家族信託の契約書作成費用は?司法書士に依頼した場合の相場を解説

当ページのリンクには広告が含まれています。

家族信託の契約書作成を司法書士に依頼した場合の費用相場は、50万円から100万円程度です。この費用には、コンサルティング費用、信託契約書作成費用、公正証書作成費用、信託登記費用などが含まれます。信託する財産の額や内容によっては100万円以上になることもありますが、家族信託は認知症による資産凍結を防ぎ、柔軟な財産管理を実現できる有効な制度として多くの方に選ばれています。

本記事では、家族信託の契約書作成における司法書士費用の詳細な内訳から、費用を抑える方法、専門家の選び方、手続きの流れまでを網羅的に解説します。高齢の親御さんの認知症対策や円滑な資産承継を検討されている方にとって、家族信託にかかる費用の全体像を把握し、適切な判断ができる情報をお届けします。

目次

家族信託とは認知症対策に有効な財産管理の仕組み

家族信託とは、資産を持つ方が信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を託す仕組みのことです。「家族の家族による家族のための信託」とも呼ばれ、高齢化社会が進む現代において、認知症対策や円滑な資産承継を実現するための手段として注目を集めています。

家族信託には主に3名の当事者が関わります。委託者は自分の財産を信託する人で、一般的には高齢の親がこの役割を担います。委託者は信託契約の内容を決定し、どの財産を誰に託すのか、どのような目的で管理してもらうのかを定めます。受託者は財産の管理を任される人で、子供や孫など委託者が信頼する家族がこの役割を担うことが多いです。受益者は家族信託によって利益を得る人で、認知症対策の信託では多くの場合、委託者と受益者が同一人物となります。この形は「自益信託」と呼ばれ、所有権のみを受託者へ移すことになり、信託財産の実質的な所有者は受益者となるため贈与税などは課税されません。

家族信託の最大のメリットは認知症による資産凍結の回避

家族信託の最大のメリットは、認知症による資産凍結を回避できることです。判断能力が低下する前に契約を済ませておくことで、将来認知症になった場合でも、信託された財産については凍結される事態を防ぐことができます。受託者が契約内容に基づき、必要な時に預金を引き出したり、不動産を売却したりと、計画的に財産管理を継続することが可能になります。

また、家族信託では柔軟な財産管理と積極的な資産運用が可能です。成年後見制度は本人の財産の維持を目的としており財産の積極的な運用はできませんが、家族信託の場合は株式投資や不動産活用などの積極的な投資・資産運用も可能で、その利益を受益者が得ることができます。

さらに、家庭裁判所の関与なしで自由度の高い財産管理ができることも大きなメリットです。家族信託なら家庭裁判所の関与なしで受託者を選ぶことができ、家族間で信託契約により財産を管理できます。加えて、信託された財産には倒産隔離機能があり、委託者や受託者の個人的な財産とは法的に切り離された「独立した財産」として扱われます。万が一、委託者や受託者が個人的に多額の借金を負ったり事業が倒産したりしても、信託した財産が差し押さえられることはありません。

家族信託を検討する際に知っておくべきデメリット

一方で、家族信託にはいくつかのデメリットも存在します。まず、家族信託には身上監護権がありません。医療や介護に関する契約を締結する権限は含まれていないため、各種医療・介護サービスとの契約が必要となる場合は成年後見制度の活用を検討する必要があります。

また、家族信託そのものには節税効果がないことも理解しておくべきポイントです。認知症や財産承継の対策として家族信託にしたら結果的に節税になったという副産物的な効果があるに過ぎません。さらに、家族信託で収益不動産などを運用する場合は「他の事業との損益通算ができない」という税務デメリットがあります。

受託者の負担と長期拘束も考慮すべき点です。信託契約が開始すると受託者は契約内容に従って財産管理を行う必要があり、契約期間中は何十年もの間拘束されることがあります。受託者は契約期間中、毎年一度、信託契約に係る帳簿をはじめとする書類を作成し、その内容を受益者に対して報告する義務も発生します。

