別居の子も未支給年金を請求できる?親の死後の受給資格と手続き

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親の死後の手続きで年金の書類を確認する女性

親が亡くなったあと、別々に暮らしていた子でも、未支給年金を請求できる場合があります。判断の分かれ目は同居かどうかではなく、亡くなった親と「生計を同じくしていたか」です。住民票の住所が違っていても、仕送りや費用の負担、日々の世話といった実態を示せれば、子には受給資格が認められる余地があります。

ただし、配偶者が生計を同じくしていた場合は、配偶者が先の順位になります。住民票が別の子は、生計同一関係に関する申立書と第三者の証明も用意しなければなりません。請求の時効は5年です。

この記事では、請求できる人の順位、同居していない子が書類で示すべきこと、金額の考え方、きょうだいがいる場合の扱い、口座凍結の注意点、税金、請求から振り込みまでの期間を順に説明します。親の葬儀や各種の手続きで慌ただしい時期でも、年金の届出と請求の期限だけは先に押さえておいてください。

自宅の椅子でお茶を飲みながら一息つく女性
目次

同居していない子の受給資格は「生計同一」で決まる

結論から言うと、別居している子が未支給年金を受け取れるかどうかは、住民票の住所ではなく生計同一関係があったかどうかで決まります。生計同一関係とは、亡くなった方と生計を同じくしていた間柄のことです。

同居していたことは、生計同一と認められやすい事情のひとつにすぎません。別居していたというだけで、請求の資格が消えるわけではありません。

一方で、別居の場合は住民票を見ただけでは生計同一かどうかを判断できません。だから追加の書類が求められます。同居していない子の手続きでいちばんつまずきやすいのは、この書類の部分です。

日本年金機構の案内でも、未支給年金などの請求には生計同一関係を確認できる書類が必要とされています。住民票が同じであれば、原則として生計同一関係があるものとして扱われます。住所が異なる場合に、第三者の証明書などの書類が必要になるという整理です。

未支給年金は亡くなった月分までの「受け取り損ねた年金」

未支給年金とは、年金を受け取る権利をもつ人が亡くなったときに、まだ受け取っていなかった年金のことです。公的年金は、受給権者が亡くなるとその時点で受給の権利がなくなります。ところが年金は後払いの仕組みなので、亡くなった時点で、本来受け取れたはずなのに支払われていない分が残ることがあります。

対象になるのは、亡くなった月の分までです。この分は、生計を同じくしていた遺族が、自分自身の請求として受け取ります。

ここで押さえておきたいのが、請求は「自己の名で」行うという点です。亡くなった親の名義で手続きをするのではなく、請求した遺族本人の権利として受け取ります。遺産分割の対象になる相続財産とは別のお金です。受け取れる人の範囲と順位も法律で決まっていて、誰でも自由に受け取れるわけではありません。

請求できる遺族は7つの順位で決まり、子は2番目

未支給年金を請求できる遺族の7つの順位を示した図

未支給年金を請求できるのは、年金を受けていた方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた遺族です。順位は次のとおりです。

順位請求できる人
1配偶者
2子
3父母
4孫
5祖父母
6兄弟姉妹
71から6以外の三親等以内の親族

先の順位の人がいる場合、後の順位の人は請求できません。亡くなった親にもう一方の親、つまり配偶者がいて、その配偶者が生計を同じくしていたなら、請求できるのは配偶者です。

配偶者がすでに亡くなっている場合や、配偶者はいても生計を同じくしていなかった場合に、第二順位の子へ権利が回ってきます。子が複数いるときは、同じ順位の子が複数いることになり、代表して1人が請求するのが一般的です。

別居の子が生計同一を示すには、援助の回数・金額・内容を書く

別居の子が生計同一を示す材料を整理した図

別の住所で暮らしていた子が生計同一と認められるには、経済的な援助や日常的な行き来があったことを、具体的に示す必要があります。申立書には、経済的な援助の回数、金額、内容を書き、第三者による証明を付けます。実際には同居していたのに住民票だけ別だった場合も、同じ形で整理します。

