介護施設の見学では、施設の雰囲気、清潔さ、スタッフの対応、食事、医療体制、費用、入退去条件などを多角的にチェックすることが重要です。介護施設見学のチェックポイントとして特に重視すべきは、実際にその施設で生活するという目線で確認することであり、パンフレットやウェブサイトだけではわからない情報を自分の目で確かめる必要があります。本記事では、介護施設見学時に活用できる確認リストや、施設側に聞くべき質問について詳しく解説しますので、入居先選びの参考にしてください。
介護施設や老人ホームへの入居を検討する際、見学は入居先を決める上で欠かせないプロセスです。見学を通じて得られるのは、書類だけでは把握できない入居者の様子やスタッフの対応といった生きた情報であり、入居後の生活をより具体的にイメージすることができます。「施設がきれいで快適そう」「スタッフが良い人そう」といった表面的なことだけでなく、居室や共用スペースの使い勝手、スタッフ同士の連携など、実際の生活が快適で安心できるものになりそうかどうかを具体的に確認することが大切です。

介護施設見学の事前準備とチェックポイント
介護施設の見学を効果的に行うためには、事前の準備が非常に重要です。見学前にパンフレットを取り寄せ、その老人ホームに関する予習をしておくことで、見学時間を有効に使うことができます。パンフレットを読んで気になる点や確認したい点をまとめておくと、見学時に慌てることがありません。
見学先の候補は3つ程度に絞ることをおすすめします。見学時間はじっくり行おうとすると1時間から1時間半程度は必要となるため、負担を抑えるためにもむやみに多くの施設を回るのではなく、ある程度絞り込んでから見学に臨みましょう。
見学に行く際は必ず事前予約を入れてください。急な訪問では、担当者不在や他の見学者対応で十分な説明が聞けない可能性があります。予約の際には、施設長がいる日を確認し、同席してもらえるようお願いしておくとよいでしょう。施設長は老人ホームで働くスタッフの管理者であり、老人ホーム全体の総責任者です。施設長の方針や人柄はホーム全体の雰囲気に影響するため、直接話を聞く機会は貴重です。
また、食事の試食を希望する場合は、予約時にその旨を伝えておきましょう。試食については事前に準備が必要なため、当日の突然の要望には対応できない場合があります。
見学のおすすめ時間帯と持ち物
介護施設の見学は昼食やレクリエーションの時間帯がおすすめです。入居者やスタッフの様子を見て入居後のイメージをすることができます。食事介助の様子を見たり、食事をとられている入居者の様子を見ると、入居者の方が個別の症状があったとしても、食事の時間をどのように過ごしているのか、楽しんでいるのか雰囲気を感じることができるでしょう。設備等を細かく見学するには、スタッフが多い時間帯である昼食前後が理想的です。夜間に見学をすることはできないため、夜間の体制については施設責任者の方に細かく質問をするようにしましょう。
見学時に持っていくとよいものとしては、資料請求したパンフレット、事前に作成したチェックリスト、メモをとるための筆記用具、許可を得て撮影する場合のカメラ、持ち込み家具の配置を検討するためのメジャーなどがあります。持ち込みたい家具がある方は見学前に寸法を測り、置くことが可能か実際に確認してみましょう。
施設の見学は、極力2人以上の複数人で行くことをおすすめします。大切な説明を聞き逃したり質問したいことを忘れてしまったりするおそれがあるためです。また、1人では気付けないポイントを確認することができ、それぞれ異なる視点で観察することで新たな気づきがあるかもしれません。
施設全体の雰囲気をチェックするポイント
介護施設見学において、施設全体の雰囲気が合っているかどうかは毎日を楽しく過ごすために非常に重要です。介護やレクリエーションを受けている入居者の表情、職員の言葉遣いや表情、態度を見ることで雰囲気を感じ取りましょう。
確認すべきポイントとしては、職員が挨拶をしてくれたか、身だしなみは清潔か、明るい表情で仕事をしているかなどが挙げられます。明るく丁寧に対応しているスタッフが多ければ、入居後も快適に過ごすことができる可能性が高いでしょう。レクリエーションや昼食時などであれば、スタッフと入居者がコミュニケーションを取っているか、信頼関係を築けているかなどを雰囲気から窺ってみることをおすすめします。入居者同士や入居者と職員とのやり取りを確認するチャンスです。