そして、最も重要な点として、判断能力喪失後は契約できないということがあります。家族信託は認知症に備えておく制度ですが、意思能力・判断能力がなくなった後では信託契約を締結することができません。認知症の発症リスクは65歳から上昇するため、早めの検討が重要です。

家族信託の費用相場は50万円から100万円程度

家族信託にかかる費用は、専門家への報酬実費の2種類に大きく分けられます。一般的な家庭の家族信託にかかる費用の相場は50万円から100万円程度であり、信託する財産や依頼先によっては100万円以上必要になることもあります。ここでは、費用の内訳を詳しく解説します。

コンサルティング費用は信託財産額の0.8%から1.1%が相場

コンサルティング費用とは、司法書士や弁護士などの専門家に家族信託のスキーム設計や信託契約書の作成などを依頼する費用です。この費用が家族信託の費用の中で最も大きな割合を占めます。相場は信託財産の評価額の0.8%から1.1%程度で、最低料金として30万円から50万円と設定されていることが多いです。

具体的な費用の目安として、信託財産が5,000万円以下の場合は50万円程度、5,000万円超から1億円以下の場合は信託財産の1%程度、1億円超から3億円以下の場合は信託財産の0.5%程度、3億円超から5億円以下の場合は信託財産の0.3%程度となっています。たとえば、信託財産が3,000万円の場合、コンサルティング費用は33万円程度が目安となります。

信託契約書作成費用は11万円から16.5万円程度

信託契約書の作成費用は、専門家によって異なりますが、1契約書あたり11万円から16.5万円としているところが多いです。ただし、専門家によってはコンサルティング報酬に契約書作成報酬を含めて計算しているところもあるため、依頼前に費用の内訳を確認することが重要です。

公正証書作成費用は公証役場手数料と代行費用の合計

家族信託の契約書を公正証書で作成する場合、公証役場への手数料と専門家への代行費用が発生します。公証役場の手数料は信託財産の額に応じて変動します。

財産額公証役場手数料
100万円以下5,000円
100万円超200万円以下7,000円
200万円超500万円以下11,000円
500万円超1,000万円以下17,000円
1,000万円超3,000万円以下23,000円
3,000万円超5,000万円以下29,000円
5,000万円超1億円以下43,000円
1億円超3億円以下43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円
3億円超10億円以下95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円

公正証書化の代行費用は専門家によって様々ですが、10万円から15万円程度かかるケースが多いです。

不動産を信託する場合の信託登記費用

不動産を信託財産とする場合は、信託登記が必要になります。信託登記には「登録免許税」と「司法書士報酬」の2種類の費用がかかります。

登録免許税は、土地の場合は固定資産税評価額の0.3%、建物の場合は固定資産税評価額の0.4%です。なお、土地の0.3%は2026年3月31日までの軽減措置となっています。たとえば土地2,500万円、建物1,500万円の不動産の場合、土地が2,500万円×0.3%=75,000円、建物が1,500万円×0.4%=60,000円で、合計135,000円となります。

司法書士に登記手続きを依頼した場合の報酬は、8万円から15万円程度が相場です。不動産の評価額や物件数によって増減します。家族信託での所有権移転登記では不動産取得税はかかりません。これは信託財産として管理するために形式的に受託者へと所有権を移すものであり、実質的な権利は移転していないためです。

その他にかかる費用

その他にかかる費用として、印紙税は契約書1件につき200円、信託口口座の開設費用は金融機関によって異なりますが5万円から10万円程度、資料収集費用・郵送費は1万円程度です。

信託財産額別の具体的な費用例

信託財産が合計3,000万円の場合の費用例は以下のとおりです。

費用項目金額
コンサルティング費用33万円
信託契約書作成費用(専門家報酬)11万円
公正証書作成費用(公証役場手数料)約3万円
信託登記費用(登録免許税)約15万円
信託登記費用(司法書士手数料)11万円
その他費用約2万円
合計約75万円