裏付けになる事実として、たとえば次のようなものがあります。親へ定期的に生活費や療養費を送金していたこと。親の入院費や施設の費用を子が負担していたこと。親の自宅へ通って身の回りの世話をしていたこと。公共料金や家賃の支払いを子が引き受けていたこと。こうした事情は、通帳の記録、振込明細、領収書など、客観的な資料で説明できると手続きが進みやすくなります。

どこまでの資料が必要になるかは、事案や窓口の判断で変わります。申請の前に、年金事務所や年金相談センターで確認しておくのが確実です。

生計同一関係に関する申立書は「配偶者または子」用を使う

日本年金機構は、「生計同一関係に関する申立書」の様式を用意しています。この様式には「第三者による証明欄」があります。

遺族年金・未支給年金・死亡一時金用の申立書は、請求する人が「配偶者または子」の場合と、「配偶者・子以外」の場合で様式が分かれています。同居していない子が請求するときは、「配偶者または子」用を使います。様式は日本年金機構の窓口やホームページ、市区町村の年金窓口で入手できます。

不該当を避けるために請求前に準備しておくこと

生計同一関係が確認できないと、「不該当」の通知が届きます。避けるには、請求書を出す前に準備を済ませておくことです。親への送金や費用負担の記録として、通帳や振込明細を集めてください。介護や通院の付き添いなど、日常の関わりは具体的に書き出しておきます。第三者の証明を誰に頼めるのか、窓口で認められる範囲も先に確認しておくと安心です。不安な点があれば、書類を出す前に年金事務所へ相談してください。

請求書は死亡届と一体の様式で、添付書類は6種類前後

手続きに使う書類は、「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」です。亡くなった方の年金の種類によって、提出先や必要書類は変わります。

主な添付書類は、亡くなった方の年金証書、請求者の本人確認書類、亡くなった方との続柄がわかる戸籍謄本、住民票関係の書類、受取口座がわかる通帳の写しなどです。住民票関係では、亡くなった方の住民票の除票や、請求者の世帯全員の住民票が挙がります。別居の場合は、これに生計同一関係に関する申立書と、それを裏付ける書類が加わります。

実際に必要になる書類は個別の状況で変わります。窓口で先に確認しておくと、二度手間を避けられます。

提出先は、老齢年金や厚生年金なら年金事務所です。障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金のみを受給していた方の場合は、請求する方が住んでいる市区町村役場、または全国の年金事務所・街角の年金相談センターになります。

年金受給権者死亡届は国民年金14日以内、厚生年金10日以内

未支給年金を請求する前に、まず年金受給権者死亡届(報告書)を出す必要があります。提出期限は、国民年金が亡くなった日から14日以内、厚生年金が10日以内です。提出先は年金事務所または年金相談センターです。

日本年金機構にマイナンバー(個人番号)が登録されている方の場合は、原則としてこの死亡届を省略できるとされています。省略できるかどうかの扱いは個別に異なるため、窓口で確認しておくと安心です。

届出をしないまま放置すると、亡くなった方の年金が振り込まれ続けます。亡くなった日の翌日以後の分を受け取ってしまうと、後日その分を返還しなければなりません。返還の手続きは煩雑で、悪質と判断された場合は刑罰を課されることもあります。

別居している子は、親の年金の状況を把握していないことが多いものです。亡くなった際は、早めに年金証書や通知書の有無を確認し、年金事務所へ連絡してください。

金額は「年金月額×未支給の月数」で、日割りはなし

未支給年金の金額は、亡くなった方の年金月額に、未支給になっている月数を掛けて計算します。年金は日割り計算されません。月の初めに亡くなっても、その月の1か月分は全額が対象です。

年金は、通常、偶数月の15日に前月分と前々月分がまとめて支払われます。たとえば6月に支給される年金は、4月分と5月分です。後払いなので、亡くなった時点で未払いの月分が残ります。