清潔さと衛生管理の確認リスト
建物や屋内、設備が清潔に保たれているかどうかで、おおよそそのホームの雰囲気はつかむことができます。居室やトイレ、浴室や共用スペースなど、見学では施設を一通り見ることができますので、随時この視点を忘れずにしましょう。
清掃や整理整頓がしっかりとできているかも重要なチェックポイントです。居室だけでなくトイレ、浴室、共用スペースまでチェックします。ここでのポイントは見た目だけでなく「臭い」です。水まわりやトイレに臭いがあるのは論外です。
介護施設や老人ホームに入館するとき、必ず確認した方がよいのが「臭い」です。人の鼻はすぐ慣れて感じなくなってしまうので、玄関に入ってすぐの「臭い」を確かめることは大切にしてください。施設見学や体験入居の時には臭いの質にも要注意です。布団やシーツを交換したり、掃除をしたり、入浴で清潔な状態にしたり、おむつなどの排泄の処置をきれいにしたりなど、その介護施設の総合力がこのにおいに現れると考えられます。清掃がこまめに行われている施設は、衛生管理がきちんとしており、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症への対策意識も高いことがわかります。
居室と共用スペースのチェックポイント
居室の見学時には、必要な設備が揃っているか、快適に過ごせるか、生活動線上に不自由はないかという点に注意して見学すると良いでしょう。介護が必要な方や持病をもっている方は、万が一のことを考えてナースコールが手元に届きやすい位置にあるのかも確認が必要です。
施設の安全性を確認するときのポイントは「高さ」と「角」です。居室内の机の高さ、ドアやベッドの形状は転倒したときに受けるダメージに影響します。共有スペースの手すりなど補助設備まで広い視野を持って確認することが大事です。車椅子での移動のしやすさや手すりの位置など、居室の動線も重要なポイントです。老人ホームや介護施設は高齢者が暮らしやすいように居室が設計されていますが、すべての入居者にとって必ずしも過ごしやすいとは限りません。
居室の広さに関する基準
居室の広さについては、施設の種類により最低面積が定められています。
| 施設種類 | 最低面積 | 畳数の目安 |
|---|---|---|
| 有料老人ホーム | 13平方メートル以上 | 約8.5畳 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 原則25平方メートル以上 | 約16畳 |
| 特別養護老人ホーム | 10.65平方メートル以上 | 約7畳 |
| グループホーム | 7.43平方メートル以上 | – |
部屋にトイレ、洗面所、浴室などがあると自立した生活を送るために役立ちますが、逆に設備が多すぎると居住スペースが狭くなる可能性もあります。最低限、部屋に欲しい設備はコール付きトイレです。また、居室が広すぎると移動に時間がかかり不便な場合があります。年齢とともに足腰が弱ると移動にかかる負担がさらに大きくなり、転倒のリスクも増します。広い居室はその分費用も高くなるため、身体的負担と金銭的負担を減らすためにも、快適に過ごせる適切な広さを選びましょう。
共用スペースの確認ポイント
見学時は居室の環境に目が行きがちですが、共有スペースの居心地や使い勝手を確認することも重要です。居室内もそうですが、多くの時間を過ごすことになるリビング等の共有スペースの広さや明るさ、室温や設備を確認しておくことで、入居後の生活イメージがしやすくなります。さらに、介護度が重くなった場合の対応として機械浴の有無やリハビリ(機能訓練)の方法など、設備の充実度の確認も行いましょう。
スタッフの対応と人員配置の確認リスト
日中・夜間の介護職員の人員配置や勤務体制について不安がある場合、見学時に聞いておくと安心です。施設における介護スタッフの人数の規定は3対1、つまり入居者3人に対し職員1人となっています。施設によっては2.5対1や2対1などスタッフの人数を多く配置しているところもありますので、確認しておくとよいでしょう。2.5対1などの職員体制の手厚い施設では、十分な介護サポートを受けることができます。
介護スタッフの勤続年数や離職率についてもチェックすると良いでしょう。勤続年数が長く離職率の低い施設では、人手が充分で運営体制が整っており、サポートが行き届きやすいというメリットがあります。また、同じスタッフが長期的に担当してくれるため、より良い関係性が築けます。