信託財産が合計1億円の場合は、コンサルティング費用が約100万円、信託契約書作成費用が15万円、公正証書作成費用が約5万円、信託登記費用(登録免許税)が約35万円、信託登記費用(司法書士手数料)が15万円、その他費用が約3万円で、合計約173万円となります。

家族信託の契約書作成を司法書士に依頼するメリット

家族信託の相談・依頼先としては司法書士、弁護士、行政書士、税理士などの専門家が考えられますが、司法書士が最も多く選ばれています。金融機関での信託口座開設件数では全体の7割から8割を司法書士が占めているという統計もあります。

ワンストップでの対応が可能な点が大きな強み

家族信託では信託財産の中に不動産が含まれる場合、信託登記が必要です。登記申請を代行できる専門家は司法書士と弁護士のみですが、信託登記は手続きが複雑なこともあり、対応していない弁護士も多いのが実情です。

司法書士は普段から相続や成年後見など家族信託と関連性の高い業務を行っていることに加え、信託の登記もワンストップで依頼できます。そのため、家族信託の提案から信託登記までを一貫して任せたい場合には司法書士に依頼するのが効率的です。

費用面でのメリットと中立的な立場での支援

弁護士に比べ、司法書士の報酬は一般的に低く設定されていることが多いです。家族信託は比較的高額な費用がかかる手続きであるため、費用を抑えたい場合には司法書士への依頼が選択肢となります。

また、弁護士と異なり、司法書士は家族間の意見を調整し、中立の立場で家族信託の設計ができます。そのため、家族の思いを重視した信託契約書の作成をサポートできます。ただし、司法書士の場合は弁護士とは異なり法律上の紛争解決の交渉はできないため、家族や親族間でトラブルが発生しそうなケースの場合は対応が難しくなる可能性があります。また、対象額が140万円を超える調停・裁判手続きの代理を行えないという制限もあります。

弁護士との比較で見る専門家の選び方

弁護士には法律業務において全ての権限が与えられており、司法書士ができない「対象額140万円以上の民事事件・刑事事件手続きの代理」も可能です。家族信託の法律相談や信託契約書の作成能力という点では弁護士の方が望ましいという見解もあります。最適な信託契約書を作成するためには将来の紛争を想定しこれを回避できる条項案を作成することが重要となるからです。また、弁護士は法律上の紛争処理の専門家でもあるため、信託契約成立後に紛争が起きた場合にも適切に処理してもらえます。

一方で、弁護士に家族信託の相談をする場合の問題点として、家族信託を専門にしている弁護士が少ないこと、他の士業に比べ報酬が高額になる傾向があることが挙げられます。多くの弁護士は登記業務を行っておらず、実際には弁護士は登記を自ら行わずに知り合いの司法書士を紹介するか外注していることが多いです。

状況別の専門家の選び方

不動産を含む家族信託の場合やワンストップで依頼したい場合は司法書士がおすすめです。一方、相続トラブルが予想される場合や訴訟リスクがある場合は弁護士がおすすめです。

家族信託に強い専門家を選ぶポイント

家族信託はまだ新しい制度であるため、実績のある専門家に相談することが非常に重要です。専門家を選ぶ際には、家族信託の実績が30件以上あること、家族信託専門士などの資格を保有していること、業務範囲が明確であること、税理士など他の専門家とのネットワークがあること、家族信託以外の選択肢も提案できることなどを確認しましょう。

家族信託の手続きの流れと必要期間

家族信託の手続きは一般的に1か月半から3か月程度かかります。ローン付き不動産を信託財産とする場合は審査に時間がかかるため、3か月から4か月は見ておく必要があります。

専門家への相談から信託スキームの設計まで

まず司法書士などの専門家に相談し、家族信託が自分のケースに適しているかどうかを確認します。この段階で信託の目的や信託財産の範囲、受託者・受益者の選定などについて検討します。相談時には委託者の財産構成がわかる資料として、不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書、金融資産一覧のメモ、預金通帳・有価証券明細・保険証券のコピーなどを準備しておくとスムーズです。