偶数月に亡くなった場合は1か月分(または3か月分)、奇数月に亡くなった場合は2か月分が、支給されていない状態になると説明されています。

具体例で見ます。6月3日に亡くなった方で、6月15日に振り込まれる予定の年金がまだ振り込まれていなければ、4月分、5月分、6月分が未支給年金になり、遺族が受け取れます。6月20日に亡くなった場合は、6月15日に4月分と5月分がすでに振り込まれているので、未支給年金は6月分だけです。

子が複数いるときは、1人の請求が全員への支給とみなされる

子が複数いて全員が同じ順位になる場合、国民年金法には、同順位者が2人以上いるとき、その1人がした請求は全員のために全額についてしたものとみなす、という定めがあります。その1人に対する支給も、全員に対する支給とみなされます。市区町村の案内でも、同順位の人が2人以上いるときは、1人が代表して請求するよう案内されています。

年金機構から見れば、代表者に支払った時点で支払いは完了します。そのあと、受け取ったお金をきょうだいでどう分けるかは、当事者同士の話し合いです。請求する前に、きょうだいへ状況を伝えて話し合っておくと、揉め事を避けやすくなります。

税金の面でも、受け取った人の一時所得として扱われるのが基本です。折半する場合の申告の扱いは、事前に確認しておいてください。兄弟で折半した場合の確定申告について、税理士に相談が寄せられている例もあります。

同居していたきょうだいがいても、別居の子が請求者になれる

同居していたきょうだいも、別居していたきょうだいも、順位としては同じ「子」です。請求するには、それぞれが親と生計同一であることが必要になります。

実際に仕送りや介護費用の負担で親の生活を支えていたのが別居の子であれば、その子が請求者になれる可能性があります。どの子も生計同一を満たさない場合は、次の順位の父母、孫、祖父母などに権利が移ります。ただし、その人たちにも生計同一の条件があります。

未支給年金と遺族年金は別の制度で、要件の言葉も違う

親が亡くなったとき、子が関わる年金はひとつではありません。混同しやすいのが、未支給年金と遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)です。

未支給年金は、受け取るはずだった年金の残りです。受給権者の死亡当時に生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などが、自分の名前で請求します。

遺族年金は、被保険者、または被保険者であった人が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族に支給される年金です。亡くなった方が加入していた、または受給していた年金制度によって、対象になる遺族の範囲や、受けられる遺族年金の種類が変わります。

つまり、未支給年金は「生計を同じくしていた」遺族が対象で、遺族年金は「生計を維持されていた」遺族が対象です。制度の目的も、要件の言葉も違います。遺族年金を受けられるかどうかは別に確認が必要なので、年金事務所で相談してください。

親の口座が凍結されても、子は自分の口座で請求できる

人が亡くなると、金融機関がその事実を把握した時点で口座は凍結され、取引ができなくなります。凍結後は年金の振り込みも入らなくなります。

本来支払われるはずだった年金は未支給年金になり、子などの遺族が、自分の口座を受取先にして請求できます。親の口座が凍結されていても、未支給年金を受け取る道は残っています。親の口座から引き出そうとせず、請求者である子が、自分の口座を指定して請求するのが正しい手順です。

凍結前に「最後の年金」を引き出すと不正受給を疑われる

金融機関への連絡が遅れて取引が続いていると、年金が亡くなった方の口座に振り込まれてしまうことがあります。その後に口座が凍結されると、相続の手続きが終わるまで、そのお金は引き出せません。

凍結前に急いで引き出した場合は、後日、役所から不正受給ではないかと連絡が来るおそれがあります。亡くなった日の翌日以後に振り込まれた年金は、本来受け取る権利のないお金で、返還が必要になる場合があります。親の死亡後に年金が振り込まれても、使わず、引き出さないでください。

請求しないまま放置すると、約15万円をもらい損ねた例もある

親の死後に未支給年金を請求せず、本来もらえたはずの約15万円をもらい損ねた事例が紹介されています。口座が凍結されても、国のほうから「未支給年金を請求できますよ」と教えてくれるわけではありません。