スタッフの勤続年数や離職状況について、見学時に資料を見せてもらうのがおすすめです。勤続年数が短いスタッフが多い場合は、サービスの質に不安があります。労働環境が悪く離職率が高いという可能性もあるでしょう。離職するスタッフが多い施設では、スタッフの入れ替わりが激しいため、スタッフと信頼関係を築くのが難しくなります。
夜間の人員配置についても確認が必要です。人員配置について、日中は1ユニットに1人、夜間は2ユニットに1人、看護師は日中のみ配置し夜間は電話対応という施設もあります。夜勤がある場合は夜勤の人員配置や頻度について直接質問することをおすすめします。見学は日中のため、夜勤の人員配置については見落としがちです。
食事に関するチェックポイントと質問事項
老人ホームの生活で最も楽しみなのが食事です。食事が合わなくて退去してしまう例もあるため、見学時にしっかり確認しておくことが大切です。
食事の試食は大抵のホームで受け付けていますので、ぜひお試しください。食事の内容もそのホームの考え方や工夫が表れているものです。施設によっては事前予約を入れることで食事の試食ができる場合もあります。実際に食事を味わうことで、食事の温度、味、触感など体験してみなければ分からないことを確認することが可能です。試食については希望すれば施設で出されている食事を試食できるところもあります。前もって準備が必要であるため、予約時に試食希望の旨を伝えましょう。
試食時の確認ポイント
食事は舌だけでなく目や鼻でも楽しむものです。味付けはもちろん、温かさ、食器や盛り付けもチェックして、五感で楽しめるかを確認しましょう。味はもちろん、綺麗に盛り付けられているか、飽きないようメニューが工夫されているか、冷めた料理を提供していないか、食事に関する説明は十分かなどを確認してください。
飲み込みが悪くなったときにはソフト食やゼリー食などを提供してくれるのか、治療食や制限食にどこまで対応してくれるのかなどもしっかり確認しておきましょう。本人や家族が希望する医療行為やリハビリの対応、食事形態や医療食、嫌いな食材への対応など、個別に相談に応じてくれるかを確認しましょう。また、治療食や軟食対応で別料金がかかるかどうかも合わせて確認するようにしましょう。
献立のバリエーションと食事環境
メニューの偏りや季節感が反映されているか、四季の旬の素材が使われているかなど、献立を工夫しているかをチェックしましょう。洋食、和食、中華、イベント食、四季折々の行事食など、食事のバリエーションの幅が広いかどうかを確認しましょう。食事のバリエーションが豊富ということは、マンネリ化の防止や食事を楽しむための工夫がされているということです。行事ごとに行事食を提供しているかどうかも確認しておくとよいでしょう。お正月のおせちや年越しそばなどの行事によっての特別食が提供されているか、また季節を感じられる食材を使用しているかどうかもポイントです。
食事をとる場所の環境や雰囲気も要チェックポイントの一つです。見学の際には、利用者仲間やスタッフと楽しく話をしながら食事をとることができるのか、利用者が食事中に笑顔でいるかなど、食事の環境や雰囲気についてしっかり確認しておきましょう。
医療・介護体制の確認リストと質問
入居する方が認知症であったり持病を抱えていたりする場合は特に、介護や医療体制の確認が必須です。特にその老人ホームでどこまでの医療行為が行えるか、24時間対応が可能なのかを聞いておくことは大切です。
老人ホームでは高度な医療行為が必要な場合、協力医療機関で治療をおこないます。病院名、診療科目、医療サービス内容、住所などを事前にチェックしておきましょう。ほかにも救急対応や施設への往診が可能か、入院が必要になった場合の施設側の対応なども見ておくと安心です。
日中・夜間の介護職員の人員配置や勤務体制について不安がある場合、見学時に聞いておくと安心です。人生の最期まで老人ホームでお願いしたいと思っている方は、看取り・夜間ケアに注目して見学をすると良いです。夜間に見学をすることが出来ないため、スタッフが多い時間帯に見学をして、施設責任者の方に細かく質問をするようにしましょう。
看取り対応の確認ポイント
全ての老人ホームが看取りに対応しているわけではないため、見学の際には終末期医療・看取り介護の実施について確認すると良いでしょう。看取りに対応している主な施設種別は、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホームなどですが、入居者の自立を目的とした老人保健施設や、サービス付き高齢者向け住宅でも看取り対応をしている場合があります。