専門家と相談しながら具体的な信託スキームを設計する段階では、信託の目的(認知症対策、資産承継など)、委託者・受託者・受益者の選定、信託財産の範囲と種類、信託期間、受益者連続の有無、信託終了時の残余財産の帰属先などを決定します。

信託契約書の作成と公正証書化の手続き

設計したスキームに基づいて信託契約書を作成します。信託契約書には信託の目的、信託財産の内容、受託者の権限と義務、受益者の権利、信託の終了事由などを詳細に記載します。

信託契約書は公正証書で作成することが推奨されています。公正証書で作成すると契約の証明力が高まり、家族間のトラブルを防止できます。また、原本は公証役場で保管されるので契約書紛失のリスクを予防することができます。公証人が関与して本人確認・意思確認がしっかりと行われた信託契約書を作成するため、契約書作成時に本人の意思判断力があったことの証明にもなります。さらに、公正証書で家族信託契約を作成すると信託口口座を開設できるようになります。

公正証書を作成する場合の手続きは、まず公証役場に予約を入れ、信託契約書の内容を事前に伝えて必要な書類を確認します。次に公証人と打ち合わせを行い、契約内容を確認して法的アドバイスを受けて修正対応をします。最後に公証人と2名の証人の前で署名捺印を行うことで公正証書の作成手続きは完了です。

信託登記の申請手続き

不動産を信託財産とする場合は信託登記を申請します。信託登記は所有権移転登記と信託登記の2種類を同時に申請します。信託登記に必要な書類は、登記申請書、家族信託契約書(公正証書)、信託目録に記録すべき情報、委託者の権利証(登記済証または登記識別情報)、委託者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)、委託者の実印、受託者の住民票、受託者の認印、委託者と受託者の本人確認資料(運転免許証など)、固定資産税評価証明書です。

信託口口座の開設と金融機関の対応状況

金銭信託の場合には金融機関で信託財産専用の口座(信託口口座)を開設し、現金を移し替える必要があります。信託契約をしても受託者は委託者の口座を管理できるわけではなく、受託者名義の管理用口座に信託契約で定めた金銭相当額を委託者が送金することで金銭の管理が可能になります。

ただし、信託口口座を開設できる金融機関は限られています。ゆうちょ銀行では家族信託のための信託口口座を開設できず、メガバンクなど大手都市銀行も現時点ではほとんど対応していないのが実情です。主に信託銀行や一部の地方銀行・信用金庫でしか信託口口座の取り扱いがない状況で、全国で信託口口座を開設できる金融機関は全体の1割程度しかないという声もあります。

信託口口座の開設条件としてよく見受けられるものには、信託契約書は司法書士・弁護士などの専門家が作成したものであること、信託契約書は公正証書であること、一定額以上の金銭(例えば3,000万円以上)を信託すること、自益信託であること、委託者の推定相続人全員の同意があることなどがあります。金融機関によっては開設までに1か月以上かかるケースもあり、開設にあたって5万円から10万円程度の手数料が発生する場合もあります。

信託口口座を開設できない場合の代替手段として、受託者名義の普通口座を家族信託専用の口座として使う「信託専用口座」という方法もあります。信託口口座と異なり開設に特殊な手続きをする必要がなく、手数料や年会費もかかりません。ただし、倒産隔離機能は有していないため、受託者の死亡や破産、差し押さえの影響を受けるリスクがあります。

家族信託に必要な書類一覧

家族信託の手続きを進める上で、様々な書類が必要となります。必要書類の取得にかかる費用は、トータルで5,000円から10,000円程度です。

専門家への依頼時に必要な書類

専門家に依頼する際には、依頼者の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)、本人(委託者)の財産構成がわかる資料、不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書、金融資産一覧のメモ、預金通帳・有価証券明細・保険証券のコピー、戸籍謄本、住民票が一般的に必要とされます。

公正証書作成時と信託登記に必要な書類

公正証書作成時には、本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)または印鑑証明書と実印、認印、登記事項証明書(不動産がある場合)、固定資産評価証明書(不動産がある場合)、委託者・受託者・受益者の戸籍謄本・住民票が必要です。

