言制度との比較
日本が2028年前後に施行予定の保管証書遺言(デジタル遺言)制度について、海外の状況と比較すると日本の特徴が見えてきます。
アメリカでは、2019年7月に米国統一法令委員会が「電子遺言書法」(Electronic Wills Act)を承認しました。これは各州が採用するかどうかを選択できる雛形法であり、各州での立法化が必要です。フロリダ州などでは、認定保管者が保管したデジタル遺言について有効性が認められています。一般的に2名以上の証人の前で電子署名を行うことでデジタル遺言が有効とされており、一部の州では生体認証による方式も認められています。カナダ・韓国・中国では、一定の条件のもとで電磁的記録を原本とする遺言の方式が認められています。各国で具体的な要件は異なりますが、デジタル遺言の法制化が進んでいる地域といえます。一方、イギリス・ドイツ・フランスでは、電磁的記録を原本とするデジタル遺言は原則として認められていません。イギリスでは、偽造・変造のリスクなどを理由として、デジタル遺言の法制化に慎重な姿勢をとっています。
日本の保管証書遺言制度は、法務局という公的機関が関与し、本人確認と口述確認を組み合わせた仕組みによってデジタル遺言の真正性を確保しようとするものです。欧米の先進事例を参考にしつつ、日本独自の形で慎重に制度化が進められている点が特徴です。
デジタル遺言書と弁護士確認に関するよくある疑問
デジタル遺言書の法的効力や弁護士による確認手順については、実務上いくつかの疑問が頻繁に寄せられます。代表的なものを整理しておきます。
パソコンで作成した遺言書は今すぐ使えるのかという疑問については、2026年6月時点でパソコンやスマートフォンで作成した電子データの遺言書は法的効力を持たない、というのが正確な回答です。電子署名付きPDFや動画録画による遺言も、現行法では遺言として認められていません。
スマートフォンで録画した動画は遺言として認められるのかという点も、現行法では認められません。民法が定める遺言の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)のいずれにも該当しないためです。
弁護士に確認を依頼する費用が払えない場合はどうすればよいのかという疑問については、法テラスの無料法律相談制度(収入要件あり、最大3回まで)、費用立替制度、市区町村の無料法律相談会の活用が現実的な選択肢になります。
保管証書遺言はいつから利用できるのかという疑問については、2026年4月3日に閣議決定された民法改正案に基づき、施行は公布から3年を超えない範囲内、おおむね2028年前後になる見込みです。
財産の特定はどの程度具体的に記載すべきかについては、不動産は登記簿謄本の記載通りに正確な所在地・地番・地目・地積を記載する必要があり、「自宅」「実家の土地」といった曖昧な表現では特定できず、後に争いの原因となります。預貯金も「○○銀行△△支店 口座番号XXXXXXXX」のように正確に記載することが重要です。
遺留分への配慮は必要かという点では、遺留分とは配偶者・子・父母などの一定の相続人が最低限主張できる相続の取り分であり、全財産を特定の人だけに遺言で渡そうとしても遺留分を持つ相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があるため、弁護士に依頼して遺留分に配慮した遺言内容のアドバイスを受けることが推奨されます。
まとめ:デジタル遺言書の法的効力と弁護士確認の手順
デジタル遺言書の法的効力と弁護士による確認手順について、ここまでの内容を整理します。デジタル遺言書は2026年6月時点でデジタルデータのままでは法的効力を持たず、利用するには現行の3つの遺言方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)のいずれかに沿って作成する必要があります。2026年4月3日に閣議決定された民法改正案では、デジタルデータでの遺言作成を可能にする「保管証書遺言」が創設され、2028年前後の施行が見込まれています。
遺言書を確実に有効なものとするためには、弁護士による事前確認が極めて有効です。形式不備による無効リスクの防止、遺言能力の確認、遺留分への配慮、相続トラブルの予防、遺言執行者の選定など、専門家の関与によってもたらされる安心は費用に十分見合うものです。弁護士への依頼は、選定と初回相談の予約、情報整理、文案作成、方式選択、作成と保管という5つのステップで進みます。費用面では法テラスや弁護士会の制度を活用することで負担を抑えることもできます。
遺言書は作成するだけでなく、家族構成や財産状況の変化に応じて定期的に見直すことが重要です。数年に一度、専門家とともに内容を確認し、必要に応じて更新することをお勧めします。デジタル遺言書の利用を検討している方は、まず弁護士や行政書士、司法書士などの専門家に相談し、現時点で最適な方式(公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言)を選択することが現実的です。保管証書遺言制度の施行後も、制度の詳細を確認した上で専門家のサポートを受けながら活用することで、安心して遺言を残すことができるでしょう。









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