厚生労働省の調査では、「ホームで亡くなりたい」という希望があれば受け入れるという住宅型有料老人ホームは全体の半数以上ありますが、実際に看取りを実施した住宅型有料老人ホームは約28%です。看取りに対応している施設を選ぶ際には、「納得できる看取り体制なのか」を確認することが大切です。看取りケアの方針や体制は施設によってさまざまです。施設の方針と本人や家族が理想とする最期が違うと、看取りの際に辛い思いをしたり後悔するかもしれません。
費用に関するチェックポイントと確認事項
パンフレットやホームページに書いてある内容を鵜呑みにせず、あらかじめ想定した費用感と相違がないか確認してください。特に月額利用料は今後毎月支払う費用なので、月額利用料に含まれない料金は何か、介護サービス費はいくらかかるのか、細かく確認しましょう。
入居金とは施設入居する際に初期費用として支払う費用のことで、入居一時金、保証金、前払金などとも呼ばれます。入居金には賃料や介護費用などの前払いとしての意味があり、月々の費用負担を軽減することができます。費用はホームによってさまざまで、入居一時金については0円から数千万円、月額費用は15万円から35万円と開きがあります。入居一時金は前払い家賃という位置づけで、数年分(想定入居期間)の家賃を最初にまとめて徴収することで、その分月額費用を安く抑えています。
月額費用の内訳と注意点
老人ホームでかかる費用には、入居一時金などの「前払金」、毎月支払う管理費などを含む「月額利用料」、「介護保険サービス利用料の自己負担分」、消耗品費などの「日常生活費」などがあります。パンフレットに書かれている施設の利用料には、医療費や日用品費、レクリエーション費用などは含まれていないことがほとんどです。介護サービスについても内容によっては追加費用が必要となる場合があります。
償却と返還に関する重要事項
月額費用の一部が入居金から支払われるので、月々の費用がいくらか安くなります。償却期間はそれぞれの老人ホームや介護施設によって異なりますが、大体5年から15年程度だと考えておいて差し支えありません。初期償却費が0円のホーム・施設は存在するものの、一般的には入居金の10%から30%程度がホーム側に取られてしまいます。
入居一時金を支払う場合は注意が必要です。償却前に退去する場合や、償却前に施設が倒産した場合の返金に関する取り決め内容は、重要事項説明書のなかでも最重要のチェックポイントと言えます。
施設種類別の費用について
公的施設は地方自治体などが運営しており、比較的費用が安いことが特徴です。一方、民間施設は民間企業・法人などが運営しており、費用は高くなりやすいものの、公的施設にはない設備やサービスを受けられるなどのメリットがあります。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の介護保険施設はいずれも入居一時金や敷金・保証金がかかりません。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の費用の相場は入居一時金が0円から100万円と施設によって幅広く、月額は15万円から30万円ほどです。
入居・退去条件の確認リスト
そもそも入居条件に該当していなければ、いくら気に入っても入居はできません。「大丈夫だろう」「大丈夫なはず」ではなく、念のため見学時に確認しておくとよいでしょう。退去条件を明記していない老人ホームもありますので、あわせて確認してください。入居後に予想外の退去を求められることがないよう、どのような場合に退去が必要になるのか、事前に確認しておくことが重要です。
グループホームの入居条件
グループホームは認知症のある方を対象としているので、入居するには医師から認知症の診断を受けている必要があります。また、地域密着型のサービスであるため、施設と同一の市区町村に住民票がなければ入居できません。グループホームの入居にあたっては「認知症」の診断が必要ですので、かかりつけ医に診断書を依頼してください。診断書は発行日から1ヵ月以内のものに限ります。
レクリエーション・イベントのチェックポイント