信託登記には、家族信託契約書(公正証書)、委託者の権利証(登記済証または登記識別情報)、委託者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)、委託者の実印、受託者の住民票、受託者の認印、委託者と受託者の本人確認資料、固定資産税評価証明書が必要です。

書類取得にかかる費用の目安

各書類の取得費用は、印鑑証明書が1通450円程度(オンライン請求で郵送410円、オンライン請求で窓口交付390円)、登記事項証明書が窓口600円程度(オンライン請求で郵送500円、オンライン請求で窓口交付480円)、戸籍謄本が1通450円、住民票が1通300円程度です。

家族信託と成年後見制度の違いを比較

認知症対策として家族信託と並んで検討されることが多い成年後見制度との違いを理解しておくことは重要です。

制度の基本的な違い

成年後見制度は認知症等によって事理弁識能力がなくなった後に利用される制度であるのに対し、家族信託は認知症になる前に自身で契約しておく仕組みです。成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類に分けられます。法定後見制度はすでに認知症などで判断能力が不十分な人が利用する制度で、任意後見制度は現時点では判断能力がある人が将来のために任意後見人をあらかじめ選んでおく制度です。

財産管理の自由度と身上監護の違い

家族信託は家族で契約内容を自由に決めることができる柔軟な制度です。本人のする契約内容に基づいて開始されるため比較的自由度が高いです。一方、後見制度の場合は本人が生活する上で必要度の低い財産の処分や運用はできません。成年後見制度は「財産を増やす」のではなく「財産が不当に減らないようにする」ことが重視されます。

身上監護については、任意後見を含む後見制度は対応可能です。後見人は本人の意思を尊重しながら医療や介護に関する決定、生活環境の整備などを行うことができます。一方、家族信託は原則として身上監護に対応できません。家族信託は主に財産管理に特化した制度であるため、医療や介護に関する契約行為などは含まれません。

費用とランニングコストの比較

家族信託は制度開始時に50万円から100万円程度の費用はかかるものの、ランニングコストはほとんどかかりません。一方、成年後見制度では手続き時に1万円弱の費用と、月額数万円のランニングコストがかかります。専門家が後見人となる場合、月額2万円から6万円程度の報酬が発生し、これが被後見人が亡くなるまで続きます。

期間と終了についての違い

家族信託は一律に期間が定められているわけではなく、契約内容によっては財産管理が長期に渡り世代をまたぐこともあります。成年後見人は成年被後見人が亡くなると成年後見が終了するため世代をまたぐことはできません。成年後見制度の問題点として、一度始めたら成年後見をやめることは難しいということがあります。成年後見は被後見人が死亡するか症状が完治するまで続きます。

「利益目的やそのほか柔軟に財産を扱いたい」場合は家族信託、「介護や治療関係、第三者からの悪意からも保護したい」場合は成年後見制度が原則としておすすめです。財産管理だけでなく医療や介護面でのサポートも必要と考える場合は成年後見制度の利用を検討するのが適切でしょう。ただし、家族信託と後見制度を組み合わせて利用することで両方の利点を活かすこともできます。

家族信託の費用を安く抑える方法

家族信託の費用を抑えるためのいくつかの方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。

自分で手続きする場合のリスク

家族信託の費用を抑える方法の一つとして、自分で手続きを行うという選択肢があります。自分でやった場合と専門家に依頼したときの費用には大きな違いがあり、自分でやると専門家への報酬が不要となり初期費用を抑えることができます。

自分で手続きする場合にかかる主な費用は、印鑑証明書が1通450円程度、登記事項証明書が600円程度、登録免許税が土地は固定資産税評価額×0.3%・建物は固定資産税評価額×0.4%、公正証書作成手数料が信託財産額によって変動(数万円程度)です。信託契約書を自分で作成する場合は印刷代などを除けば費用はかかりません。

しかし、一般の方が自分で信託を組成することはおすすめできません。一般の方が組成した信託は法的な不備があるケースや予期せぬ課税が発生するケースが多く見られるからです。法律や税務の専門知識が必要となるため、適切な契約書の作成や手続きの実行に多大な時間と労力がかかるほか、見落としや不備があった場合のリスクも高くなります。