葬儀や相続で忙しい時期でも、年金の届出と請求には期限と時効があります。手続きの流れを早めに確認しておくのが得策です。

受け取った未支給年金は一時所得で、相続税は対象外

受け取った未支給年金は、相続税の対象ではなく、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象になります。所得税法第34条と所得税基本通達34-2に、この扱いの根拠があります。

一時所得には、最高50万円の特別控除があります。他の一時所得と合わせて50万円以内であれば、課税されません。未支給年金の額が大きくなければ、課税されないケースも多いでしょう。ただし、他に一時所得がある場合や、金額によっては確定申告が必要です。心配なときは、税務署や税理士に相談してください。

請求から振り込みまでは5〜6か月が目安

未支給年金の請求から振り込みまでの期間の目安を示した図

請求書類は、年金事務所の窓口に持参するか、郵送で提出します。年金事務所は予約制のところが多いので、事前に電話で確認してからのほうがスムーズです。

提出した書類は日本年金機構で審査され、3〜4か月ほどで「未支給年金・未支払給付金決定通知書」または「不該当通知書」が届くのが一般的な目安です。決定通知書が届いてから、おおむね2か月で、請求書に書いた口座に振り込まれます。請求から受け取りまで、合計で5〜6か月かかるという目安があります。期間は、事案や混み具合によって変わります。

別居の子の場合は、生計同一関係の確認に時間がかかることもあります。余裕をもって手続きを始めてください。

請求の時効は、支払日の翌月の初日から5年

未支給年金の請求には時効があり、5年です。請求期限は、年金の支払日の翌月の初日から数えて5年と説明されています。

亡くなってから時間がたっている場合は、期限が近い月分と、まだ余裕のある月分が混ざることがあります。期限が迫っているときは、早めに窓口へ相談してください。

親の死後は、届出より先に請求を後回しにしやすい

未支給年金は、国から案内が届く種類のお金ではありません。親の年金を管理していたのが親自身だった場合、別居の子は、年金の種類も、いつ何か月分が未払いなのかも知らないまま、葬儀や相続の手続きに追われます。

そこで最初にやることは、年金証書や年金の通知書が自宅にあるかを確かめ、年金事務所へ連絡することです。死亡届の期限は国民年金で14日以内、厚生年金で10日以内と短く、請求は時効の5年まで余裕があります。届出は急ぎ、請求は書類をそろえてから出す、という順番で進めると無理がありません。

同居していない子の未支給年金でよくある疑問

住民票が別だと、請求そのものを断られるのでしょうか。断られるわけではありません。住所が異なるときは、第三者の証明などの書類を添える必要があるだけで、生計同一関係が認められれば請求できます。

親に配偶者がいる場合、子は何もできないのでしょうか。配偶者が生計を同じくしていたなら、先の順位は配偶者です。子は請求できません。配偶者が亡くなっている場合や、生計を同じくしていなかった場合に、子へ順位が回ります。

親の口座が凍結されたら、未支給年金はあきらめるしかないのでしょうか。あきらめる必要はありません。子が自分の口座で請求できます。

請求書は、亡くなった親の名前で書くのでしょうか。請求は、請求する遺族が自分の名前で行います。親の名義で手続きをするものではありません。

まとめ:同居していない子は「生計同一」の証拠集めから始める

別居していた子の受給資格は、生計同一関係を示せるかどうかにかかっています。配偶者がいれば配偶者が先で、子は次の順位です。住民票が別なら、生計同一関係に関する申立書と第三者の証明を、送金記録や費用の負担を示す資料と一緒に用意します。

死亡届は国民年金なら14日以内、厚生年金なら10日以内で、マイナンバーが登録されていれば原則省略できます。請求の時効は5年です。受け取った未支給年金は一時所得で、相続税の対象ではありません。

迷ったときは、手元の年金証書と通帳を持って、年金事務所か街角の年金相談センター、市区町村の年金窓口へ相談してください。個別の事案の判断は、窓口が行います。

親の口座が凍結されたあと、預金そのものをどう手続きするかは、銀行預金の相続手続きと必要書類で順を追って確認できます。

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