レクリエーションはより楽しく生活するための大事な要素で、可能ならば見学日を調整して様子を見学することも施設内での生活の質を確認できる良いチャンスです。レクリエーションとは「生活の中にゆとりと楽しみを創造していく多様な活動の総称」であり、普段の生活で感じたストレス解消や疲労回復のために行われます。
老人ホームのレクリエーションは、入居者の社会性向上と健康維持に効果的です。入居者間の交流を深め新しい友情を育み、身体活動により筋力や身体機能を維持し向上させます。また、頭を使うゲームで脳を活性化し、認知症予防に寄与します。
レクリエーションやイベントの企画内容を確認しましょう。可能ならば実施日と見学日を合わせて、参加者の表情や職員の取り組み姿勢なども同時にチェックできればいいですね。介護施設におけるレクリエーションは、季節感を感じられるものであることがポイントです。12月にはクリスマスや年末といった年内でも大きなイベントが続き、1月にはお正月など、季節にちなんだレクリエーションが企画されているかを確認しましょう。
周辺環境・立地・アクセスの確認ポイント
周辺環境では、安全面や便利さを重視します。特に自由に行動可能な自立した人の場合、「治安は良いか」「歩いていて危険な場所はないか」「買い物のできる場所があるか」などをチェックします。
また、線路沿いや大きな道路の近くは、音の敏感な人にとってストレスになるので注意が必要です。近くに自然を感じられるような公園や安心して歩ける散歩道があると毎日の散歩が楽しくなりますし、商店街などがあれば買い物をしたりお茶を楽しむこともできます。ただし、周辺が賑やかすぎる場所だと騒音が気になることもあるため注意が必要です。
確認すべき項目として、最寄り駅からホームまでの距離、駐車場の有無、送迎バスの有無、家族がアクセスしやすい場所にあるか、周辺に危険な場所はないか、近くに散歩できる場所はあるかなどがあります。家族が通いやすい立地かどうかも重要なポイントです。自宅や職場から離れていたり乗り換えが多かったりすると、面会の負担が大きくなってしまいます。交通の便や駐車場の有無もチェックしておきましょう。面会に公共交通機関を使用する場合は、徒歩圏内に駅やバス停があるか確認する必要があるでしょう。
施設の立地について、周辺の環境を含めて確認しておくと良いでしょう。騒音などはないか、通院や買い物に便利な場所かなど、入居される方やご家族のご希望によっても注目すべき点は異なります。立地については実際に足を運ばなければ見えてこない部分ですので、お時間が許せば施設の周辺を散策してみるのもいいかもしれません。施設に到着したら、周りを軽く見回してみます。駐車場との距離感や事故・自然災害のリスクを確認し、建物への入りやすさや生活動線を実際に歩いて調べます。
体験入居・ショートステイを活用した施設見学
体験入居とは実際に施設に入居して生活を送ることができるお試し体験のことで、有料老人ホームやグループホームなど多くの施設で実施されています。見学だけでは施設の雰囲気や1日の流れを把握することは困難なため、スタッフの雰囲気や入居者の過ごし方、設備など見学だけでは掴めない部分も肌で感じることができるのが、体験入居の最大のメリットです。
パンプレットやホームページからの情報だけではわからない「実際の雰囲気」や「サービスの内容」、「働いているスタッフの様子」などを実際に体験できることがメリットです。また、引っ越しをして慣れない環境で生活を送ることは入居する方にとって大きな負担になるため、体験入居を行うことで施設に少しでも慣れて不安やストレスを軽減できます。
ショートステイの活用方法
ショートステイとは「短期間」施設に入所して介護を受けられるサービスです。ご本人にとっても他のお仲間と交流できたり、さまざまなイベントに参加できたりと、日々に変化を与えてくれます。施設入居を検討している方にとっては良い体験になり、また家で介護している方にとっては体も心も休める時間がとれるメリットがあります。
ショートステイの主なメリットとしては、介護者の負担軽減があります。在宅介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、ショートステイを利用することで介護者は息抜きができます。また、施設入居体験として、将来的に施設への入居を考えている場合、施設での過ごし方や雰囲気を実際に体験でき、今後の施設選びの参考になります。利用者の気分転換としても、レクリエーションでのコミュニケーションや、自宅では受けることが難しいリハビリで気分転換につながります。