また、多くの金融機関は個人が作成した信託契約書に対してはその有効性や条項の不備を厳しく懸念し、口座開設を拒否するケースがほとんどです。銀行側は弁護士や司法書士といった専門家が関与し法的リスクを排除した契約書であることを事実上の審査基準としているのが実情です。

公正証書を作成しない方法の注意点

信託契約書は公正証書にしなくても家族信託は有効に成立します。そのため信託契約書を公正証書にせず私文書のままにしておけば公正証書の作成費用は抑えられます。

ただし、信託財産に不動産が含まれる場合や多額の預金がある場合には公正証書を作成しないという方法はおすすめできません。公正証書を作成していないと登記手続きや信託口口座の開設ができなくなる可能性もあります。

信託財産を最小限にする方法

信託財産を最小限にすることでも家族信託にかかる費用を抑えることが可能です。多くの場合、専門家報酬は信託財産の大きさに比例して大きくなります。信託財産が高額になるほど費用の負担も大きくなります。また、土地や建物などを信託財産とする場合は登録免許税や登記代行費用などが必要になります。本当に信託が必要な財産だけを選定しそれ以外の財産は信託の対象外とすることで費用を抑えることができます。

複数の専門家から見積もりを取ることの重要性

家族信託の費用は専門家によって異なります。複数の専門家から見積もりを取り、費用と内容を比較検討することで適正な価格で依頼することができます。ただし、費用の安さだけで専門家を選ぶことは避けるべきです。家族信託の実績や専門性、対応の丁寧さなども重要な判断基準となります。

コスト最優先で自力で頑張れる自信がある人は自分で手続きにチャレンジすることも可能ですが、確実性・安心感を重視したい人は専門家に依頼することがおすすめです。

家族信託の失敗例とトラブル事例から学ぶ注意点

家族信託は有効な制度ですが、適切に運用しないと様々な失敗やトラブルが発生することがあります。ここでは、よくある失敗例とその対策について解説します。

家族・親族間のトラブルを防ぐために

よくある失敗例の一つは、家族信託によって親族の仲が悪くなってしまうケースです。原因としては、契約の当事者でない人との話し合いを省いたまま家族信託を進めてしまったことが挙げられます。「親は長男ばかりを信頼している」「相談もされずに勝手に信託契約が結ばれていた」といった不満がきっかけで、兄弟姉妹間の関係が悪化するケースがあります。

対策としては、家族信託を検討する段階から当事者だけでなく推定相続人など関係する親族にも説明し、理解を得ておくことが重要です。

認知症発症後の契約無効リスク

委託者が認知症を発症し、家族信託契約が締結できなかったという失敗例もあります。家族信託は認知症に備えておく制度ですが、委託者の判断能力が十分でなければ契約の締結ができません。認知症の発症リスクは65歳から上昇するため、65歳を目安に家族信託を検討することが推奨されます。早めに専門家に相談し、必要であれば速やかに契約を締結することが重要です。

受託者による不正と損益通算ができない問題

受託者が受益者の利益を無視して信託財産を自分のために流用してしまうケースがあります。対策としては、信託監督人を設置したり定期的に帳簿を確認する仕組みを契約に盛り込んだりすることが有効です。

また、信託不動産における失敗として、赤字と利益を合算する「損益通算」ができないことに家族信託が始まってから気づくケースがあります。家族信託によって信託した不動産に赤字が発生したとしても損益通算の対象にはならないため、税負担を軽くすることができなくなってしまいます。対策としては、家族信託を検討する段階で税理士などの専門家に税務上の影響を確認しておくことが重要です。

遺留分トラブルと信託できない財産の問題

家族信託により遺産を多く受け取った人物は、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。家族信託の受益権が遺留分侵害額請求の対象となるかどうかは明確な最高裁判例がないためグレーゾーンとされています。対策としては、遺留分に配慮した信託スキームを設計するか、遺留分侵害が起こらないよう他の財産で調整するなどの対策が必要です。