また、ショートステイを経験した方は施設で過ごすことに慣れているため、拒否感を持たずに入居を受け入れてくれる可能性が高くなります。ご家族も様々な事業者を利用する経験から老人ホームを見る目が養われ、入居後のミスマッチを回避することにもつながります。
ショートステイを利用する際の注意点
有料老人ホームのショートステイは基本的に「空き部屋利用」となり、ショートステイのためだけにお部屋を常に備えている施設はほとんどありません。人気があって常に満室状態の施設では、本入居の方を優先するため利用が難しい場合があります。ショートステイの連続利用日数は最長30日までとなっており、31日目からの利用料金は介護保険適用外で全額自己負担となります。
重要事項説明書のチェックポイント
老人ホームに入居する場合、施設側と入居契約を取り交わす前にしっかりと内容をチェックしておくべきなのが「重要事項説明書(略称:重説)」です。老人ホームの入居契約においては、利用者が契約内容をきちんと理解できるように、施設側による重要事項説明書の作成とその説明が法律により義務付けられています。
重要事項説明書には、設置者やホームの概要、各種サービスの内容や費用、職員体制や入居者の状況などの重要な事項が記載されています。書類様式は自治体や事業所によって異なることがありますが、項目名はほぼ共通なので、複数のホームとの比較検討ができます。
重要事項説明書で確認すべき項目
入居一時金を支払う場合は注意が必要です。償却前に退去する場合や、償却前に施設が倒産した場合の返金に関する取り決め内容は、重要事項説明書のなかでも最重要のチェックポイントと言えます。
前年度における退去者の状況を確認しておきましょう。利用者が退去するのは亡くなった場合に加えて、ほかの施設への転居や長期入院を理由とする場合も含まれています。生前の退去者がいる場合、重要事項説明書にはその退去理由も書かれているので、内容を確かめておきましょう。
老人ホームに入居している利用者の人数、性別、年齢、入居期間、要介護度などを確認できます。入居者の相談窓口の名称や対応時間帯などが記されています。入居中に起こった事故に備えての保険加入の有無、事故予防への取り組み状況なども書かれています。
従業員に関する事項もあります。実際に勤務するスタッフの経験年数や人数によって、施設がどれくらいのサポート体制をつくっているのか推測することができます。長く勤務する経験豊富なスタッフが多くいると、雰囲気の良い施設である可能性が高いでしょう。また夜勤をおこなう職員の人数から夜間の介護体制もわかります。
最初に施設名と記入年月日、記入者名と記入者の職名が書かれています。重要事項説明書は定期的に更新されます。日付が1年以内であるかを確認しましょう。
施設側は重要事項説明書を読み、内容を納得したうえで入居を決めたと判断します。このため、契約する前に記載内容をきちんと把握しておくことが大切です。契約前に重要事項説明書をしっかりチェックしてないと、入居後に必要なサービスを受けられなかったりトラブルにつながることもあります。
介護施設見学時に聞くべき質問一覧
介護施設の見学時には、チェックポイントの確認だけでなく、施設側に積極的に質問することが大切です。以下に、見学時に聞くべき質問をカテゴリ別に整理しました。
施設全般に関する質問
施設の設立年月日はいつか、施設長の経歴や方針はどのようなものか、入居者の平均年齢や男女比はどのくらいか、現在の入居率はどのくらいか、前年度の退去者数と退去理由は何かといった点を確認しましょう。
費用に関する質問
入居一時金はいくらか、月額費用の内訳を詳しく教えてほしい、介護保険サービス利用料の自己負担額はいくらか、追加でかかる費用には何があるか、入居一時金の償却期間と償却方法はどうなっているか、退去時の返還金はどのように計算されるかといった点を確認しましょう。
スタッフに関する質問
介護職員の人員配置はどのようになっているか、夜間の人員配置はどうか、スタッフの平均勤続年数はどのくらいか、離職率はどのくらいか、看護師は24時間常駐しているかといった点を確認しましょう。
医療に関する質問
協力医療機関はどこか、往診の頻度はどのくらいか、どのような医療行為に対応できるか、緊急時の対応方法はどうなっているか、看取りに対応しているかといった点を確認しましょう。
食事に関する質問
食事の試食はできるか、食事形態の変更(刻み食、ソフト食など)に対応しているか、治療食や制限食に対応しているか、食事の提供時間は何時か、行事食やイベント食はあるかといった点を確認しましょう。
生活に関する質問
入浴の頻度は週何回か、外出や外泊のルールはどうなっているか、面会時間は何時から何時までか、持ち込める家具や私物に制限はあるか、ペットの持ち込みは可能かといった点を確認しましょう。
入居・退去に関する質問
入居条件を詳しく教えてほしい、体験入居はできるか、退去を求められるのはどのような場合か、入院した場合部屋は確保されるかといった点を確認しましょう。
認知症対応施設(グループホーム)の見学ポイント
グループホームは認知症のある方を対象とした施設で、少人数のユニット(5人から9人)で共同生活を送ります。入居者同士や職員との交流を重視しており、家庭的な雰囲気の中で認知症ケアを受けることができます。
認知症の方は環境の変化に敏感なため、しっかりとケアをおこなっていく必要があります。見学の際は、認知症ケアをどのように取り組んでいるか、入居者本人に適したケアがおこなわれるかをポイントに確かめます。例えば、「入居者の話に寄り添う傾聴をおこなっているか」「徘徊防止策はしているか」「ほかの入居者や職員とのトラブルを防ぐ対策はあるか」などの視点からチェックしましょう。
グループホームは、日中は入居者3人に対して介護職員を1人以上配置するよう定められています。夜間は各ユニットに1人以上の介護職員を配置する必要がありますが、業務に支障がなければ3ユニットに2人でもよいことになっています。夜間の人員体制について、見学時に確認するようにしましょう。
ユニットケアを取り入れているグループホームは、入居者同士や職員との交流を重視している施設が多い傾向にあります。見学は、入居者同士や入居者と職員とのやり取りを確認するチャンスです。ご利用者が明るい表情をしていたり、スタッフが積極的にご利用者と会話していたりする様子が見られると、丁寧なサービスを受けられるグループホームかもしれません。
見学時のマナーと心構え
ホームは入居者の方達のプライベートな空間です。見学時はよそのお宅に訪問しているという心構えとマナーで行動しましょう。予約時間は守りましょう。予約をせずにいきなり訪れる、昼食の予約をしていないのに突然要求するなどの行為は施設に迷惑がかかります。見学者には「おじゃまをする」「見せていただく」といった謙虚さも必要でしょう。
写真を撮る際は、撮っても良いかを確認し、入居者の方の顔が入らないように配慮しましょう。プライバシーへの配慮は非常に重要です。
見学では現在入居している方々やそこで働いているスタッフ達の様子が確認でき、パンフレットではわからないホーム全体から受ける雰囲気を感じることができます。パンフレットやホームページだけで判断せず、見学や体験入居を通じて、居室の広さや設備の使い勝手などを実際に確認しましょう。
見学から契約までの流れと最終確認
見学が終わったら、複数の施設を比較検討します。チェックリストや見学時のメモを見返し、それぞれの施設のメリット・デメリットを整理しましょう。家族と一緒に話し合い、入居者本人の希望も確認しながら候補を絞り込みます。
見学だけでは分からない部分を確認するために、体験入居を検討しましょう。実際に数日間生活することで、施設の雰囲気やサービスの質をより深く理解することができます。
契約を結ぶ前に、重要事項説明書をしっかり読み込み、不明点は必ず確認してください。費用、入居条件、退去条件、サービス内容など、重要な事項について納得した上で契約に進みましょう。
介護施設の見学は、入居先を決める上で非常に重要なステップです。本記事で紹介したチェックポイントや質問リストを活用し、入居される方とご家族にとって最適な施設を見つけてください。見学時には、施設の雰囲気、清潔さ、スタッフの対応、食事、医療体制、費用、入退去条件など、多角的な視点から確認することが大切です。また、見学だけでなく体験入居やショートステイを活用することで、より実際の生活に近い形で施設を体験することができます。複数の施設を比較検討し、重要事項説明書をしっかり確認した上で、納得のいく選択をしてください。介護施設選びは、入居される方の残りの人生を左右する重要な決断です。焦らずじっくりと時間をかけて、最良の選択ができることを願っています。









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