家族信託は万能ではなく信託財産に組み込めないものがあります。農地や年金受給権は信託財産に組み込めません。農地を家族信託する場合には農地法に即した手続きが必要となりますが、ほとんど認められた事例がありません。対策としては、信託できない財産があることを理解した上で適切なスキームを設計することが重要です。

契約書の不備による深刻な事態

十分な知識や検討に基づいて信託契約書を作成しないと、契約条項が互いに矛盾している、トラブルの処理方法が不明確だったために紛争が生じるなど、深刻な事態に発展しかねません。ひな形を参考にすることは問題ないのですが、そのままの形で「名前」や「信託財産」の部分だけを変更し契約書を作成することは大変危険です。対策としては、専門家に依頼して個別の事情に応じた契約書を作成してもらうことが重要です。

後悔しないためのポイント

家族信託の仕組みをしっかり理解し、事前にきちんと対策をすれば、失敗や後悔は避けられる可能性が高いです。特に、失敗やトラブルが発生しやすいのは自分で信託契約書を作成した場合や実務経験の少ない専門家に依頼した場合です。実際に家族信託を利用した方のうち86.4%が「実施して良かった」と回答しているという調査結果もあり、適切に運用すれば家族信託は非常に有効な制度です。

家族信託の契約書作成と司法書士費用に関するよくある疑問

家族信託を検討する際に多くの方が抱える疑問について、ここで詳しく解説します。

家族信託の契約書は自分で作成できるのかという疑問については、法律上は可能ですが専門家への依頼が強く推奨されます。自分で作成した契約書は法的な不備があるケースや予期せぬ課税が発生するケースが多く、金融機関での信託口口座開設を拒否されることがほとんどです。

司法書士と弁護士のどちらに依頼すべきかという疑問については、不動産を含む家族信託で費用を抑えたい場合は司法書士、相続トラブルが予想される場合や訴訟リスクがある場合は弁護士がおすすめです。

家族信託の費用は分割払いできるのかという疑問については、専門家によって対応が異なりますが、分割払いに対応している事務所もあります。契約前に支払い方法について確認しておくとよいでしょう。

家族信託の契約後に内容を変更できるのかという疑問については、信託契約書に変更に関する条項を設けておけば、一定の範囲で変更が可能です。ただし、変更には関係者の同意が必要な場合があり、また変更内容によっては新たに公正証書を作成する必要があることもあります。

まとめ

家族信託の契約書作成を司法書士に依頼した場合の費用相場は50万円から100万円程度であり、信託財産の額や内容によって変動します。主な費用の内訳は、コンサルティング費用(信託財産の0.8%から1.1%程度、最低30万円から50万円)、信託契約書作成費用(11万円から16.5万円程度)、公正証書作成費用(10万円から15万円程度)、信託登記費用(登録免許税+司法書士報酬で20万円から30万円程度)などです。

家族信託の依頼先としては司法書士が最も選ばれており、不動産登記を含むワンストップでの対応が可能なこと、弁護士に比べて費用が抑えられる傾向があること、中立的な立場で家族の思いを重視した支援ができることなどが理由として挙げられます。ただし、相続トラブルが予想される場合や訴訟リスクがある場合は弁護士への依頼も検討すべきです。

家族信託はまだ新しい制度であるため、実績のある専門家に相談することが重要です。家族信託の実績が30件以上あること、専門資格を保有していること、他の専門家とのネットワークがあることなどを確認しましょう。

そして最も重要なのは、判断能力があるうちに契約を締結する必要があるということです。認知症を発症してからでは契約できないため、認知症の発症リスクが上昇する65歳を目安に早めの検討が重要です。家族信託を成功させるためには当事者だけでなく推定相続人など関係する親族にも説明し理解を得ておくことが大切です。家族間の信頼関係を維持しながら円滑な財産管理・承継を実現することが家族信託の本来の目的であり、適切に運用すれば委託者本人の意向に沿った柔軟な財産管理が可能になります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次